自分が実際に盗難被害に遭うまで、山で盗難が発生するなんて思ってもいませんでした。登山をする人に悪い人はいないと言われていたのは昔の事で、現在は誰でも色んな人が山に出入りします。
登山シーズンに限らず四季折々、冬場も山での盗難報告があがります。なくなるものは多様で、衣類などの日用品からテントやシェラフ、ピッケル、アイゼンなど登山専門品を含め山小屋やテント場にあるものなら全てが盗難対象になります。盗難されると命に係わる物も容赦ありません。
そこで、盗難に遭わないための対策を紹介していきます。

宿泊する山小屋を選ぶ

山小屋が同じ場所に複数ある場合では、山小屋によって盗難の被害に遭いやすさが違います。一般的に人気のある方の山小屋が、盗難の被害に遭いやすくなります。
槍ヶ岳の場合、盗難被害が発生しやすいのは槍ヶ岳山荘です。私が実際に初めて盗難被害に遭った山小屋で、盗難被害は珍しくないとのことでした。槍ヶ岳の穂先直下にある人気の山小屋です。初めて槍ヶ岳に登るなら、まずはこの小屋に宿泊したいと考える人も多く、色んな人が宿泊します。逆に槍ヶ岳山荘から1時間程下にある殺生ヒュッテは誰も彼も宿泊するわけではないため、盗難被害が槍ヶ岳山荘より少ないようです。
しかしどの山小屋でも人がいる限り盗難のリスクはあるので、マイナーな山小屋や宿泊者数が少なくても注意が必要です。また山小屋所有の登山用品や日用品の紛失や盗難も発生しています。発生時間は消灯後から朝にかけてが多いようです。

テントの盗難被害と対策

テント場で盗まれるのは、設置済みのテントです。テント内に荷物をデポジットして山頂へアタックしている間に、テントやデポジットした荷物を丸ごと盗まれるケースがあります。
対策としてはワイヤーロックでテントの入口を施錠する事ですが、盗まれる時はそれでも盗まれてしまいます。
高級なテントは転売価値があり、盗まれやすいです。なので転売価値を下げるためにテントに油性マーカーで何か書き込みしてしまうのが良いと思います。外から見える場所に絵柄や名前(ニックネーム)を書き込みし、外から見えないテントの内側に名前を書き込みしてみてはいかがでしょうか。
テントに分かりやすく対策をしていれば、テント内の荷物を狙われるリスクも軽減すると思います。

登山靴の盗難被害と対策

登山靴は盗難被害物の代名詞と呼べる程、盗難対象になりやすいです。特に新品の登山靴は狙われやすいです。
山小屋で靴が紛失すると、誰かが靴を違う場所に移動したのか、間違って履いて行かれたのか、盗まれたのか分かりません。他の人の靴を履くわけには行かず、登山日程の大幅な変更を余儀なくされる事もあります。小屋の宿泊者が全員出払った時、靴箱に残ったボロボロの登山靴の持ち主が、靴を盗んで履いて行った事になります。
対策として、履き間違い防止に名札が靴箱に置いてあることがありますが、盗難となったら名札は効力はありません。靴のタンや内側に油性ペンで名前を書くと良いです。ワイヤーロックで靴同士を施錠するのも手ですが、一番確実なのは靴をビニール袋に入れて寝床に持っていく事です。他に靴を片方ずつ別の靴箱に置く方法もあります。

衣類の盗難被害と対策

衣類は山小屋限定販売のシャツが盗難対象になりやすいです。盗難場所は山小屋の乾燥室である事が多いです。乾燥室に干している衣類は、それが誰のかは宿泊者も山小屋スタッフも分かりません。対策としては衣類に油性ペンで名前の書き込みは必要で、かつ限定物の衣類は乾燥室に干さない事が大事です。

まとめ

基本的に限定物や高級な物は名前等を記入し、自分の手元で管理した方が良いです。ワイヤーロックを使用する場合は、安物でなく頑丈なものをお勧めします。ただ、ワイヤーロックは簡単に壊せるので気休めという認識も必要です。壊すというひと手間があるだけでも、盗難被害は確実に減らせます。
盗難の原因の主な理由は転売であり、次に窃盗者自身が使用するためです。転売価値を下げ、窃盗者自身が使用しにくくさせるには所有者明記が効果的だと思います。
盗難の可能性はどの山にもあり、それを防ぐには自分で対策するしかありません。