今回登山する山は日光にある男体山です。日光連山の1座であり、大昔に噴火したことのある火山です。コウシンソウなどの山野草を観察しながら進んでいきます。山頂からは中禅寺湖や女峰山、大真名子山、日光白根山などの展望があります。
まずは登山をする前に前泊をします。その時に、日光東照宮と日光二荒山神社を観光しました。本当は華厳の滝を見たかったのですが、水不足により滝の水量が少ないとの事前情報で断念しました。どこも修学旅行生や外国人観光客が大勢います。梅雨の時期のため、直前まで日光に行くかどうか迷いました。宿は前日に予約しました。硫黄温泉やアルコール飲み放題、ワッフルとプチシュークリームの食べ放題でした。
二荒山神社から登山を開始します。男体山は日光富士(下野富士)と呼ばれることもあり、富士山と同様に山頂まではひたすら登りです。志津乗越へ下山しますが、ロングコースであり、また危険個所もあるため利用者は少ないようです。入山可能な期間は4月~11月とのことです。
山野草を探しながら登っていきます。植物を探す場合は、目線の位置にある方が見つけやすいため、下りよりも登りの方が見つけやすいです。
ショウキランが隠れていないか気にしていたら、ギンリョウソウを見つけました。どちらも光合成をしない腐生植物ですが、ショウキランが見たかったです。
日光にはヤマビルが存在します。男体山は標高があるためヤマビルはまだ進出していないと思いますが、ヒルの分布拡大を助けるシカを見かけたので、いつかはヤマビルが発見されるかもしれません。温暖化が進めば、標高が高くても大丈夫になりそう。
登山道は笹が生い茂る場所もあれば、苔の森みたいな場所もあります。ヒカリゴケが自生するのですが、見逃してしまいました。またオコジョに出会えないか目をキョロキョロします。日光白根山ではオコジョの目撃情報が多数あるようです。
マイズルソウが咲いていました。
ミヤマニガイチゴだと思います。
中禅寺湖が眼下に見えてきました。岩が多い道もありますが、前日の雨で岩が滑りやすくなっておらず、良かったです。水分の多い泥の方が滑りやすいです。
八合目にある瀧尾神社までやって来ました。既に山頂から下山してくる登山者もおり、私は牛歩で進みます。
中禅寺湖は男体山が噴火し、流れ出た溶岩が川をせき止めてできた湖です。
登山道の両脇が苔の森になっています。岩場あり、崖あり、苔あり、色々楽しめます。山頂に行けば爆裂火口の景色も見られるようです。
ミツバオウレンを見つけました。山野草としてオウレン系統は人気がありますが、周囲の登山者は見向きもせずに登っていくばかりです。こちらは、萼片が通常の5枚ではなく4枚でした。他にも6枚や7枚もありました。残念ながら八重咲き個体は見つけられませんでした。
阿弥陀ヶ原と呼ばれる森林限界まで登ってきました。標高は2400mに到達しており、山頂までは僅かです。二荒山神社から男体山を往復する人ばかりのように感じました。男体山の魅力の1つである「薙」は志津乗越の方にあります。私はピークハンターでもありますが、登りと下りはなるべく違う道を歩きたいです。
登山道から中禅寺湖がよく見えています。この時間だとまだ富士山がうっすらと見えていたようですが、見逃してしまい、見ようと思った時には霞んで見えなくなっていました。
火山らしい光景です。男体山がまだ活火山であると確認されたのは2017年ですが、最新の火山噴火が約7000年前であるため、観光や登山に何も影響ありません。
二荒山神社奥宮に到着しました。ここでお参りをしていきます。ここからが、頂上のお鉢みたいな場所になります。
二荒山大神です。日光二荒山神社は男体山をご神体としており、古くから日光における信仰の対象でした。
太郎山神社でもお参りをしました。男体山の北側に標高2,368mの太郎山がありますが、関係性は良く分からずでした。展望はあります。
中禅寺湖の奥にある山を同定してみます。山肌が崩落して肌色になっている場所は足尾アルプスで、沢入山や中倉山があります。その右手にコウシンソウ(庚申草)で有名な庚申山があります。更に右に行き、急なカーブを描いた山容の頂上が日本百名山の1つである皇海山です。それらより手前にある山々は社山や黒檜岳です。
西側を向くと、目の前には戦場ヶ原へ続くルートです。立ち入らないようになっていましたが、様々な人が歩いた記録があるため、明確な道が存在するのかもしれません。奥の山塊は日光白根山です。
日光白根山です。こちら側へ下山すると湯元温泉街に着きます。ユモトマムシグサは、この地名から名前が付けられていたり、ショウキランも自生していたり、名瀑である湯滝もあります。登山せずとも観光や湯治など楽しめます。
左にある山が太郎山です。男体山の山頂から見る山の中で、一番迫力があってかっこいい山容でした。その右には大真名子山があり、その後ろに小真名子山が隠れています。一番右奥の山塊は女峰山です。
なんとなく撮影していたら、北アルプスの槍ヶ岳や穂高連峰が映っていました。一度見たら忘れない唯一無二の山容なので、同定しやすいです。
三角点がある方へ移動します。
男体山で一番標高が高い岩には剣があります。2012年に当時は鉄製だった剣が腐食によって折れてしまい、現在のステンレス製の剣になっています。
三角点に到着しました。最高地点ではないですが、標高2,486mある男体山に登頂しました。二荒山神社へ戻らず、そのまま先に進み、志津乗越へ下山をします。
イワハタザオが咲いています。男体山では他にミヤマハタザオも自生しているようですが、山頂周辺はイワハタザオで良さそうです。
ここから急に人が少なくなっていきます。車で訪れる人は登山口から山頂までピストンするのが楽だからでしょうか。車を置いてある登山口とは別の場所に下山して、バスで車まで戻る方法もありますが、志津乗越の方は長丁場になります。
稜線は厳しい環境であることが、目の前の木が語っています。
尾瀬にある燧ヶ岳を見つけました。5つのピークが存在しますが、双耳峰のような見た目は同定しやすいです。
太郎山は見てるだけで登りたくなってきます。最寄りのバス停から周回して登ると、コースタイムが9時間になるため、健脚向けの山でした。太郎山と女峰山、どちらも志津乗越を使おうとするとバス停から2時間の林道歩きが待ち構え、かなり大変です。
立ち枯れした木を見つけました。人間の口と馬とサイが取り込まれたような模様で、ベルセルクの世界でした。
今回の登山旅行では、バスに乗車中だったいろは坂でサルを見かけたり、登山道で鹿がいました。熊やオコジョ、カモシカには遭遇しませんでした。
大真名子山と女峰山です。女峰山は日本百名山を選定した深田久弥が2度挑戦するも、山頂に立つことが出来なかった山です。もし登頂していたら、女峰山が日本百名山に選ばれて、代わりに男体山が外されていたかもしれません。
道は荒れていたりしますが、ロープが設置してあることが多いです。
薙刀で切ったかのような崩落地に到着しました。これら崩落を薙(なぎ)と呼ばれ、日光特有の言い回しになります。
苔の森へ突入しました。八ヶ岳にいるような、そんな気分になる場所でした。時間があれば下山後、湯滝に訪れたかったのですが、そんな時間はなさそうです。バスを1本遅らせることは可能だったので、竜頭の滝に立ち寄れば良かったと後日思いました。
東武日光駅のツーリストセンターでは、日光を観光するためのバスのフリーパス券が販売されています。どこまで足を延ばすかによって値段が変わってくるので便利だと思います。その中に霧降高原フリーパスがあり、霧降高原からも女峰山を目指せる登山ルートがあります。
目立つ立派な木が見えたら登山道はもうすぐ終わりになります。
志津避難小屋に到着したので、中を覗いておきます。うん、かび臭いですね。本当はここに宿泊して逆ルートで登ろうかとも考えていました。避難のためだけに使いたい感じの小屋でした。
志津乗越に到着したら無事に下山完了になります。ここからは舗装された車道を2時間程歩きます。車道歩きはつまらないですが、山野草の発見もちゃんとあるので、歩きのメリットだと思います。ポジティブに行きましょう。植物は徒歩を裏切らないと、私は思っています。
昨夜宿泊したホテルに、ポットがあったので、今朝の内にアルファ米にお湯を入れてふやかしています。林道の脇に置いてあった大きな石で食事休憩などしました。
太郎山・志津分岐です。
ヤマタツナミソウかと思ったら、葉の表は毛がなく、裏は少しだけだったので、エゾタツナミソウでした。
自転車が停めてありました。行きは手で押しながら持参し、帰りは坂道なので乗って楽に下山する魂胆ですね。自転車の持ち主は女性のソロ登山者でした。ちなみに自転車のことを、「じてんしゃ」ではなく「じでんしゃ」と発音しがちな私です。それ故にタイピングすると自電車と誤入力してしまいます。
シロオビヒメエダシャク
ツボスミレは数あるスミレの中で最後に咲く種類と言われ、ツボスミレが咲いたらスミレの季節はおしまいという印象です。
ユモトマムシグサが咲き残っていました。ここは湯元に近い場所なので、テンナンショウの多くはユモトマムシグサかもしれません。
梵字飯場跡(駐車場)に到着しました。後ろを歩いて、同じバス停を目指す他の登山者を見かけました。多分、私と全く同じコースを歩いた人だと思います。帰りのバスや電車も一緒でした。
オオヤマフスマ
三本松茶屋がある場所まで来たら、バスに乗って日光駅へ向かい、電車に乗って、その日の内に帰宅しました。
ここからは今回の登山や林道歩きで出会った植物を紹介します。まずは咲き残りのヒメイチゲです。ほとんどが既に結実していました。1つだけ咲き残っていました。
ゴゼンタチバナです。石川県にある白山の御前峰で発見されたことが名前の由来になっています。
ツマトリソウです。白い花びらの端に赤色が入ることがあり、鎧の威色目の「褄取り(つまどり)」に似ていることが由来です。そのような個体は今回見かけることはありませんでした。
コケモモは、実を見たことはあっても花は初めてかもしれません。赤い実はジャムや果実酒として利用できます。
ウスノキ
イワカガミの群生です。イワカガミは至る所で咲いており、所々では群生していました。
コセリバオウレンだと思います。ですが、男体山やその周辺にコセリバオウレンが自生するとはネットで検索しても出て来る気配がなかったので、どうなんでしょうか。僅かな区間でしか見かけなかったので、気が付かれていない可能性もありそうです。
ハルカラマツが僅かに咲き残りながら、結実していました。類似植物であるカラマツソウとミヤマカラマツはこのような実を付けないので、見分けやすいポイントになります。
イチヨウランも咲いていました。生育しているとは知ってはいましたが、実際に出会うとは思っていませんでした。
そして一番見たかったコウシンソウにも出会えました。どこに自生しているか知らずに訪れたのですが、普通に出会うことができました。