鳳凰小屋を真っ暗な内に出発して、ご来光を見るために赤抜沢ノ頭を目指します。オベリスクがある地蔵ヶ岳の山頂に近づくと、急な斜面のザレ場になります。今日は観音ヶ岳と薬師ヶ岳も登頂し、夜叉神峠へ下山します。中道コースから青木鉱泉へ下山しようか迷ったのですが、より展望が良い稜線歩きができる夜叉神峠コースにしました。

ザレ場ではガスの中にいたので、日の出が見られるか不安でした。けれども、標高を上げることで雲海が見れるかもしれないとも思いました。自分の前にも後ろにも別の登山者が歩いている様子はありませんでした。

地蔵ヶ岳に到着すると共にガスが晴れて、また空が少しずつ明るくなってきました。赤抜沢ノ頭へそのまま目指します。鳳凰小屋に宿泊した場合、どこで日の出を見るのが良いのか事前に調べた結果、赤抜沢ノ頭だと判断しました。巨大なオベリスクと共に、ご来光を拝めるのは、鳳凰小屋に宿泊し、かつ夜中に歩き始めた登山者だけです。鳳凰三山の稜線上にある薬師岳小屋に宿泊すれば、夜中に歩かずともご来光は簡単に見れますが、この景色とは出会えません。

赤抜沢ノ頭から日の出が見えてきました。なぜ人はこんなにも辛い登山をしてまで、この景色を求めてしまうのか、いつも疑問に思います。登山なんか卒業したいと思う時もあります。それでもまた山を求めてしまう不思議。

モルゲンロートで白峰三山(北岳・ 間ノ岳・農鳥岳)が赤く染まっています。真っ赤に燃えるような光景は、僅か数分の奇跡です。私は南アルプス登山の経験が非常に浅く、ほとんど未踏の山しかありません。いつかあの3,000mを超える稜線を良い天気で歩いてみたいです。以前、北岳に登った時は台風で強制下山でした。

夜が明けたので、オベリスクへ行ってみようと思います。

賽の河原にやって来ました。子授け地蔵が沢山並んでいます。地蔵を1体を持ち帰れば子を授かり、お礼にもう1体作って、合計2体をお返しすれば子は健やかに育つと言われています。作るのは木彫りの地蔵でも大丈夫です。

なので、ここは地蔵ヶ岳とか地蔵岳って呼ばれているんですね。標高2,764mある山頂に到着しました。残りの2座である観音ヶ岳と薬師ヶ岳も、「ヶ」抜きで呼ばれることもあります。またこれら3座を合わせて鳳凰三山と呼ばれていますが、鳳凰山と呼ぶこともあります。統一されてないので、混乱します。3座合わせて日本百名山の1座(鳳凰三山)となっています。初めてここに登山するなら、3座登頂したいものです。

オベリスクを少しだけ登ってみます。頂上まで登らないのに、なぜ少しだけあえて登るのかというと...

富士山が見えるからです。しかもこれから向かう鳳凰三山最高峰の観音ヶ岳と一緒です。他の場所からは一緒の光景は見ることができません。

花崗岩の岩場でタカネビランジが咲いていました。遠くに甲斐駒ヶ岳が見えています。タカネビランジは氷河期の生き残りで、南アルプスにしか自生していません。なぜそこにしかいないのかは分かっていません。

赤抜沢ノ頭に戻ってきました。行ったり来たりを繰り返してしまいました。下山先である夜叉神峠バス停は、バスの本数が限られているため、時間管理が必要です。目標は夜叉神峠を14:41発のバスに乗って甲府駅へ帰ります。昨日はコースタイムよりも結構遅く歩いてしまったので、今日は時間を多少気にして歩きます。

赤抜沢ノ頭で朝食にします。鳳凰小屋のお弁当は、ゆかりご飯に、こごみや大豆肉の甘煮などでした。山小屋で朝食を食べる場合は、そこにお味噌汁が付くくらいの違いだと思います。

稜線は花崗岩でできているため、雨風による浸食によって、数多くの奇岩がいっぱいあります。北アルプスの燕岳のようです。

キレベンダイモンジソウを見つけました。普通のダイモンジソウは個人的に興味を引くことがないのですが、こちらは花弁に鋸歯があり、洒落ていました。

タカネビランジの白花です。何か所かで見かけました。

日本で2番目に標高が高い北岳です。

日本で3番目に標高が高い間ノ岳です。

ハクサンシャクナゲが至る所で咲いていました。

鳳凰小屋分岐点に到着しました。鳳凰小屋から地蔵ヶ岳を経由せずに、1時間ほどで来ることもできます。赤抜沢ノ頭ではなく、ここでご来光を見る登山者もいるようです。個人的には赤抜沢ノ頭の方が断然良いと思います。

鳳凰小屋分岐点から見たオベリスクの景観です。日の出の時に、山肌が赤く染まるのかもしれないですね。

標高2,841mある観音ヶ岳に到着しました。

山頂からは常念岳を連想させるようなピラミッド型の山容である甲斐駒ヶ岳が見えました。遠くには槍ヶ岳など北アルプスも見えます。

白峰三山の景色はずっと健在です。

観音ヶ岳からの景観で特に良かったのは、こちらです。薬師ヶ岳へ続くなだらかな稜線と富士山の景色です。植物と花崗岩のコントラストが、果てしなく続く登山道を際立たせています。

南アルプスの女王と呼ばれる仙丈ヶ岳です。

農鳥岳です。

タカネビランジの群生です。ホウオウシャジンも見たかったですが、1度にあれもこれもは欲張りですね。

切れ込みのある葉の先に丸みがあるので、コバノコゴメグサです。丸みがないミヤマコゴメグサや直立するタチコゴメグサ、ヒナコゴメグサなど類似する植物と今まで混同しており、どれもミヤマコゴメグサだと思っていました。

薬師ヶ岳が見えてきました。山頂の標識は中央の部分にありますが、本当の山頂は左側の岩だらけの場所です。

標高2,780mある薬師ヶ岳に到着しました。

本当の山頂からは、こんな風な景色が見えます。登山アプリでは、ここまでルートが伸びて、ここが山頂としていました。

ここから中道コースで下山できますが、薬師岳小屋の方へ向かいます。

あっという間に薬師岳小屋へ到着します。水場はありませんが、南御室小屋で自由に水を汲めるため、心配不要です。本当はこっちに宿泊しようか迷いましたが、夕食がおでんです。あまり好きなおかずじゃありませんでした。

鳳凰小屋では、好みの手ぬぐいがなかったので、お土産は買いませんでした。けれど、ここのバンダナは見た瞬間気に行ったので即購入です。ちなみに、小屋のルールに従えない場合は宿泊拒否と書いてあったので、コロナ対策がしっかりしているのかもしれません。泊まってみないと分からない部分です。

薬師岳小屋を通過すると、ほどなくして樹林帯に突入します。ここまでは山屋として歩いてきましたが、ここからは花屋の目線で歩きがちになります。

南御室小屋に到着しました。薬師岳小屋と系列が同じためか、販売しているお土産は同じようです。

距が長く湾曲しているテガタチドリです。テガタチドリの葉の縁がまっすぐなのに対し,類似した花を咲かせるノビネチドリでは、葉の縁が波打ちます。小屋の周囲で、ミヤマバイケイソウなどと一緒に咲いていました。

クルマユリです。

こちらが水場です。苔が繁殖しており、煮沸消毒せずに大量に飲むのは遠慮したい感じでした。苔に毒はありませんが、微生物が多いかもと思ってしまいました。湧き水なので、普段飲む水道水とは異なる味です。

夜叉神峠に向けて出発します。苺平までは地味にアップダウンがあり、疲労が溜まります。展望の良い辻山を登ろうと思ったのですが、ちょうどガスってしまったので、パスしました。

コフタバランです。唇弁が人の足みたいに見えるので、花を擬人化してしまいます。

ウスタケと呼ばれるキノコです。なんだか印鑑みたいです。多肉植物であるハオルチアを連想させる姿でもありました。数あるキノコの中でも、キツネノサカズキをいつか見てみたいものです。タヌキノショクダイ属の腐生植物にどこか似ており、印象的です。

バイカオウレンの実です。

お菓子が落ちていると思ったら粘菌でした。

途中でホシガラスに遭遇しましたが、満足いく写真は撮れませんでした。苺平からはひたすら下っていきます。蛇紋岩が滑るので注意が必要です。

夜叉神ヒュッテに到着しました。持参してきた食料で昼食にします。食後は、夜叉神峠登山口へ向かいます。

花が咲き終わってしまっていますが、カキランもしくはエゾスズランです。

オオヤマサギソウは1株だけ見つけました。頭にナースキャップを被ったクリオネの姿をしているため、植物図鑑を見なくてもすぐに同定できる数少ないツレサギソウ属です。ナースキャップはほとんどの病院で廃止されており、見かけることはもうないのですが、看護学校の戴帽式は今でもやっているのか気になる所です。話が脱線しましたが、今まで出会えていたのはキソチドリばかりだったので、出会えて良かったです。

バイケイソウは昨日見つけたよりもゴージャスでした。

夜叉神ヒュッテがある夜叉神峠登山口に到着しました。無事に下山です。バス停にリュックを置いて、ヒュッテに入ります。お風呂に入れますが、バス時間を考えて断念しました。お腹が空いていたため、アイスを2本食べてしまいました。帰宅して体重が増えていないことを祈ります。むくみも天敵ですね。

予定していたバスに乗ることができ、無事に甲府駅へ到着することができました。バスは増便されて3台が数珠繋ぎでした。夜叉神峠バス停から座ることができましたが、次のバス停(芦安駐車場バス停)でバス3台とも乗客の9割が下車していったので、バス車内はガラガラでした。

今回の登山で別途見かけた植物を最後に紹介します。まずはキバナノショウキランです。

次にイチヨウランです。咲き終えていますが、1株だけ見つけました。この植物は私よりも同行者の方が見つけるのが得意です。私はなぜか相性がいまいちです。今回は2人登山でした。

こちらも咲き終えていますが、サカネランまたはエゾサカネランです。毛の有無を確認しなかったのですが、どちらかというとサカネランのような気がします。カイサカネランが見たい。