白馬岳の登山地図

ルート

白馬駅

今回は白馬岳へ登山しに行きます。猿倉にある大雪渓から登り、栂池高原へ下山します。以前通ったことのあるルートになります。前回は村営白馬岳頂上宿舎に宿泊したので、今回は白馬山荘に宿泊します。本来はツクモグサが咲き誇る7月の頭に行く予定だったのですが、雨で計画は中止になり、その後も2度の延期でようやく8月の終わり、白馬に来れました。シロウマリンドウやクモマキンポウゲ、タカネキンポウゲなどの高山植物に出会えるか分かりませんが、探してみようと思います。

まずは新宿バスタから夜行バスに乗って白馬町バス停に到着したら、徒歩数分で白馬駅バス停に到着しました。始発の猿倉行きバスに乗り換えます。白馬駅から乗車する登山者は片手で数えるほどですが、経由する白馬八方バスターミナルでは、バスが満員になるほどでした。

猿倉

終点の猿倉バス停(猿倉荘)で下車したら、出発の準備をします。水場事前に調べておいた天気予報では、早朝に雨が止み、翌日までは晴天の予定でした。実際は午前中は雨になってしまいます。レインウェアは上着だけ持ってきていますが、着用せずに、折りたたみ傘を広げて登山を開始します。

白馬鑓温泉小屋への分岐点です。宿泊者じゃなくても利用できる露天風呂があるみたいですが、女性の露天風呂利用は夜間のみのようです。

白馬尻小屋がある白馬大雪渓の入り口

白馬尻小屋がある場所に到着しました。

キヌガサソウは結実していました。果実は食べられるようですが、暗紫色に熟していないため、まだ甘くなさそうです。途中で、雨がほぼ止んだため、傘をしまいました。

トリカブトだらけの中に、オオレイジンソウを見つけました。

白馬大雪渓

ここから雪渓歩きになります。朝食を食べて、軽アイゼンを装着します。落石の音や気配、クラックに気を付けながら進みます。稜線はガスっていますが、白馬大雪渓がホワイトアウトすることはありませんでした。

岩場を歩くより、断然歩きやすいです。アイゼンの爪が刺さりにくい雪が硬く凍った場所で、転倒した登山者を見かけたので、なるべく雪が軟らかい場所を選びます。雪が固いと氷のように半透明になっていました。雪渓の割れ目をまたぐ場所もありました。

雨が強くなってきたので、傘を差しました。雨雲レーダーを定期的にチェックしては、晴れになる時刻が遅くずれていく事実に、「こんなはずじゃなかった」気持ちになります。

雪渓を完登したら、軽アイゼンを雪解け水で洗います。洗っている人を見かけなかったのですが、他の人はどうしているのか気になります。ちなみにこの先、軽アイゼンを着用する場所はありません。次第に雨が止み、雲もガスも消え、晴れてくれます。

テガタチドリを沢山見かけたのですが、どれも結実していました。

こちらもテガタチドリですが、色が濃いです。どう違いがあるのか気になります。

ネバリノギランが群生していました。どういう心境なのか、ネバネバしているのを素手で触って確認してしまいます。

ミヤマアケボノソウ

ミヤマアケボノソウは白馬山荘の近くで見かけることがありました。なぜかミヤマセンブリと間違って名前を憶えていたのですが、センブリ属ではあるためかもしれません。

ミヤマシオガマ

ミヤマシオガマです。シオガマの名前が付くシオガマギク属は幾つもあります。

エゾシオガマ

エゾシオガマです。花だけ見るとセリバシオガマとそっくりなので、葉で判別しました。

ヨツバシオガマ

ヨツバシオガマは、高山帯で一番見かけるシオガマギク属のように思います。

クロクモソウ

クロクモソウ

ヒメクワガタ

花が開ききっていないヒメクワガタです。高山帯ではミヤマクワガタも見かけます。

ハクサンフウロです。エゾフウロに似ていますが、北アルプスには自生していません。ここにはタカネグンナイフウロも自生しているようです。

ウルップソウの花後です。流石に8月下旬なので、咲いている個体はいないと思っていたら、稜線付近で咲き残り、しかも見頃の個体を発見することになります。貴重な高山植物なのに腐るほど存在するため、運が良かったです。

クモマミミナグサは八方尾根など北アルプスの北部にしか生息しない日本固有種です。

イブキジャコウソウは僅かに咲き残っていました。途中で出会った新潟から来た登山者から、触るとハッカのような匂いがすると言われ、触ってみました。確かに漢字で名前を書くと伊吹麝香草なので、香りのする草です。

花冠が4裂したオノエリンドウ

オノエリンドウは稜線上など、色んな場所で見かけました。こちらは花冠が4裂しています。花冠の内片が基部まで細かく裂けるユウバリリンドウに似ていますが、オノエリンドウは基部まで裂けません。

花冠が5裂したオノエリンドウ

こちらは花冠が5裂していました。日本固有種で絶滅危惧IB類に指定されています。自生地は北アルプスだけでなく、南アルプスや八ヶ岳、北海道などあり、出会える機会は色々ありそうです。

5つある仮雄蕊の腺体の数を数えてみると、1つの仮雄蕊に黄色い腺体が9個または11個でした。11個以下ならコウメバチソウ、12個以上ならウメバチソウと区別するようなので、こちらはコウメバチソウでした。

葉の形がウサギの耳に似ているウサギギクです。

イワヒバリ

今日は逃げないイワヒバリが沢山姿を見せていました。北アルプスなどの山岳地帯には、同じイワヒバリ科で姿がぱっと見似ているカヤクグリも存在します。知らないと、全てイワヒバリだと勘違いしてしまいそうです。翌日はホシガラスを何度か見かけるも、写真に収めることはできませんでした。

村営白馬岳頂上宿舎

村営白馬岳頂上宿舎のレストランを覗いていきます。プリンとベイクドチーズケーキが売っていましたが、先に白馬山荘にチェックインしないと1巡目の食事を確約できないため、通り過ぎることにしました。結局、チェックインをした後、植物探しの放浪をしてしまい、食べることはありませんでした。ここのプリンは手作りだったはずなので、食べてみたかったです。

トウヤクリンドウ

トウヤクリンドウが至る所に咲いていました。視界に入れず歩くことができないくらい、どこにでもいます。枕元まで追いかけてくるくらい、溢れています。

槍ヶ岳が花の百名山に選ばれた理由がトウヤクリンドウですが、槍ヶ岳にはそこまで多く自生していません。白馬岳はコマクサが理由で花の百名山に選ばれています。私ならトウヤクリンドウを理由に花の百名山を選ぶなら、槍ヶ岳ではなく白馬岳です。

収容可能人数が800人と数ある山小屋の中で一番規模がでかい白馬山荘に到着しました。今年は完全予約制で定員500人です。今日の宿泊人数は100人もいないように感じました。急いで山小屋に到着しなくても食事は1巡目確定事案でした。白馬山荘は明治38年に日本で一番最初に開業した山小屋で、昔の登山ブーム時は定員1500人だったんだとか。

大部屋は壁で細かく区切られ、廊下と部屋の間はロールカーテンを下ろせるため、個室のような設計になっています。他の宿泊者と同じ空間で寝る必要がないのが、嬉しいです。宿泊者が少ないため、右隣の部屋は誰も宿泊しませんでした。昼食を食べたら、外出します。

コマクサ

コマクサは見頃を過ぎていますが、咲いていました。

クモマグサ

クモマグサです。名前をネット検索すると、園芸植物としての洋種クモマグサが検索結果にずらっと並びます。白馬岳には八重咲きのクモマグサも存在するようです。

イワイチョウは秋になると黄色く紅葉します。花弁の縁は波打っているのが印象的でした。

ミヤマクワガタ

ミヤマクワガタ

ウルップソウ

場所によってはウルップソウがまだ咲いていました。

見頃のウルップソウ

この個体だけは見頃です。と言うより、蕾が目立つため、これからが見頃のようです。

ミヤマダイモンジソウです。花盤は最初は黄色ですが、次第に赤くなっていきます。

テガタチドリ

テガタチドリの先残りです。背後に存在するマメ科植物はシロウマオウギなのか、タイツリオウギなのか、リシリオウギなのか、それともイワオウギでしょうか。どれも白馬岳に存在します。花が縦に広がり、萼に黒い毛がないためイワオウギだと思います。シロウマオウギは花が真っ白で、萼に黒い毛がなあります。

夕方になって、急に頭痛が発生しました。普段は頭痛とは無縁で、登山で頭痛になるのは空前絶後でした。原因を考えてみると、夜行バスで一睡もできなかったことでした。つまり、30時間以上起きたままです。その状態で標高が2,800m以上ある場所に滞在し、登山という激しい運動もしているわけです。

就寝する頃には、だいぶしんどかったのですが、その代わり入眠が早く、翌朝には頭痛は皆無で元気いっぱいでした。新宿バスタから出るさわやか信州号「上高地行き」の3列独立シートでも基本的に寝れません。酔いつぶれるしか熟睡する手段はないのか...

白馬山荘の食事(夕食)はハンバーグ

夕食はハンバーグ定食でした。白米や豚汁は温かく美味しいです。漬物もご飯が進みます。しかし、ハンバーグが非常に硬く、割りばしが折れてしまいそうでした。デミグラスソースは美味しく、お肉は満足感アップですが、ナイフが欲しかったです。

非常に残念なお知らせです。フライドポテトとニンジン、ブロッコリーが世界で一番まずかったです。その理由は簡単です。冷凍したものを、そのままお皿に置いただけだからです。非常に冷たく、冷凍したものを焼いていないため、温めてもいないため、ニンジンとブロッコリーは「す」が入ったままです。冷え冷えの硬いフライドポテトも同様に死んでいました。冷たい夕食と言ったら、涸沢ヒュッテの食事を思い出すのですが、涸沢ヒュッテは冷たくても全然美味しかった記憶があります。白馬山荘の場合、宿泊客と山小屋スタッフは同じ料理を食べることはないと、こうなっちゃうよね。の典型的パターンかもしれません。

ちなみに今日の宿泊者の人数は、翌日が平日だけあって少ないです。忙しいからこうなってしまった訳ではなさそうでした。ちなみに、近くにある村営白馬岳頂上宿舎の食事は、夕食も朝食も絶品です。なんなら、その場でアルペン踊りをしたくなるくらいです。ただ食堂のコロナ対策は100%、白馬山荘の勝利ではあります。

食事を終えたら山小屋を出ます。頭痛がする中、それ以外は不調はないため山頂へ夕陽を見に向かいました。

剱岳の手前には滝雲が流れています。なかなかこんな雲海を見る機会はありません。午前中は天気が悪かったですが、その分のご褒美のようです。

白馬岳山頂から見た夕陽

夕陽が山肌を赤く染めていました。翌日は反対側の斜面が赤く染まるモルゲンロートを観賞したいため、同じ場所で日の出を拝もうと思います。

遠くには槍ヶ岳が見えました。最近は異常気象の影響か雨ばかりです。そんな天気に恵まれない中、貴重な日になりました。マジックアワーが情緒的な気持ちにさせます。

影白馬岳が雲海にそびえていました。

光線が見えました。日が沈む姿よりも、こういう景色の方が好きです。

しかも山頂には登山者は数人しかいません。人混みから隔絶された空間は至福をもたらすものでした。

日没を見届けてから、白馬山荘に戻ると放送が流れていました。どうやら19時からの夕食の案内です。どうやらすごく遅い時間に到着した登山者がいたようで、山小屋スタッフと一緒に夕食する羽目になっていました。スタッフと席は離れていても、流石に気まずい。けれど周囲の座席に他の登山者がいないから、少しうらやましい。遭難せずにたどり着けて何よりです。

今日は早めに就寝して終了しました。

シロウマチドリ

ここからはシロウマ(白馬)の名前が付く植物を紹介します。

シロウマチドリは既に結実しているのかと思いきや、黒くなりながらも花の姿をとどめていました。

シロウマリンドウ

シロウマリンドウは午前中ガスや雨だった影響もあり、開花した姿は見れませんでした。

シロウマリンドウ

既に咲き終えた個体もいます。今回の登山では山の景色だけでなく、植物の観察も目的でした。特にシロウマリンドウは見たいと思っていた植物だっただけに、開花を見れずに残念です。それでも姿を見れたのだから、自然に感謝です。

シロウマアサツキ

シロウマアサツキは、花の時期が終了し、雨に濡れていたため、綺麗な姿はありませんでした。