シナノコアツモリソウ

シナノコアツモリソウとは、唇弁に暗紅紫色の条斑がないコアツモリソウのことで、品種となっています。葯を囲う唇弁の基部と側花弁の基部には暗紅紫色が残っており、それすら色がない個体はシロバナコアツモリソウになります。

木曽(信濃)の山中で見つかった条斑がないコアツモリソウの集団をシナノコアツモリソウと2017年に発表されたのが名前の由来になっています。色以外はコアツモリソウと大きな違いはなく、草丈は10~20cmあり、光沢のある2枚の葉は対生します。袋状になっている唇弁の降り曲がっている頂部や条斑が薄っすらと僅かに残る個体もいます。

直射日光が当たらない山地の林床に自生しています。暑さや乾燥に強くありません。

基本情報

和名:漢字
信濃小敦盛草
学名
Cypripedium debile f. shinanoense
分類:目
キジカクシ目 Asparagales
分類:科
ラン科 Orchidaceae
分類:属
アツモリソウ属 Cypripedium
分類:種
シナノコアツモリソウ C. debile f. shinanoense
花期
5~6月
赤リスト
環境省カテゴリ:不詳
分布
長野県, 山梨県
分布地
不詳
その他

詳細情報

シナノコアツモリソウ

シナノコアツモリソウはコアツモリソウと違って唇弁の先端部は顎がしゃくれたように突き出る傾向があるようにも思えますが、個体差や突き出ないシナノコアツモリソウも存在するため、品種によって形状が異なるとまでは言えなさそうです。

シナノコアツモリソウ
側花弁の開き具合は個体によります。
シナノコアツモリソウ
唇弁の口部に暗紅紫色が残る個体

信濃で発見された自生地ではシナノコアツモリソウばかりで、通常のコアツモリソウは存在しませんでした。しかし自生地によってはシナノコアツモリソウとコアツモリソウ、シロバナコアツモリソウが混生していることもあります。

シナノコアツモリソウ
淡黄色の葯が残る個体
シナノコアツモリソウ
シナノコアツモリソウ
5月

通常は葉の下に隠れるようにして、かつやや下向きに花を咲かせます。花柄子房はねじれず、花柄子房の基部から1枚の苞が伸びています。

シナノコアツモリソウ
色のない花脈が目立つ花の背後
シナノコアツモリソウ
下に垂れている合萼片

花の背後に伸びている1枚の合萼片は2枚の側萼片が合着したものです。花の背面には、普通のコアツモリソウにはあるはずの暗紅紫色の花脈が、シナノコアツモリソウは色がありません。花の臀部は緑色になっており、コアツモリソウと同様です。