ヤッコソウ

ヤッコソウとは、スダジイやツブラジイといったブナ科シイ属の木に寄生する一年生の寄生植物です。花茎は3~7cmあり、全体が乳白色です。自生する多くの地域では10月末から11月頃に地面から姿を現し、開花します。鱗片葉を広げた姿が「奴さん」に似ていることが名前の由来になっています。日本では徳島県が分布の北限になっており、四国や九州、沖縄が分布域になっています。

最初は雄しべが筒状になった葯帯を頭部に被っており、葯帯にあるリング状の葯から花粉が分泌されます。葯帯が外れると雌しべが姿を見せ、鱗片葉の付け根に分泌されて溜まった蜜を昆虫が食べにきます。その時に虫が花粉を運ぶ役目を担います。受粉を終えると柱頭が黒くなります。乳首のような見た目から、受粉前は白乳首、受粉後は黒乳首に見えます。

基本情報

和名:漢字
奴草
学名
Mitrastemma yamamotoi Makino
分類:目
ツツジ目 Ericales
分類:科
ヤッコソウ科 Mitrastemonaceae
分類:属
ヤッコソウ属 Mitrastemon
分類:種
ヤッコソウ M. yamamotoi
花期
10月下旬~12月上旬
赤リスト
環境省カテゴリ:なし
高知県:絶滅危惧IB類(EN)
熊本県:絶滅危惧IA類(CR)
分布
四国, 九州, 沖縄
分布地
熊野江神社, 八山岳, 高房山, 双石山, 妙見山, 鈴ヶ峰
その他

詳細情報

ヤッコソウ
鱗片葉に包まれた姿
ヤッコソウ
葯帯(帽子)が脱げそうな姿

雄しべの帽子には、葯帯は花粉が詰まった葯が帯状になったものがあります。

受粉を終えたヤッコソウ
蜜が溜まった状態
去年開花したヤッコソウ
ヤッコソウが根に寄生した跡
塊根状の根茎

寄生先の根に黄土色をした塊根状の根茎ができ、そこからヤッコソウが生えています。

ヤッコソウ
11月8日(鹿児島)。子房が肥大して葯帯が外れた姿で、蟻が蜜を求めてやって来ています。受粉をしていないため白い乳首に見えます。葉緑素を持たないため光合成をしないで、住み着いた木から栄養を奪っています。

ヤッコソウの顔出し
花弁はありません。
寄生植物であるヤッコソウ
葉が退化した鱗片葉は対になっています。

宮崎県宮崎市内海や徳島県海陽町、鹿児島県日置市に自生するヤッコソウは国の天然記念物に指定されています。

受粉を終えたヤッコソウ
受粉を終えた黒乳首
去年開花したヤッコソウ
去年開花した個体
ヤッコソウが根に寄生した跡
根に寄生した跡
ヤッコソウの群生地
ヤッコソウの群生地
ヤッコソウの蜜を吸うスズメバチ
ヤッコソウの蜜を吸うスズメバチ

スズメバチや蟻、カマドウマなどはポリネーターとして知られています。鱗片葉の付け根に溜まった花の蜜を吸う時に、ネバネバした花粉がポリネーターの体にくっつき、花粉を運んでもらいます。