早朝にリフトを使って、車山の山頂を目指します。霧ヶ峰と呼ばれるせいか、霧が発生していました。これでは雲海と日の出を見れないと思っていたのですが、山頂に近づくと次第に霧がなくなってきました。今日は車山高原を大縦走します。2つの湿原と7つの頂きには、それぞれどんな展望があるのでしょうか。
今回は雲海を見るために近くの宿に宿泊しており、無料送迎でリフト乗り場まで運んでもらいました。結果的には、車山肩にある山小屋「ころぼっくるひゅって」から山頂に行くよりも、短い時間で山頂にたどり着けました。
リフトを降りると、八ヶ岳と滝雲となった雲海が見え、そして太陽が顔を出し始めそうでした。
昨日は全容をちゃんと見せてくれなかった南八ヶ岳もはっきりと見えます。左から硫黄岳、横岳、赤岳、阿弥陀岳で、いつかツクモグサという珍しい植物に出会いたい場所です。白いコマクサも自生しています。日本で一番高所にある野天風呂、本沢温泉など他の魅力も尽きません。
分厚い雲海に浮かんでいるようなこちらの山塊は南アルプスです。こちらもキタダケソウやタカネマンテ、アオキランなど拝見したい植物は数えきれません。山を見て、植物のことを考えてしまいます。けれど好きの根幹にあるものは、山であり、天気が悪くても山を楽しめるようになったきっかけが植物です。
八ヶ岳から陽が昇るということは、方角的にモルゲンロートに染まった北アルプスが見られるため、車山の山頂へ急いで移動しました。鷲ヶ峰や鉢伏山の下に見える八島ヶ原湿原には霧が発生して幻想的でした。
霧と雲海は、実際はどう違って、どう使い分けるのか正直分かっていませんでした。調べてみると、地表付近に浮かんでいるのが霧で、空高く浮かんでいるが雲海とのことです。高度による違いらしいです。
そこまで赤くないけれどモルゲンロートの景色をなんとか見れました。こちらは乗鞍岳です。車山から見れる日本百名山の数は20座以上ありますが、正確な数が気になる所です。
雪を被った槍ヶ岳と穂高連峰、そしてまだ雪のない手前の稜線は蝶ヶ岳と常念岳です。
ご来光がそろそろ見れるので、場所を移動します。あれもこれも見逃せないので、せわしなく動き回る時間でした。
見れないかもしれない日の出に雲海セットで対面できて嬉しいし、山という特別な場所で感動も強くなると思っていたのですが、どこか物足りなさを感じていました。たぶん自分の足で歩いてここまで来ていなかったり、車があれば比較的容易に山頂へ来れてしまうからだと思いました。
中央アルプスです。人生で初めて行った日本アルプスです。当時は登山とは無縁で、木曽駒ヶ岳にある千畳敷カールを観光しました。それがきっかけで、水芭蕉が咲き誇る尾瀬へ1泊することになり、そこで完全に登山に興味を持つことになります。
2014年に噴火した御嶽山は、58名の犠牲者がでたことが今も記憶に残っています。噴火警戒レベル1での噴火するなんて、普通の人は思いもしなかったと思います。
一番右端にある継子岳は日和田富士と呼ばれています。日本には郷土富士と呼ばれる富士山に似ていたり、連想させるご当地富士山が多数存在しています。榛名富士や津軽富士、薩摩富士など知名度が高い山もあります。
山に来るたびにほぼ毎回遭遇するのがクラブツーリズムの団体です。今回も漏れなくいましたが、ご来光を見たらすぐリフトで降りてしまいました。1泊2日で蓼科山と車山、美ヶ原を最短距離でピークハントをするツアーだと推測します。今までで、BSテレビ「日本百名山」で登山ガイドとして出演していた人が、クラブツーリズムのガイドとして引率しているのを何度か見たことあります。
これから向かう蝶々深山や山彦谷南ノ耳、山彦谷北ノ耳の草原を朝陽が染め上げることで、色味が強い赤い山肌になっていました。僅かな時間限定のマジックアワーです。
北アルプスは南北に約105kmの長さを持つ飛驒山脈です。今日は午後3時には車山高原バス停から茅野駅行のバスに乗車したいです。余裕を持って行動したいのですが、写真撮影時間が予定よりどんどん伸びてしまうほどの景色です。今日の工程は約15kmで、標準タイムは6時間程です。
猫耳のような双耳峰が見えると言うことは、鹿島槍ヶ岳です。
霧ヶ峰の観光ポスターをイメージして撮影しましたが、写真の才能はなさそうです。自分好みの写真じゃないため満足できませんが、なによりも技量が皆無なのは日々痛感します。観光地のポスターや観光協会のホームページで見かける観光写真はよく人が映っていたりしますが、誰も映り込んでほしくないのが個人的趣向です。
昨日は雲が多く、凍えるような寒さでしたが、今日は上着を脱いでしまう程のポカポカ陽気でした。
刻一刻と景色が変わっていきます。先程まで雲で隠れていた南アルプスの各山頂が顔を見せてくれました。八ヶ岳連峰の右に存在するはずの富士山はもう少しお預けのようでした。
モルゲンロートは終了しました。槍ヶ岳と山頂の看板を一緒に撮影するには、遠く離れた場所からズームで撮影した方が、ずっと離れた場所にある槍ヶ岳が看板と比べて小さくなりにくいことに気がつきました。いつもなら、看板の近くで撮影して看板だけバカでかくなってしまいます。
広大な山頂も朝食の時間になると人が見当たりません。
一番高く見え、一番尖って目立っている山頂が甲斐駒ヶ岳です。そのすぐ右奥が北岳で、その右に間ノ岳が見えます。標高の高い山が勢ぞろいですが、言い換えると日本の他の地方には高山がないということです。
車山神社の周囲では何組ものコスプレイヤーが撮影に没頭してました。雲海と神社という格別なロケーションはコスプレイヤーの聖地になっている模様です。
出発します。まずは本日2つめの山頂である殿城山を目指します。蝶々深山の山頂が目前に見えますが、一番最後に立ち寄ります。
車山肩
車山から蝶々深山へ向かうコースではなく、山彦谷のコースを歩きます。殿城山が見えてきましたが、殿城山へは完全に寄り道コースとなり、進んでも引き返す必要があります。往路復路ですれ違う人は1人だけでした。(自分のことを棚に上げて)物好きな人がいるものですね。
2つめの山頂、標高1,800mある殿城山に到着しました。木々の隙間から槍ヶ岳が見えますが、本当の展望は反対側にあります。
麓の紅葉は最盛期でした。ここで朝食にします。
八ヶ岳も見渡せます。ススキの穂が太陽光で輝き、秋の澄み渡った空気がとても美味しかったです。
食事を終えたら、寄り道した分だけ引き返します。高低差は少なく、急勾配もありませんが、落ち葉で足元が見えず、慎重に進みます。
本来の道に戻ったら、目とつぶって踊りながらでも進めるような道を歩きます。次の山頂は直ぐに到着できます。
3つめの山頂は、標高1,838mある山彦谷南ノ耳です。
列になって並んだ植林の先に先程まで朝食を食べていた山頂があります。
次の山頂は目の前に見えます。ここから15分です。更に次の山頂までもたった15分となっており、山頂密集地帯です。その中で一番標高が高いのは山彦谷南ノ耳になります。
美ヶ原では5月から10月まで牛の自然放牧が実施されています。雨でも台風でも関係なく放牧しているのは、まさにありのままの自然。野生の本能に牛が目覚めてしまうのか、そうはならないほど家畜の遺伝子が強いのか気になる所です。乳成分が違ってくるだろうし、論文が書けそうです。6月になるとツツジが咲き誇り、美ヶ原の風物詩のような景色が見れます。
4つめの頂きは、標高1,829mある山彦谷北ノ耳です。猫の耳を踏んずけ... ならぬ、両耳を踏破しました。猫踏んじゃった♪猫踏んじゃ、踏んじゃ、踏んじゃった♪
山頂を移動する度に八ヶ岳の展望の角度が変わります。同じようで違う景色です。幾つもの角度から見た結果、北ノ耳からの景色が一番好みでした。
こちらは5つめの標高1,807mある大笹峰から見た景色です。標識がありません。8つめの頂きである鷲ヶ峰へは今回行きませんが、こちらは往復1時間の寄り道コースになります。車山高原バス停から最終バスに乗車して帰宅するなら立ち寄ることも可能で、そうすれば霧ヶ峰の全ての山を登ったことになります。
6つめは標高1,776mある男女倉山(ゼブラ山)です。展望は今までの山頂とはガラッと変貌します。変わった名前ですが、ゼブラ山と呼ばれる由来は車山肩にある山小屋「ころぼっくるひゅって」の創業者である手塚宗求によるものです。積雪した男女倉山の山肌がシマウマのように見えたからです。
美ヶ原の手前は一面が紅葉しており、ここまで一色なのは驚きです。
間近に見える八島ヶ原湿原が次に向かう目的地になります。残り1つの山頂は蝶々深山になります。
鎌ヶ池です。湿原というと、尾瀬のような無数の池塘があって、水が豊富なイメージを抱いていたのですが、雪解け水もない秋であるためか湿原ぽさには、なかなか出会えませんでした。湿原植物が見られる夏に来るのが良いのか、草紅葉と空気が澄んで展望が良い秋に来るのが良いのか、どちらがよりおすすめでしょうか。好みや目的によります。
霧鐘塔がある霧ヶ峰高原ドライブイン霧の駅から見る車山の山容に劣らない八島ヶ原湿原からの山容です。
鬼ヶ泉水です。深田久弥の著書である日本百名山に車山の記述がありますが、鎌ヶ池と八島ヶ池のことは書かれていても、鬼ヶ泉水は記載されていません。ここら辺は沼が蘚苔類の生長によって湿地に変わった場所です。個人的には鎌ヶ池より全然おすすめです。池塘の中に幾つもの島があると、一気に雰囲気が出てきます。雲が広がってしまいましたが、晴天だったら池は青かったでしょう。
八島ヶ池は山が逆さに映る水鏡でした。綺麗に見えるかどうかは植物の背丈や風に左右されます。
木道を歩いていくため、短時間で距離を進みます。近くに駐車場があるため、今までは静かだったのに、賑やかな家族連れやカップルを多く見かけました。自然と対峙する旅なので、足を速めて喧騒から離れます。
草紅葉はやはり太陽の自然光があってこそ、美しさが際立ちます。
車山肩で昼食にします。今日はカレーです。今朝、アルファ米にお湯を注いでおいた米を冷めても美味しいカレールーで食べます。登山用ガスバーナーを家から持参しようかと思っていましたが、このためだけにずっと持ち歩くのは面倒くさいので却下です。
車山肩から7つめの頂上、標高1,836mある蝶々深山です。広場になっており無数の石があります。蝶々の形をした石があったことが山名の由来になっています。蝶々夫人がどうのこうのだと予想してました。
「町長になった蝶々夫人が蝶々深山で童謡蝶々をハ長調で歌唱した。」早口言葉を考えるも、なかなか良い案が浮かびません。吾輩は凡人よのぉ~。気分はぬるくなった白湯を、まるで熱湯かのように飲む真似をするかのよう。なんぞや。
車山湿原
車山乗越を通って、車山の山頂まで戻ってきました。八ヶ岳の隣に朝見えなかった富士山が見えました。これでやり残したことはもうありません。
蓼科山と白樺湖を見ながらリフトで下山します。歩いても帰りのバスに間に合ったのですが、往復でリフトを買った方がお値段が安いのと、リフトを使用せずに下山してもバスに間に合うかは、今朝の時点では分かりませんでした。
茅野駅までバスで向かったら、特急あずさに乗車して無事に帰宅しました。
今回は紅葉と雲海、そして360度の大展望、湿原と各山頂、霧鐘塔と霧ヶ峰を魅力を十分に味会うことができました。再度訪れるとしたら夏の湿原植物が多く開花する時期だと思います。
1日目