ハマウツボ

ハマウツボとは、キク科ヨモギ属の根に寄生する一年草植物で、河川敷や海岸の砂浜などに自生しているカワラヨモギに寄生していることが一般的です。約2cmの紫色をした筒状の花を咲かせ、光合成をしません。浜で見かけ、花が矢を入れる靫に似ていることが名前の由来になっています。茎や花の外側、葉が退化した鱗片葉など全草が軟毛で覆われています。

丘陵地に自生するオトコヨモギに寄生するものをオカウツボと呼ばれており、ハマウツボの別称になります。砂浜に自生しているオトコヨモギに寄生するハマウツボ(オカウツボ)もあります。白い花を咲かせるシロバナハマウツボが存在します。

北海道から沖縄まで全国に分布していますが、環境の変化によって多くの都道府県で絶滅危惧種や絶滅種になっています。

基本情報

和名:漢字
浜靫, 丘靫
学名
Orobanche coerulescens
分類:目
シソ目 Lamiales
分類:科
ハマウツボ科 Orchidaceae
分類:属
ハマウツボ属 Orobanche
分類:種
ハマウツボ O. coerulescens
花期
4~7月
赤リスト
環境省カテゴリ:絶滅危惧II類(VU)
東京都:絶滅危惧IA類(CR)
神奈川県, 三重県, 大阪府:絶滅種(EX)
分布
日本全土
分布地
吉井川堤防, 芥屋海岸, 鳥取砂丘, 丹後砂丘
その他

ハマウツボ

ハマウツボの花
少し離れたカワラヨモギに寄生しており、地下で繋がっています。穂状花序の花は下から開花し、咲き終えると茶色く枯れていきます。綺麗な状態での開花期間は短いため、見頃に合わせて自生地を訪問するのが難しい植物です。
寄生植物であるハマウツボ
去年の開花株、今年の蕾、芽
草丈は8~25cm程で、地上部では茎が見えずに、地面から花が直接咲いているように見える個体もあります。寄生先の植物の状態によって、草丈や花の数、茎の太さなど変わってきます。
カワラヨモギとハマウツボ
カワラヨモギとハマウツボ
ハマウツボの蕾と花
蕾と花
咲き終えた個体
神奈川県では三浦半島や湘南海岸に分布していましたが、堤防工事などによる環境の変化で宿主であるカワラヨモギの数が減り、1992年にハマウツボは絶滅したと言われています。東京都では府中市の多摩川に記録が残っています。
ハマウツボの花
苞は花の直下にあり、こげ茶色で先が尖った三角状卵形です。その内側に2裂した萼が存在します。花の中にある柱頭は真ん中にくびれがあり、白色です。

ヤセウツボ

ヤセウツボ
繁殖能力の強い外来種です。
ヤセウツボの花
淡黄色の花と暗褐色の柱頭
ハマウツボに似ている寄生植物としてヤセウツボが存在します。ヤセウツボはマメ科植物をはじめとしたあらゆる植物に寄生することが出来、それ故にハマウツボは自生する砂浜で見かけることもあります。花や葯の色が異なります。