こもれびトンネル

今回登山するのは伊豆大島にある三原山です。1986年に噴火して全島避難した歴史がある活火山です。外輪山の櫛形山や赤ダレ、表砂漠や裏砂漠といった山の観光スポットを訪れながら山頂のお鉢巡りをし、爆裂火口を見学します。山野草や海岸植物を観察したり、下山後には地層大切断面を訪れます。

まずは夜明け前の時刻、大島温泉ホテルから登山を開始します。まずはこもれびトンネルと呼ばれる場所を通過するのですが、暗くてよく分かりませんでした。登山の行程は、標準タイムが4時間39分で、距離が13kmあります。累積標高は登りと下りどちらも450m程です。

再生の一本道

再生の一本道に到着しました。こもれびトンネルと同様に、いつか森になる道と呼ばれ、幾つもの噴火で溶岩流や火山灰で覆われ植物がなくなった場所です。場所によって被害に遭った年代が異なり、植物が再生する過程、つまり植生遷移を体感することができます。

シモフリゴケ

シモフリゴケを見つけました。苔はイタドリと共にパイオニア植物として知られ、スコリア(火山岩)地帯に緑をもたらす初期の植物です。シモフリゴケは名前の通り白い色ですが、水に濡れると緑色になります。シモフリゴケは三原山では、至る所で見つけられます。

ハチジョウススキ

朝日が昇って来ました。実は前泊していたのですが、そのおかげで誰とも出会わない時間に綺麗な光景と出会えることになりました。ハチジョウススキが黄金色に輝いていますが、植生遷移によって、いつかは見られなくなってしまうかもしれません。

モルゲンロートに染まった三原山

モルゲンロートに染まった三原山の山体です。山頂で日の出を見るのも好きですが、あえて山頂ではなく、下から日の出に染まる山頂を見るのも良いです。ここら辺はジオ・ロックガーデンと呼ばれており、溶岩が無数に点在しています。

三原山

左側に見える山が、今から向かう櫛形山です。

伊豆大島にはキョンや台湾リス、台湾サルが野生で生息しています。島にある東京都立大島公園動物園から逃げ出して繁殖したのが原因で、東京都の動物園の責任であるため、東京都がお金を出して捕獲を続けています。増えすぎたキョンによって島の山野草が食べられ、危機的状況だったりします。

裏砂漠

黒いスコリアで覆われた裏砂漠に到着しました。目の前の山頂が櫛形山です。国土地理院が発行する地図で砂漠と記載されているのは、ここだけになります。つまり日本で唯一の砂漠とのことです。海からの上昇気流によって強風が吹き荒れ、歩くのが大変でした。風の丘とも呼ばれるだけあります。それ故に植物が育ちにくい環境で、砂漠となっています。

いつか森になる道

いつか森になる道が遠くに見えました。相模湾の向こうには大山など丹沢山塊が見えていました。

櫛形山

標高671mある櫛形山に到着しました。山頂の標識は特にありませんでした。

白石山

外輪山の白石山です。そちらも登ろうか考えていたのですが、正式な登山ルートはなさそうだったので、今回は見るだけにしておきます。

次の目的地は赤ダレです。三原山山頂の右手には富士山が見えています。実は、ここ最近は天気が良くても富士山が見えない日々が続いていました。今日は雲で富士山が部分的に隠れたりしながらも、終始姿を見せていました。

登ったばかりの櫛形山です。左手に富士山です。櫛形山の谷には水蒸気噴気孔があるのですが、今回は訪れませんでした。

車が入った跡がありました。歩かずとも来れるのですね。何もないような黒い砂漠を歩いていきます。ここからが表砂漠ルートになります。

赤ダレ

赤ダレに到着しました。太陽が真上に昇るような、もっと遅い時間に来れば、影がなくなってもっと素敵な景色だったかもしれません。それでも三原キャニオンと呼ばれるこの景色の迫力は伝わります。

表砂漠

表砂漠の方へやって来ました。目の前の平たい荒野は、幻の池の出現ポイントになります。雨が降った後に数日間だけ出現します。

滑台跡

滑台跡では、ここが島であり、旅をしているのだと感じさせる景色が広がっていました。

山頂のお鉢へ向かって登っていきます。途中に祠があったので、お参りしました。

伊豆諸島

利島、鵜渡根島、新島、式根島、神津島などの伊豆諸島が見えました。

お鉢まで登りきったら、トイレがある火口展望台へ向かいます。そこから火口西展望所へ進んでいきます。大島温泉ホテルから表砂漠までの区間ですれ違ったのは、たったの1人だったのですが、ここからは観光客をちらほら見かけました。

爆裂火口

火口西展望所から見た爆裂火口です。お鉢の中でも標高が低い場所なので、火口西展望所を良い角度で観察できませんでした。

お鉢をぐるっと一周してこそ、三原山の良さが分かると思うので、一周していきます。

眼下には表砂漠が広がっており、海の向こうには雪化粧した富士山や天城連峰など見えます。雲がほとんどなく、展望に恵まれた日でした。

爆裂火口が一番良く見える場所まで来ました。富士山との共演です。火口の底からは水蒸気が噴き出していました。

山頂の標識がある剣ガ峰へ進んでいきます。お鉢巡りは噴気孔の近くを歩くので、今から楽しみです。

爆裂火口と富士山と天城連峰

今朝歩いてきた櫛形山がちっぽけに見えます。櫛形山の左側、切れ落ちたような場所に水蒸気噴気孔があるのでしょうか。実際に手で触れることが出来、熱い部分は80℃を超えるそうです。

三原山の剣ガ峰

標高758mある三原山の剣ガ峰に到着しました。剣ガ峰そのものは標高749mしかないようです。

登山道の一部に、水蒸気が立ち上っている場所があり、地面に手を当ててみると、確かに温かかったです。レジャーシートを持って来て砂風呂をしたいような心地良さでした。

水蒸気の滝登りは見応えあります。

お鉢の外側に崩落したような場所がありました。1986年に割れ目噴火をした火口列です。三原山は割れ目噴火を幾つかの場所でしており、割れ目火口が点在しているようですが、植生が豊かになっていく中で、いつかどこだか分からなくなっていくのだと思います。

お鉢には様々な植物が生えていましたが、それらは最後にまとめて紹介いたします。

三原神社の鳥居です。鳥居の中に富士山を収めることが出来ました。近くにはゴジラ岩もあります。三原山頂口バス停へ下山していきます。

退避壕がありました。途中で下山中の女性に出会いました。一人で歩いていましたが、どうやら体調を崩した同行者が登山を中止して、三原山頂口バス停にある三原山レストセンターで待っているとのことです。こちらも2名だったので、タクシーを相乗りすることになりました。

三原山頂口バス停に到着しました。タクシーに相乗りして元町港まで向かいます。タクシー料金は2,500円だったので、4人ならバスよりも安く済みます。ちなみに三原山頂口バス停や三原山温泉バス停と港を結ぶ三原山ラインのバスは、土日祝のみ運行です。

タクシーに乗っている時に見えた富士山です。島の生活では切っても切り離せない貨物船を添えて。元町港でタクシーを降り、相乗りさせていただいた2人組ともお別れしました。本数の少ない波浮港ラインのバスにそれほど待たずに乗れそうだったので、バスに乗って地層大切断面へ向かうことにしました。

地層大切断面

地層断面前バス停でバスを降りて見学します。観光後はバスに乗り、元町港の近くにある元町北口バス停で降ります。ショッピングセンター「べにや」を訪れた後は元町港からジェット船に乗って帰りました。

ジェット船

ジェット船に乗る時も富士山が見えていました。ここからは島で出会った植物を紹介します。

シチトウスミレ

まずはシチトウスミレです。タチツボスミレが伊豆諸島で変化した種になり、通常は早春に開花するようですが、秋に咲くことも稀にあるようです。数か所で咲いているのを見かけました。

アツバスミレ

アツバスミレは海岸型のスミレであり、名前の通り葉が厚くなっています。開花している個体はありませんでした。

センブリ

センブリです。ヒロハセンブリのような幅広い葉の個体も見かけましたが、海岸型のような葉に際立って光沢がある個体は見かけませんでした。

オオムラサキシキブ

オオムラサキシキブ

アシタバ

アシタバは伊豆諸島原産と言われる植物で大島の住民は、アシタバを使ったチャーハンを作ったりするんだとか。

イソギク

イソギクは伊豆諸島や一部の半島にのみ自生する日本固有種です。本土では、他のキク科植物と交雑したハナイソギクが増えてしまい、純粋なイソギクは数を減らしていそうな気もしますが、伊豆大島では今回の観察地に限って言うと、交雑種を見かけませんでした。

オオシマハイネズ

オオシマハイネズ

ワダン

ワダンはぎりぎり咲き残っているかと思っていたのですが、咲き終えていました。

日程表