クゲヌマランとは、神奈川県藤沢市にある鵠沼で発見されたことが名前の由来になっている白い花を咲かせる多年草のラン科植物です。山地や街中の緑地、砂浜など様々な場所に自生しており、主に太平洋側です。草丈は30~60cm程あります。
1つの花茎に花は多くて20個程つけますが、大抵は10個前後です。側萼片は内側にカーブしており、先端は外側に大きく開きます。葉は4~10枚が対生し、厚く光沢があります。葉の長さは8~18cm程で毛はありません。葉脈ははっきりしています。先端の根は肥厚します。
ギンランやササバギンラン、ヤビツギンランに似ていますが、円頭状の距が僅かしかなく、かつ隆起線が存在することで見分けられます。またギンランに比べて花を含めた全草が大きく、ササバギンランのような笹葉にはなりません。
従来のクゲヌラマンは距が目立ちませんが、距が目立つタイプのクゲヌラマンが存在し、ギンランと混同されてきました。遺伝的に昔から日本に存在していたことが分かっており、花はギンランと酷似していますが、ギンランと比べて花数が多く草丈があります。
和名:漢字
鵠沼蘭
学名
Cephalanthera longifolia (L.) Fritsch
分類:目
キジカクシ目 Asparagales
分類:科
ラン科 Orchidaceae
分類:属
キンラン属 Cephalanthera
分類:種
クゲヌマラン C. longifolia
花期
4~6月
赤リスト
環境省カテゴリ:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
神奈川県:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
静岡県:絶滅危惧IA類(CR)
神奈川県:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
静岡県:絶滅危惧IA類(CR)
分布
北海道~九州
分布地
鵠沼, 横浜, 多摩丘陵, 神代植物公園
その他
距が目立つタイプのクゲヌラマンが存在するため、クゲヌラマンは距だけで判断できません。
茎の稜は目立ちません。
花は上向きです。
東京大学の植物学者である服部静夫が鵠沼で標本を採取し、1936年に同大学でラン科植物の研究をしていた前川文夫によって新種として学名が発表されました。当時の学名は二人の名前をとったCephalanthera Shizuoi F. Maekawaです。しかしそれよりも以前に植物学者のアシル・ウジェーヌ・フィネによって北海道や青森県で標本が採取されています。
唇弁には3本の黄色い隆起線が存在し、その上にお団子のような花粉塊が見えます。花はあまり開きません。
蕾
葉の基部は茎を抱きます。
花柄子房はねじれます。
蕾の時は花茎は短く、ササバギンランのような姿をしていますが、開花する頃には花茎は大きく伸び、葉より高くなります。
神奈川県横浜市(4月16日)
東京都八王子市(4月25日)
山梨県(5月28日)
昨年開花して種子を放出し終えたクゲヌマランの実。
距が目立たないタイプのクゲヌラマンと比べて、距が長く、花がふっくらしています。ギンランと比べて従来タイプのクゲヌラマンのように花が大きく、花を沢山つけ、草丈があります。従来、ギンランと混同・間違われてきたタイプのクゲヌラマンです。