天上山
下田駅
神津島にある天上山は、かつての噴火によって独特な地質景観を持っています。山頂までは短時間で行けるため観光登山にお勧めの場所です。また新日本百名山や花の百名山にも選ばれています。本土では既に失われてしまった、離島ならではの多様な植物の宝庫になっています。
今回は、登山をしながら様々な植物を探してみようと思います。今の時期はシュスラン属やヒメノヤガラ属の植物が沢山見られるようです。それとは別に、個人的に本命であるとある植物も見頃だと思うので、見つけられるか楽しみです。
まずは、電車で下田駅に到着しました。
ペリーロード
スーパーに立ち寄ったり、ペリーロードを歩きながら下田港へ向かいます。風情ある景色ですが、観光客は誰もいませんでした。江戸時代後期、黒船で来航したペリーがこの道沿いにある了仙寺で日米和親条約付録協定が締結されています。つまり日米和親条約を結んだ後に、更に開港について追加で結んだってことですね。
神新汽船 フェリー あぜりあ
歴史の方へ脱線してしまいましたが、旅に流れを戻します。
神新汽船のフェリー「あぜりあ」に乗船します。神津島へは、東京、熱海、下田から船が出ています。下田からのフェリーだと甲板へ出ることが可能です。東京や熱海からの高速ジェット船だと終始、船内の座席に座らないといけません。
フェリーを利用する乗客の数はとても少なく、空いていました。帰りは各島に立ち寄りながら本土へ向かうジェット船を使ったのですが、大島から東京の区間はほぼ満席でした。私は大島からは熱海へ行く船に乗り換えたため、そこまで人が多くない区間でした。
出航してから、船外へ出てみると、オオミズナギドリが獲物を狙って飛んでいました。他に水中から1匹だけトビウオが飛んでいました。
神津島
幾つかの島を立ち寄らずに通り過ぎると、いよいよ神津島が見えてきました。今日宿泊する場所は菊乃屋です。満室のため食事のアレルギー対応は難しく、素泊まりになりました。
着岸する前浜港(神津島港)から宿までは歩けそうですが、天候によっては遠い場所にある三浦港(多幸湾)に着岸するため、どちらでも良いように無料送迎をお願いしてあります。
火山活動の形跡が船から見えます。ジェット船だと座席の窓越しからしか、眺められなかったので、行きはフェリーにして正解でした。
前浜港に船が接岸して下船したら、目の前で宿の車が待っていたので、乗り込んで宿へ向かいます。宿は満室でも、下田港からの宿泊者は他にいないのか、同乗者は他にいませんでした。
荷物を置いたら、「スーパーまるはん」へ夕食の買い出しに行きます。歩いていく予定が、車で載せていってもらえることになりました。そのまま白島登山口へ連れて行ってもらえるようで、助かりました。
夕食としてうなぎ弁当を購入したのですが、伊豆諸島の郷土料理「島寿司」も販売しています。ネタを漬けにしたお寿司です。ぼうぜの姿寿司やなすの花ずし等、日本には色々なお寿司があります。
白島登山口に到着です。車で来たおかげで、時間に少し余裕ができました。今日は植物探しをしながら、山頂を目指し、黒島登山口へ下山する予定です。
実は、色んな種類のシュスランが存在することを知らずに植物探しをしていました。宿に戻ってネット検索をした時に、どれも同じだと思っていた植物が、実は別の種類だと気がつきました。そのため、翌日に再度植物探しをちゃんとすることになります。なので、区別が必要な貴重な植物は翌日紹介することにします。
今回の旅では、天上山にある全ての観光スポットを回ろうと思っていたのですが、植物探しに時間を費やしてしまったので、全て回ることはできませんでした。観光スポットは一年を通して、いついっても問題ありませんが、植物はその季節限定のため、植物を優先にします。
天上山登山で厄介だったのは、蚊が多く、蜘蛛の巣だらけだったことです。毛虫注意の看板があったのですが、毛虫は見かけませんでした。悲しいことに、道を阻む数多くの蜘蛛の巣のどれかにに毛虫の毛がくっついていたようで、2日目に毒毛によって手や首が皮膚炎になってしまうことになります。要注意です。
こちらはシュスランです。花の見た目だけでなく、葉の模様や、毛の有無、側咢片の形等で種類を分類する必要があるランが同じ場所に何種類も咲いています。事前に知らないと、違う種類だと気がつけません。
1日目は、一部の植物と共に、天上山の観光スポットをメインに紹介していきます。
白島登山口から山頂を目指す場合、傾斜が緩いため、急勾配の黒島登山口ルートよりも楽でした。山で唯一あるトイレまで来ると6合目です。そこにはバスの本数は少ないけれど、バス停もありました。
ナンバンギゼルが咲いていました。寄生植物なので光合成をせず、葉もありません。
標高500mもない場所で、森林限界を抜けたような、展望の良い登山道が待っています。前浜港と遠くに恩馳島が見えています。「おんばせじま」と読みますが、最初読めませんでした。
10合目の白島下山口に到着すると、そこはお鉢巡りを想像させる場所です。
火口跡の凹地になっている不入が沢は、伊豆諸島の神々が集まった場所とされていて、立入禁止になっています。一番高く見える場所が山頂で、右回りすればすぐ到着できますが、遠回りになる左回りをしていきます。
アキノキリンソウ
イズイワギボウシ
景色はなんだか屋久島の宮之浦岳に少し似ている気がします。どちらも島だからでしょうか。今日の登山ですれ違った人は、10人もいませんでした。
ババア池
祇苗島は「ただなえじま」と読みます。ここには、希少なカンムリウミスズメが生息しており、それを捕食する更に希少なシマヘビが生息しています。
櫛ヶ峰には、バギーのサーキットコースのような砂丘が広がっているのでしょうか。
天空の丘の近くからは、左手前に式根島、右手に新島の絶景が見渡せます。
不動池
標高571mある天上山の山頂へ到着しました。ここからは360度の展望が広がります。本当は裏砂漠や新東京百景展望地を巡りたいのですが、明るいうちに宿に戻るため断念しました。
黒島登山口の方へ下山を開始します。誰も人がいない別世界を歩いていきます。
表砂漠を通過します。東京都には、砂漠が存在するなんて言われても、東京都に属する伊豆諸島を知らないと、冗談かと思ってしまいます。5月から6月にかけて、砂漠にオオシマツツジが咲くみたいで、一度は観てみたい景色です。
オロシャの石塁へ少し立ち寄っていくことにします。ここは江戸時代の終わりに外国船が日本各地にやって来るようになり、それに備えるため、石を積んだ防御構築物があった場所です。現在は展望地になっています。
急勾配の登山道をずっと下っていきます。港の展望がずっと広がったままなので、気持ち良いです。
キキョウ
黒島登山口へようやく下山しました。ここから宿は歩いて行ける距離です。
山の神・冷風穴は、一年中冷たい風が吹いています。黒島登山口から入山する時に、ここでドリンクを冷やして、下山した時にはキンキンに冷えているのかも。
菊乃屋に到着しました。だいたい5時間半の登山でしたが、写真撮影の時間が長かったり、標高差が少ないため、そこまで疲れませんでした。
お弁当は宿で温めてもらえます。ネットで神津島の植物を調べていると、今日の登山では色々見逃した植物あったようです。似ている植物が多いので、見分け方の即席メモを作成し、翌日探したいと思います。
翌日は今日紹介できなかった植物を含めて、多くの種類を見つけていきます。