新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、登山の在り方が大きく変わりました。その中には、山小屋が実施するコロナ対策も含まれています。しかし山小屋によって対策内容が大きく異なっており、統一性がありません。これは同じ山域にある山小屋同士でも、同じ対策内容ではありません。山小屋によって、コロナ対策がどう異なっているのか、そんな山小屋で宿泊者はどう自己対策すれば良いのか考えてみます。山小屋では感染症のクラスターは発生しているのでしょうか。実際に北アルプスにある山小屋のスタッフが山小屋にてコロナに感染し、一定期間休業する事例も発生しています。また食事処でのコロナ対策が、山小屋によって雲泥の差がありました。
必ず持参するのはインナーシーツと布マスクです。山小屋でシーツが提供されようと、されなかろうと必ずインナーシーツは持参します。もしシーツが提供されるなら、シーツの上にインナーシーツを使うことで、インナーシーツの外側が汚染されずに使えます。完全消毒されていない山小屋の個室・大部屋で、あちこち触ってしまう両手は気がつかないうちに汚染してしまうものです。無意識に顔を手で触ってしまうのが人間の行動なので、寝ている間は口元を布マスクで自分の手から守ります。布製なのは、息がしやすいことと、手が口元に直接触れるのを防ぐのが目的だからです。
山小屋は完全なコロナ対策などできるはずがありませんし、対策も山小屋によって手探りで、内容も質も異なります。山小屋のコロナ対策がどんななのか知った上で、自分できちんと対策するのが大事になります。山小屋に任せたり求めるより、自分がどうするかです。また他の宿泊者がコロナ感染原因に繋がる行動をしていることもあります。
宿泊するには、事前予約制になっている山小屋がほとんどです。それによって、今までの1つの布団に2~3人で寝るような「密密密」だったのが、1つの布団に1人になり、「密」が改善されました。コロナ禍では、山小屋の対策が不十分だと1つの布団に1人でも「密」に感じてしまうことがあります。事前予約制でも、予約なしの場合はたいてい2000円の追加料金で宿泊できてしまう山小屋は多くあります。事前予約では満員で宿泊を断られても、2000円の追加で飛び込み宿泊可能なら、とってもお買い得に感じる登山者もいるのではないでしょうか。遭難させないための飛び込み宿泊可能が、本来の趣旨と異なる理由で利用されることもありそうです。
宿泊チェックイン時には、ほとんどの山小屋で体温を申告する必要があります。山小屋の入口に体温測定器があっても、そこで測らず適当に自己申告できてしまう小屋もあります。そこで測っても、体温がどのくらいあるのか、チェックインスタッフは基本的に見ておらず、自己申告制です。仮に熱があることがその場で分かっても、その値を申告できる登山者はどのくらいの割合でしょうか。
グループごとに個室対応にしている小屋もあれば、大屋部を改造して1人でも1人用の個室に泊まれるしているようにしている小屋もあります。また、大部屋(蚕棚)にアクリルパネルやビニールで最小限の衝立を設置しているだけで、相部屋としての利用は変わらないなど対応が山小屋によって異なります。
1人用の個室
持参した青いインナーシーツ
布団の提供はあっても、シーツや枕カバーの提供は山小屋によって対応が分かれます。今まで通り提供する所、別料金で提供する所、提供せず宿泊者自らが持参が必要な所があります。
山小屋によって大きく対策が異なります。アクリルパネルを一切設置しておらず、どこに座るのか宿泊者任せで対策が皆無の所があります。アクリルパネルをなんとなく一定の間隔で設置しているだけで、見知らぬグループと真横、目の前で相席する所もあります。その場合、パネルが隣や前になくお酒の提供によって、大声で唾を周囲にまき散らす宿泊者が目の前の席に座ることもあります。実体験済です。宿泊者のモラルに任せるコロナ対策だったかもしれません。目の前と真横には人が座らず、全員斜めの位置に座るというコロナ対策を実施している所もあります。グループごとにアクリルパネルを設置し、事前に座席が決められている山小屋もあります。1人客でも、1人ごとのアクリルパネルなので、安心感が別格でした。1番悲しかったのが、アクリルパネルがない食事処で、宿泊者同士がゆったり座れる人数にも関わらず、ぎゅうぎゅう詰めにし、その代わりに宿泊者と山小屋スタッフの距離を大きく開ける山小屋がありました。
自分でできる事前のコロナ対策としては、①夕食の場合は食事待ちの列に一番先頭で待機し、端っこの席に案内してもらう。②自炊をする。③朝食はお弁当にしてもらう。などがあります。①の場合は、スタッフが多くの宿泊者を食事処に案内した後だと対応は難しいと思うので、先頭に並ぶのが大事です。グループと相席にならないように端っこの席に対応してくれる山小屋もあります。食事のご飯と味噌汁は宿泊者自らがよそる場合と、山小屋スタッフがお代わりを持ってくる場合と山小屋で対応が分かれます。自分でよそる場合は、エンボス手袋が用意されています。しかし自分でよそる度に新しい手袋を使うのか、何度も使いまわすのかは宿泊者に一任されています。一度使った手袋は、テーブルの上に置いて、食べたり話したりしているので、手袋は汚染されているのが現状です。
どこの山小屋でも基本的に着用をお願いしています。しかし、どこの山小屋でもマスク着用なしで通路で会話をしている宿泊者はいるものです。いつもマスクを着用していても、朝の洗顔をしに洗面所に行く時、マスクなしでうろうろしている宿泊者が多いように思います。相手にコロナをうつさなくても、うつされないようにするために自己対策としてマスクの着用をしていきたいものです。
人数制限もなく自由に談話室を使える所もあれば、談話室の利用が禁止の所もあります。
お風呂がある山小屋は数少ないですが、一度に入浴できる人数制限がある所と、人数制限なく自由な所があります。立ったままかけ湯をして、全身の汚れを洗い流したかけ湯を、湯舟に浸かっている人の顔面に、もろにかける人もいるので入浴は油断大敵です。背中を向けて湯舟に浸かっていれば良かったと思った体験談でした。世の中は十人十色なので、予期しない行動はつきものです。シャワーヘッドが1個しかなく、シャワー待ちが発生しても、首から上のかけ湯は、湯舟のお湯ではなくシャワーでするのが大事に思います。もちろんしゃがんだ状態でのかけ湯です。
複数の山小屋で、スタッフが感染しており、宿泊者やスタッフの間でクラスターが起きていると推測します。山小屋のコロナ対策は、どちらかというと宿泊者のためでなく、従業員のための対策に重きを置いているのが現状のように感じます。従業員がコロナになったら、運営危機になるので必然的です。それゆえ宿泊者は自分で自分の身を守るのは大切です。登山客が山小屋で宿泊したのが原因で、コロナに感染した場合、それを周囲に言えるでしょうか。医療をひっ迫させ、会社にも迷惑をかける理由が不要不急の登山だなんて、口が裂けても言えない登山者が一定数存在すると思います。必然とコロナ感染の経路は不明になります。山小屋スタッフが感染しない限り、クラスターが発生しても表沙汰にはならないと思ってしまいます。山小屋のスタッフがコロナに感染したことのある山小屋は、南岳小屋、三俣山荘、白馬山荘、燕山荘、涸沢ヒュッテ、唐松岳頂上山荘などです。黒百合ヒュッテでは、宿泊した登山者が下山後にコロナ感染が判明して休業していました。