今回の登山は南アルプスにある鳳凰三山です。地蔵ヶ岳にあるオベリスクや、他では自生しないタカネビランジの花を見るために来ました。本当は、鳳凰三山にしか咲かないホウオウシャジンも見たい気持ちがありましたが、8月にならないと開花しません。宿泊する山小屋は展望のない鳳凰小屋に予約をしたため、2日目のご来光を見るために、深夜に起床して登山をする予定です。

早起きが苦手だったり、暗闇登山が無理な人には、稜線上にある薬師岳小屋に宿泊して、山小屋で日の出やモルゲンロートを観賞するのがお勧めです。その場合は、夜叉神峠から入山し、青木鉱泉へ下山が良いです。今回は青木鉱泉から入山し、夜叉神峠へ下山します。

まずは韮崎駅から少し離れた鳥居にあるバス停から青木鉱泉行きの始発バスを待ちます。

2台のマイクロバスがバス停に到着しましたが、乗車人数が少ないため、1台に登山者全員が乗り込みました。乗車人数は12人と少なめで、空席もありました。仮に乗客が多くても、全員座ることができるため、急いでバス待ちの列に並ぶ必要はありません。大型バスではないため、立ったままの乗車は不可能です。

御座石温泉で乗客2名が下車し、終点の青木鉱泉で全員下車しました。バスのドライバーの話によると青木鉱泉から鳳凰小屋までのドンドコ沢コースは遭難があったばかりと話がありました。実際に登ってみた感想は、初心者向けではなく、多くのロープ場があり、急なトラバースが多く、間違った獣道を多くの人が何度も歩くことで、そこが明確な登山道と勘違いしてしまう、ややこしいルートでした。また健脚者向けでもあり、人によって小屋までのゴールタイムが大きく異なります。

少しでも自信がなければ、御座石温泉から鳳凰小屋までの燕頭山コースがお勧めです。よく整備されており、山小屋スタッフの通勤路にもなっています。御座石温泉で下車した2名の登山者も、久しぶりの宿泊登山で心配が残るため、燕頭山コースを選んでいました。初心者でも標準タイム通りに歩けるコースになっています。

まずは青木鉱泉のベンチで朝食にします。トイレや自販機、水飲み場があります。お腹の調子がいまいちであり、登山開始が遅れました。

同じバスに乗った登山者が全員いなくなってから登山を開始します。今回の登山では、韮崎駅からの始発のバスに乗るために韮崎駅近くの宿で前泊しています。その時に、宿の予約を1日早くしてしまう醜態を晒しており、1日分の宿泊費を無駄にしてしまいました。このような失敗は初めての経験でした。

前日の夜に宿に到着して、予約が入っていないことで失態に気が付きます。その宿が満員でなかったために、何とか1泊分の追加料金で泊まれました。韮崎駅周辺は宿が少ないため、最悪、韮崎駅で野宿するか甲府駅で宿探しをすることになっていたかもしれません。

バイケイソウの花を見つけました。9割以上の個体が開花せずに葉や茎が腐ったような見た目になっていました。数年に1度しか開花しないため、無理もないです。

急な勾配の細い登山道を歩いていきます。ふらっと身体が揺れて足を踏み外せば、どこまでもおむすびころりん状態です。

トラバースがメインの道がずっと続きます。他の人が歩いた鳳凰三山の記録を事前に読んだり、検索かけてみたのですが、ドンドコ沢コースがどんな登山道なのか記載されている記録が多くありませんでした。ただ、多くの人が登山道を間違えながらも修正をして登っているのは分かりました。難所をメインに紹介していこうと思います。またどんな花が咲いているのか山野草マニアが登山した記録は見つけられなかったです。山屋かつ花屋の私は、1泊2日の登山で、どんな花を見つけられるでしょうか。

タマガワホトトギスを見つけました。

名前のない滝です。ここで軽食にします。ミートソースご飯です。食べ終えたら、出発しますが、いきなり道が分からなくなりました。

正確に言うと、滝の左にルートがあるのは分かっていたのですが、準バリエーションルートかと思い、別のルートを歩こうとしたら、そのルートがすぐに途切れてしまいました。どうやら準バリエーションかと思った道が一般登山道のようです。食事休憩中に、途切れてしまうことになる道から登山者が現れ、下山していったので、勘違いしました。

ロープを使わないと、私の短足では登り切るのが困難でした。

ちょっとしたプチ難所を通過すると、腐生植物であるシャクジョウソウが生えていました。同様に葉や葉緑素がなく光合成をしないギンリョウソウも見かけます。

苔むした岩の隙間を水が流れていきます。その水が登山道を横切るため、大雨が降った後は注意が必要です。雨が降った後のドンドコ沢を利用するのは、推奨されていなかった気がします。

ロープ場はこれから先も出現します。登山開始してから鳳凰小屋までの累積標高は、登りが1,477mあります。下りは184mです。登りだらけの約5.5kmの登山道です。

南精進ヶ滝を見学していきます。ほとんどの滝が、青木鉱泉から鳳凰小屋までの最短コースから外れた寄り道コースの先に存在するようで、滝見コースでありながら、滝を見ずに終わってしまう登山者もいるように思います。実際に、滝を見ずに下山していく登山者とすれ違いました。

河原を渉ります。岩が濡れて、とても滑りやすいため注意が必要です。翌日歩く夜叉神峠への下山路は、蛇紋岩によって滑りやすいです。同行者がどちらでも転倒してしまったのですが、幸いにも骨折や行動不能にはなりませんでした。滑ると分かって注意しても滑ってしまう時もあります。フラットフィッティングを意識する必要があるような場所でした。

ヒトツバイチヤクソウが咲いていました。イチヤクソウと比べて葉が小さく、土壌の菌類に強く依存しているように思います。

鳳凰の滝です。登山道を外れた場所にあります。鳳凰三山にある鳳凰の滝は、やはり訪れておきたい場所です。

ヒトツバキソチドリです。花だけ見てもキソチドリとの違いは分かりません。

葉を見るとヒトツバだと納得です。

白糸滝です。

今日宿泊する鳳凰小屋は、以前の読売新聞で、コロナ対策をちゃんとしている山小屋であると取り上げられていました。鳳凰小屋のコロナ対策のモットーは「お客様同士の、またスタッフへの感染リスクを可能な限り下げる。」だそうです。新聞に掲載されていた写真は、夕食での宿泊者の三密を避けるために、屋外のベンチで宿泊者同士距離を空けた夕食でした。

燕山荘や白馬山荘、涸沢ヒュッテでコロナ感染発覚によって休業している中、鳳凰小屋なら泊まりたいと私は思っていました。しかし、その気持ちは無残に裏切られることになります。

コバノイチヤクソウ

私が感じた鳳凰小屋のコロナ対策の現状は、宿泊者同士が三密になるようして、スタッフがコロナに感染しないようにしていました。具体的には、夕食時に、宿泊者がテーブルにゆったり距離を開けて座れるにも関わらず、宿泊者をぎゅうぎゅうに座らせ、宿泊者とスタッフの距離を大幅に開けていました。そのため、スタッフの近くにあるテーブルは誰も座ることがありませんでした。ぎゅうぎゅう詰めなのに、アクリルパネルがテーブルに1つもありません。

スタッフをコロナ感染から守るのは大切ですが、宿泊者を犠牲にして守っている印象でした。ちなみに北アルプスにある蝶ヶ岳ヒュッテは受付時に強制的に検温し、夕食は宿泊者単位(2名ごと)でテーブルを別々にし、それぞれのテーブルが互いに離れています。そして全てのテーブルにアクリルパネルが設置してあるため、同じテーブルに座る2人グループでも、2人の間にアクリルパネルが設置されます。尾瀬にある尾瀬沼ヒュッテの夕食も同様の対策でした。

読売新聞の記事を鵜呑みにしてしまった自分の落ち度ですね。コロナ感染者数が歴代ワーストを各地で迎えている中で、宿泊の予約をする前に、実際にどういうコロナ対策をしているか尋ねてみると良いと思います。自炊という手段もあります。

ミヤマバイケイソウ

食事処にアクリルパネルの設置がない山小屋は一定数あります。また以前コロナで休業した経験のある山小屋は以前よりコロナ対策が厳しくなっていると思うので、そういう山小屋は安心かもしれません。今回は、新聞の掲載内容と現在の実際が異なっていたため、それを記載しました。

五色滝は水の落下地点まで降りていくことが可能でしたが、時間の関係で省略しました。途中で昼食休憩をしています。

またまたロープを使って登っていきます。若干道を間違えながらも、間違いに気が付き、修正しながら進みます。

クロクモソウです。最初は、タカネシュロソウかと思ってしまいました。

ようやく地蔵ヶ岳にあるオベリスクが見えてきました。鳳凰小屋から御座石温泉へ続く燕頭山コースを数分下った場所に、富士山が見える展望地があります。そこで沈む夕陽を見る予定だったのですが、ガスってしまう結果になります。けれど翌日はご来光を見れることになります。

鳳凰小屋に到着し、受付をしました。写真だと小屋の中に明かりがついていますが、実際は真っ暗で、移動するにはヘッドライトが必要です。節電をしているのか、玄関や部屋を点灯する時間は遅かったです。

自分の寝床に到着しました。コロナ対策として、インナーシーツを持参しています。仕切りが皆無の寝床だったので、隣の寝床にいる他人の足の方に自分の頭を置くようにしました。足と頭がお互い真逆ならコロナ対策になると考えました。

山小屋の目の前に咲いていたキバナノアツモリソウです。既に見頃は終了しています。絶滅危惧種になります。

こちらが夕食のカレーです。とってもスパイシーです。隠し味はチョコレートとのことです。具材はほとんどがジャガイモで、次にコーンでした。ニンジンが見つかったらラッキーです。スープはお替り不可だったので、珍しく思いました。カレーはお替り自由ですが、お替りしないと物足りないので、ほぼ全員お替りします。味は美味しく、山小屋にありがちなお米が不味いということはありませんでした。贅沢な要望として、タンパク質が足りない内容だったので、カレーの具としてお肉がほしかったです。

カレーにラードを使っていないため、コクが足りなくなりがちですが、そこはスパイスの強さでカバーしていると思います。使用済みの皿を洗った水はそのまま川に流しているのか、その分環境に配慮しているのだと思います。ラードの洗い物は厄介ですね。

南アルプスでは、どの山小屋も販売したビールやジュースなどの空き缶は、購入者自身で持ち帰る必要があるとのことでした。コロナ対策のようです。ちなみに鳳凰三山の稜線にある薬師岳小屋は、口を付けていない空き缶は回収してもらえます。

明日は、ご来光のために早起きするため、早めの就寝です。朝食は山小屋でお弁当を注文し、夕食後に受け取りました。