三岐鉄道三岐線の切符

今回登る山は鈴鹿山脈にある藤原岳です。孫太尾根から登り、フクジュソウやセツブンソウなど春の花を観賞しに行きます。鈴鹿300座に選ばれている丸山、草木、多志田山の3座を踏破できるコースです。藤原岳は日本三百名山に選ばれています。下山後は、四日市市に移動し、昭和四日市石油南と呼ばれるコンビナートの工場夜景観賞ポイントで夜景を観賞します。

まずは近鉄名古屋駅から近鉄富田駅まで電車移動し、下車しました。そこで三岐鉄道三岐線の切符を買って、伊勢治田駅まで電車に乗ります。藤原岳は電車のみでアクセスできる鈴鹿セブンマウンテンの1つですが、ほとんどの登山者は車で来るようです。そのため、電車がガラガラでした。

ルート

ルート

伊勢治田駅

伊勢治田駅で下車しました。ここから孫太尾根で藤原岳に登り、大貝戸道で西藤原駅まで下山します。逆ルートを選ばなかったのは、下山後に時間と体力があったら藤原岳自然科学館に立ち寄り、移植されたコセリバオウレンとスズカカンアオイを見たかったからです。

藤原岳

藤原岳には、花の百名山だけあって、様々な山野草が存在します。そして地元の学芸員の話によると複数の品種や変種が混在しているようです。シコクフクジュソウとエダウチフクジュソウ、セリバオウレンとコセリバオウレン、ミスミソウとスハマソウ。どちらも存在すると話を伺いました。

右側にある山の斜面は随分と人為的に削られていました。まさかと思いながら、あそこがやはり藤原岳でした。有名な山で山野草が豊富なのに、セメント採掘で年々山が衰退していっています。

伊勢治田駅から車道を歩き続け、孫太尾根登山口に到着しました。ここには登山口に一番近い墓地駐車場があるのですが、既に駐車禁止の場所まで車でいっぱいでした。駐車のマナーが悪いために警察が出動することもあるようです。

コクラン

コクランの葉を見つけました。よく見かけるコクランの葉と違ったので、最初は何のランなのか分かりませんでした。つい最近も、通院のために田舎の車道脇を歩いていたら、道端の斜面がコクランの葉だらけだったのですが、どれも数本の平行脈がはっきりしており、こんな葉ではなかったです。

セリバオウレン

セリバオウレンを見つけました。今まで見てきたセリバオウレンは、葉も背丈も大きかったのですが、ここで見かけるのは、どれも小さい個体ばかりです。小さいからコセリバオウレンなのかと思いきや、葉は2回3出複葉であるため、確実にセリバオウレンです。大きさで同定は出来ないのだと知りました。ちなみに、この後も葉が3回3出複葉であるコセリバオウレンを探しましたが、分かりませんでした。ただ、コセリバも存在はするらしいです。

ヤマネコノメソウ

腎臓のような形の葉があると思ったら、ヤマネコノメソウを見つけました。ここには雄しべの数が4つしかないヨツシベヤマネコノメも存在します。どちらも同じヤマネコなのに、語尾に「ソウ」が付いたり付かなかったりする不思議は、いつも迷宮入りです。

オニシバリ

オニシバリを見つけました。

孫太尾根

大鉢山から静ヶ岳、銚子岳がお隣の尾根にあるため大迫力で見れました。今回が初めての鈴鹿山脈への登山になります。鈴鹿登山デビューの私は、まずは鈴鹿山脈を代表する7つの山頂、藤原岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳、鎌ヶ岳、入道ヶ岳を登頂することを気長な目標にしたいと思います。これら7座が鈴鹿セブンマウンテンと呼ばれています。

カテンソウ

カテンソウは雄花がどれも蕾でした。雌花は葉の付け根に付きます。

白い花糸が内側に曲がっているのが見えます。開花寸前でした。近畿以西にしかないスズシロソウを見たかったのですが、見逃してしまいました。

ヒロハノアマナ

ヒロハノアマナです。アマナと違って、葉の中央に白い線があるのが特徴です。日本固有種で絶滅危惧II類です。

ヨツシベヤマネコノメ

ヨツシベヤマネコノメです。同様に雄しべの数が4つであるネコノメソウは萼裂片が直立しますが、ヤマネコは平開します。藤原岳にはシロバナネコノメが存在するようですが、開花時期がまだ先になります。同じ鈴鹿セブンの1座である入道ヶ岳では見頃を向かえているため、翌日そちらに見に行こうと思います。

カタクリ

カタクリの葉を見つけました。発芽から開花まで約10年の月日を要する山野草です。桃栗3年柿8年どころではなかったです。

鈴鹿300座の丸山

鈴鹿300座に含まれている標高650mの丸山に到着しました。誰もいないような景色ですが、実際は人混みです。誰もがしゃがんでセツブンソウを撮影しています。

セツブンソウ

あちこちにセツブンソウが咲いているため、花を撮影しながら、別の花を踏んでしまっているかもしれないような場所でした。

フクジュソウ

丸山にはフクジュソウも咲いています。ただ、セツブンソウが見頃になると、フクジュソウはほとんど咲き終えてしまいます。この個体だけ毎年遅くまで咲いているようで、綺麗な状態でした。ただ、誰もが1輪だけ咲いているフクジュソウの存在に気が付かずに丸山を後にしていきます。藤原岳の山頂付近の急斜面に山ほど咲いているからなのでしょう。

シコクフクジュソウ

葉の裏面を見ると毛がありませんでした。どうやら、この個体はシコクフクジュソウのようです。藤原岳周辺のフクジュソウで、葉の裏に毛がなければシコクフクジュソウ、葉の裏に毛があればエダウチフクジュソウになります。ただし、正確には染色体数を調べないと断言できないようです。

藤原岳と丸山、どちらにも両方存在するとのことで、自然交雑も起こっていそうです。フクジュソウの仲間には、他にミチノクフクジュソウとキタミフクジュソウが存在します。丹沢で以前フクジュソウを見に行ったことがあるのですが、丹沢のフクジュソウはミチノクフクジュソウだという声とエダウチフクジュソウだという声があります。

スハマソウ

葉の先端が丸いスハマソウを見つけました。丹沢で見かけたミスミソウは、葉の先がもっと尖っていたので、スハマソウの認識で良いと思います。藤原岳周辺には、両方存在するため、両方の特徴を持った中間型など、ミスミソウなのかスハマソウなのか分からない個体もありそうです。

オオミスミソウ

こちらは葉が大きいので、オオミスミソウのような気もしますが、葉が大きいスハマソウかもしれません。スハマソウ、ミスミソウ、オオミスミソウ、これらはどれも品種レベルでの違いです。自然界に存在する植物は、作物の品種と異なり遺伝子がホモ接合型ではありません。よって、自然の中で自生している個体はどれも遺伝的に異なります。その違いを品種として、ミスミソウやスハマソウと当てはめるのは無理があるように思います。

つまり、スハマソウもオオミスミソウもミスミソウであると言えると思うので、分類にこだわり過ぎない方が植物を楽しめる気がします。

ちなみに日本には、上記3種とケスハマソウを総称して雪割草と呼ばれています。そして雪割草分布図なるものが存在し、藤原岳はケスハマソウとミスミソウが当てはまります。オオミスミソウは石川県から北の日本海に面する県のみに自生するようです。スハマソウは神奈川県から西の太平洋側に自生します。この地にスハマソウが存在するのか、しないのか混乱してしまいました。

この個体は葉の端っこをメインに僅かに毛があったので、ケスハマソウのように思います。スハマソウの花弁状萼片(花弁のように見える萼片)は多くて8枚までです。

ケスハマソウ

こちらは、先ほどの個体よりも毛が目立っているので、ケスハマソウと言えそうです。神奈川県南足柄市にある箱根の外輪山では、アシガラスハマソウが見つかっています。蔵王にはザオウスハマソウが存在するなど、なかなか手強い。

ぱっと見、キクザキイチゲやアズマイチゲかと思いましたが、まだ咲く時期ではなさそうです。こちらもケスハマソウなのだと理解しました。花弁状萼片の数と形に多様性が豊富過ぎます。

こちらのフクジュソウは、どっちのフクジュソウでしょうか。

毛がないため、シコクフクジュソウでした。

ミノコバイモ

ミノコバイモの葉を見つけました。この日は、1個体だけ開花していたらしいですが、初見の山ゆえに見つけられませんでした。ヒロハノアマナと同様に日本固有種で絶滅危惧II類です。

若干色の付いたセリバオウレンを見つけました。ウスギオウレンを連想させる花色でした。

鈴鹿山脈の草木

鈴鹿300座に含まれている標高834mの草木に到着しました。山頂に登らず、トラバースして藤原岳へ向かう道もあるため、ピークハントするなら、注意が必要です。トラバース道と合流する地点まで降りて来ると、トラバースからやって来た登山者が草木の方を指差し、藤原岳はそっちかと聞かれたので、ちょっと心配になりました。

伊勢治田駅から見えていたセメント採掘の斜面でしょうか。草も木も、全く何もなくなってしまうんですね。

イワカガミの葉ですかね。他に花は咲いていないけれど、葉は既にありそうなタキミチャルメルソウなど記憶の片隅に置いておきます。どこにどんな植物があるのか、知らないことだらけで、視界に山野草の葉を捉えたら認識できるよう頑張ります。

多志田山

鈴鹿300座に含まれている標高965mの多志田山に到着しました。ここで軽めの昼食休憩にします。藤原岳でも再度お昼ご飯を食べる予定です。

藤原岳の山頂

藤原岳の山頂部が見えてきました。山が紅葉しているように見えるのは落ち葉のせいです。梅雨の時期になるとヤマビルが落ち葉のしたから動き出すと思うとぞっとします。藤原岳はヒルの生息地です。残雪があると、色のコントラストになり、景色が映えます。

人の叫び声が遠くから聞こえてきました。藤原岳から下山してきた登山者から、この先の急斜面で落石が多く、先ほども発生したようです。そこはフクジュソウとセツブンソウの群生地になっていました。足場が悪いため、花の撮影に夢中になっていたり、不注意に歩くことで人為的な落石がありました。自分が撮影している時も、「ラクー」の声と共に、目の前1mほど先で大きな石が転がっていきました。

丸山よりも標高があるためフクジュソウは見頃になっていました。葉が長く伸びていく前で、ヒヨコのような姿です。

エダウチフクジュソウ

葉の裏や、萼の裏、茎には毛がありました。こちらはエダウチフクジュソウでした。

フクジュソウとセツブンソウが一緒に咲いているなんて、しかも植栽ではないなんて、見れて良かったです。どちらも毒があるので、春の山菜天ぷらには出来ません。

ヤマビルがいるってことは、鹿も然り存在します。鹿は食べ物に困ると毒耐性を獲得しながら有毒植物を食べるようになります。山の開発が進み、鹿が住処や食べ物に困るようになったら、これらの山野草は鹿の食害に直面する日が来るのかもしれないです。

セツブンソウとフクジュソウが寄り添うように咲いていました。

植物の撮影は満腹になったので、ガレ場に移動します。群生地の斜面を歩いて山頂を目指すよりも、こっちの方が歩きやすく、植物への負担も少ないように思います。落石を誘発させる心配もありません。

平坦な山頂部に到着しました。雪が点在していると、白い池塘みたいな感じです。

藤原岳

日本三百名山の藤原岳に到着しました。関西百名山や花の百名山にも選ばれています。藤原岳は標高1,144mなのに、山頂標識には標高1,140mと記されていました。

関西百名山ってことは、ここ三重県は関西なんやね。関東とは思っとわんかったけど、関西とも思っとわんかった。両方の狭間にあるため、中部の印象でした。

山頂は人が多いので、少し下に移動して昼食休憩にします。今日下車した伊勢治田駅と、帰りに乗車する西藤原駅は、駅の側にコンビニや個人商店がなくてびっくりしました。伊勢治田駅から少し離れた盛正堂という和菓子屋には、葛バーなるアイスが売っており、営業時間中に訪れることが出来たなら、ぜひ食べたかったです。

藤原岳の最高峰である天狗岩まで歩こうかと思ったのですが、藤原山荘から往復1時間ということで、今回は見送ります。

藤原山荘

藤原山荘に到着しました。1つの登山グループがこの避難小屋でクリスマスパーティーを開催し、数時間占拠と壁に穴開けて装飾し、器物破損したとかネットでプチ炎上してた記憶があります。実際に壁に穴を開けたのかは不明ですが、部屋を装飾すれば、自ずと他者を寄せ付けない感じになるので、凍える積雪期だったことも相まって、寂しい気持ちになります。

同じ鈴鹿セブンの竜ヶ岳には地上絵規模のイタズラが美談にされていたり、ちょっと残念な部分が鈴鹿山脈には、だいぶ印象に残っています。竜ヶ岳に登るなら、雪で地上絵が消える積雪期がお勧めでしょうか。

大貝戸道

大貝戸道を使って神武神社へ下山していきます。登山道は結構崩落気味でした。また融雪で泥まみれ、滑りやすく、怪我をしやすいです。

こちらにもフクジュソウが自生していました。北側斜面なので、開花時期が孫太尾根より遅い印象です。

太平洋セメント藤原工場が眼下に見えてきました。藤原岳で採掘したら、その場で工場に運べるわけですね。

あっと。藤原岳が埼玉県の武甲山や丹沢にある西山のようになる日は近そうです。そうなったら藤原山もしくは藤原丘陵とでも呼ばれるのでしょうか。

セリバオウレン

大貝戸道でもセリバオウレンを見つけました。

スズカカンアオイ

スズカカンアオイを見つけました。三重県には約20種類程のカンアオイが分布しています。東京と神奈川県では合わせて7種類です。静岡県や三重県、高知県といったカンアオイ多様性地域に住んでいる人は、本当に羨ましいです。

孫太尾根にもカンアオイの葉が存在しましたが、数えきれない程、葉の裏をめくりましたが、花が1つもありませんでした。考えられるのは花を付ける時期が異なる別の種であると考えられます。調べてみると、5月頃に開花するコトウカンアオイのように思いました。冬に咲くカンアオイだったら、痛んだ花がまだ残っている気がします。

神武神社

神武神社まで無事に下山できました。西藤原駅まで行き、電車の時刻表を確認します。

今日は塩浜駅周辺の宿に宿泊する予定です。時間と体力に余力があったので、藤原岳自然科学館に立ち寄りました。数日前までは咲いていたコセリバオウレンの花は散っていました。代わりにスズカカンアオイがありました。

西藤原駅

西藤原駅まで戻り、電車に乗ります。乗客は僅か数名でした。計画の当初は塩浜駅で夕食にする予定でしたが、近鉄富田駅で乗り越しできないため、近鉄富田駅で夕食にしました。イオンモールや飲食店の数が豊富です。

昭和四日市石油南

塩浜駅まで電車に乗り、宿に荷物を置いたら、鈴鹿川沿いの道路を歩きます。工場夜景の撮影地である昭和四日市石油南に到着すると、道路には数珠繋ぎに停めてある車が大名行列のように遠くまで並んでいました。

四日市市の工場夜景

無事に宿まで戻って、今日は終了になります。四日市市は工場夜景のド定番の地であり、このコンビナートは工場夜景おすすめランキングの上位に選ばれることが多いです。夜景の沼に足を踏み入れないように気を付けます。

日程表