ルート
東丹沢にある三峰山(大山三峰山)は標高935mと低山ながらも、気を抜くと滑落してしまう場所が幾つかあることで知られています。今回は宮ケ瀬湖の端にある土山峠から辺室山を通って三峰山を目指します。そして大山まで標準タイムが約8時間のコースを歩きます。
まずは本厚木駅からバスに乗り、土山峠バス停で下車しました。他に下車したのは三峰山を目指す登山者1名と仏果山を目指す1グループでした。静かな登山が楽しめそうです。バスはもう1時間早い便(7時台)がありましたが、大山で紅葉のライトアップが始まる頃に大山に到着したかったので、遅い時間(8時台)にバスに乗車する登山計画です。
登山口の標識があるため、そこから登っていきます。三峰山は土山峠よりも手前にある煤ヶ谷から登り、鐘ヶ嶽がある広沢寺温泉へ下山するのが、よくあるルートのようです。
まだ歩いたことのない三峰山をヤマビルが出現せず紅葉が綺麗な時期に訪れたかったのと、大山のライトアップは本日が最終日であるため、両方行く計画になっています。
丹沢には太礼ノ頭、円山木ノ頭、本間ノ頭の3つの峯があり、その総称を丹沢三峰と呼んでいます。今回行く場所とは別で、全くの無関係です。混同しないように、今回目指す三峰山は大山三峰山と呼ばれることがあります。
空を見上げれば光り輝く楓の葉たちです。今日は富士山が終始良く見える好天ですが、地理的に富士山を見ることなく終わります。ここは丹沢の中でも低山であり、広い丹沢の地形によって富士山は隠されてしまいます。その代わりに、綺麗な紅葉に何度も出会えます。
落ち葉が積もっているためか、登山者が少なく踏み跡が少ないのか、一部道が不明瞭かもしれません。目の前を歩いていた登山者が、登山道を外れてしまい急斜面を強引に登りながら戻ってくるのを見かけました。こちらも引きずられて道を外れるところでしたが、なんとか整備された登山道を大きく外れるまでにはなりませんでした。
人が前方にいると左右されやすく、どこを歩くべきか自分で判断しにくくなる傾向があります。
目の前にいた相手の方が足が速かったのですが、こちらは道をあまり外れなかったため、先に辺室山に到着してベンチで朝食にしました。標高644mです。東京や川崎の方の展望が僅かにあります。煤ヶ谷から三峰山へ登山すると、通過することのない山頂です。
ベンチで頭上を見ると迫力のある紅葉でした。コントラストが美しいです。本当は春や夏にも植物探しで歩いてみたい場所です。人が少なければそれだけ認知されていない自然もありそうですが、ヤマビルが大量に生息しているようで、丹沢は悩ましい山です。
食事を終えたら物見峠へ目指します。ちょうど1週間前に陣馬山から高尾山まで紅葉狩りに行っていたのですが、残念ながら見頃は終わっていました。それから更に1週間が経過したのですが、辺室山は落葉がありながらも紅葉はまだまだ元気でした。周辺の山の山肌も赤い楓が多く、密かな紅葉スポットを見つけた気分です。何よりも大混雑の高尾山と比べて、ここはほとんど人がいません。
大山の近くに到着するまでにすれ違った登山者は20組ほどいましたが、子供や未成年はいませんでした。丹沢の表尾根や西丹沢とかだと週末は必ず子供を見かけますが、ここは客層が違うように思います。それ故か、ハシゴや鎖場が幾つもある痩せ尾根が続く三峰山での滑落転倒事故は4年間で0件です。ただ道が不明瞭だったりして道迷いの件数は多いようです。私も歩きながら不明瞭な登山道を実感しました。
山肌が赤黄緑と美しいです。見ごたえがあります。低山なので、ここまでの景色は正直期待していませんでした。ただ、ずっとこのような景色を見ながら歩けるわけではありません。
真っ赤な紅葉と、強い日光によってモノクロになった幹と枝が幻想的です。鮮血色とはまさにこんな色だと思います。
木々の隙間から仏果山や高取山の山塊が見えました。それらの山頂から見下ろす丹沢湖の、入浴剤みたいなエメラルドグリーンの湖面は一度は見る価値があります。
ここは物見峠への標識があるので道迷いしませんが、標識が何も指さしていない方向にも進めそうな感じです。どうやら鍋嵐へ続く道のようですが、廃道かバリエーションルートだと思います。
ベンチがある物見峠へ到着しました。思ったよりも良い展望はありません。
様々な道の合流ポイントになっています。この時の唐沢林道は路面崩落で通行止めになっていました。1年以上も通行止めなのは、需要がないためですかね。ここからは、いよいよ三峰山を目指します。初めての場所かつ登山初心者の私は、無事に難所を通過できるのか楽しみです。
最近は丹沢になかなか足を運ぶ機会がなく、約3ヵ月ぶりになります。人によっては毎日や毎週、毎月登る人もいるので、それと比べるとすごく久しい気分です。気軽に行けて、知名度のある山頂やルートの多くは歩いてしまったので、これからは不便でまだ行っていない丹沢を制覇するか、バリエーションに片足を突っ込んでみようと思っています。例えばネクタイ尾根は情報が多く、初心者向けのバリエーションルートのようなので、一歩先にステップアップするには良さそうです。
そんな尾根を持つ丹沢の大山はちょうど一年ぶりになります。今日と同じ日付で紅葉のライトアップを観に行ってました。
展望はばっちりです。ただ、仏果山や大山から見る景色と変わらないため、何度も見た光景にトキメキが湧いてきません。なんでだろうかと思ったら、山岳風景ではなく、街の景色だからでした。高尾山とか関東近郊の低山ならどこでも、似たような景色が見られます。登山技術は初心者なので、気持ちも初心者でありたいこの頃です。欲求が贅沢になってしまいました。
そんなこんなで、植物のない時期の低山はピークハントの傾向が強くなりがちかもしれません。早く、腐生植物が沢山咲く季節にならないかと腐生オタクがぼやいています。
注意看板
「三峰山は地形が急峻で、道は狭く沢沿いや鎖場など多く経験者向きの登山道です。無理をしないで引き返す勇気が必要です。」
崩落地にやって来ました。ここら辺から三峰山らしさが少しずつ垣間見えてきます。斜面には木々がないため展望もあります。山容がある景色を見ると、今度はあそこを登りたいとか、あの山頂は何と言う山なのかとか、色々考えてしまいます。
傾斜が急な木の階段を登っていきます。ロープはありますが、使わずに進めます。細かなアップダウンで足に負荷が少しずつ確実にかかってきます。ここでヒーヒー言っているようだと、この先の危険地帯が危うくなります。
幾つもの鎖場がありますが、山頂に近づくほど核心部になっていきます。落ちたら軽い怪我では済まされない瘦せ尾根には、鎖と階段、木橋が設置されていました。
今回のルートで一番の難所を歩いていると、向こうから団体の声が聞こえました。クラブツーリズムの団体でした。すれ違えない危険な場所ので、そのままお先に通過しました。毎週末、どの山域にもいるのではないかと思うくらい遭遇します。
この木橋は斜めに傾斜があり、揺れます。気分は体操選手になって、いざ平均台に乗ります。A難度片足立ち1回ターンをしたら、B難度の片足踏み切り、前方伸身宙返り1回ひねり下りで着地しました。はい、危険なので妄想だけにしておきましょう。
大山三峰山こと三峰山に到着しました。狭い山頂ですが、ベンチがあったので昼食タイムにします。
食事を終えたら、大山へ向けて出発します。先程のようなちょっとしたスリルのある場所はありませんが、鎖場は続きます。
定期的に標識がありますが、初めて大山の文字を見ました。今まで遠かった大山にようやく近づけた気持ちです。ん?大山三峰の表記は、大山と三峰を結ぶコースではなく、大山三峰山のコースということだったり?どうなんだろう。
三峰山の山頂で出会い、先に大山の方へ出発した人が、前からやって来ました。どうやら広沢寺温泉の方へ下山するつもりだったようですが、分岐を見逃して戻って来たようです。
稜線が広く、足跡も不明瞭、目印のリボンやテープも必ずあるわけではなく、どっちに行けば良いのか、どっちでも良いのか分からない場所がありました。結果的に問題なく大山までたどり着けるのですが、少し不安になりました。
魔女の森へようこそ。一度入ったら出られない、逃げられない。そんな晩秋の情緒ある場所ですが、暗くなったら不気味です。
何か俳句思い浮かばないかと、枝先をじっと見つめ続けて、見つめ続けただけで終わりました。
赤いテープを発見しました。どうやら遭難していないようです。
唐沢峠
日も落ちてきて、隠れてしまいました。今まで暖かったのが急に冷えてきます。
電波塔が間近に見えてきました。あそこが大山の山頂です。そこまで行く予定でしたが諦めることになります。
鹿の鳴き声が聞こえたので、振り返ると鹿の群れが逃げていきました。近くにいたのにこちらから気が付けず、無念です。
今日は同行者が1名いたのですが、急に体調が芳しくなくなってしまいました。下りなら幾らでも走れるけれど、登りは歩くのも無理とのことだったので、山頂は諦めて、見晴台経由で下山することにしました。それでも唐沢峠分岐までは登らないと、どうすることもできないため、ゆっくり進みます。
本日歩いた三峰山の山容が見えました。三つの峰かと思いいきや、四つの峰のようにも見えます。同名の山は全国各地に存在します。
一番遠くに筑波山が見えました。一番手前には採掘場があります。砂利採掘のために開発されている荻野高取山です。西山を守る会という組織が開発を反対しているようで、以前記事を目にしたことがあります。
そういえば秩父にある武甲山は石灰岩の採掘によって本来の面影が跡形もなくなってしまったのに、なぜ日本二百名山に選ばれているのか不思議に思ったことがあります。採掘の歴史が経済を発展させた側面がありますが、何とも情けない山容になってしまいました。仮に武甲山が世界自然遺産に登録されていたら、認定取り消し間違いないです。
無知の部外者には難しい問題が、開発される山に存在します。
唐沢峠分岐に到着しました。大山山頂から下山してきた無数のカップルが見晴台の方へ下っていきます。ライトアップされた紅葉と夜景を阿夫利神社で見るために向かっています。大混雑間違いなしです。
太陽が木々に隠れる瞬間を眺めながら、神社まで下山します。
「夜明け前が一番暗い」と誰かが言うのなら、「日暮れ前が一番美しい」です。明るい未来は夜明けにも、夜更けにも待っていると思えるマジックアワーでした。
見晴台
登山道を駆け下りれば、あっという間に阿夫利神社に到着しました。真っ暗になる前にライトアップ会場に到着できました。ちゃんとヘッドライトは持ってきていますが、なるべく使わずに済む計画が一番です。
行灯の明かりに誘われてしまいます。闇夜の中には多くの観光客がひしめき合っていました。ケーブルカーは上りも下りも長蛇の列になっており、自分の足で下山したほうが早いです。
当初は大山で夕食にしようと思いましたが、混雑を避けるためにバスで伊勢原駅に行ってから食事をとることにしました。
大山不動尊に移動します。大山での一番の人気スポットです。紅葉とライトアップと漆黒の石像は、寒さの中に厳かなものを感じます。
誰もが同じ場所から似たような写真を撮ってしまうほどの定番スポットです。
大山ケーブル駅バス停から増便の伊勢原駅直行便のバスに乗って無事に帰宅しました。三峰山と大山の両方で紅葉を楽しむ欲張りツアーはこれで終了です。