前日の夜に丹沢では降雪があり、今日は三ノ塔から雪化粧した丹沢の山塊、特に表尾根と富士山の絶景に逢いに行きます。霧氷も見れたら満点です。そして塔ノ岳を経由して三角沢ノ頭を目指します。そこは寿岳とも呼ばれ、新年を祝う1月の登山、春節を祝う登山としていつか登頂したい場所でした。そして大倉尾根で下山します。
まずは渋沢駅から大倉バス停へ向かいます。駅に着いてから、秦野駅からヤビツ峠へ向かうバスが区間運休していることを知りました。そうなると表尾根で見かける登山者数は少なくなりそうです。静かな稜線歩きとなる予感です。
ルート
バスで大倉に到着したら、登山開始です。三ノ塔へ一番早く到着するには、始発のバスで大倉に向かって三ノ塔尾根で向かう必要があります。残念なことに寝坊してしまいました。寝坊したがために、今から最速で三ノ塔を目指すなら、秦野駅からヤビツ峠までバスに乗り、そこから登山を開始することです。ヤビツ峠へのバスが区間運休していなかったらの話です。
大倉かヤビツ峠か迷った挙句、たまたま大倉を選んでしまったのですが、選択は間違えていなかったようです。なぜそこまで急いでいるかというと、今は雲一つない空でも、午前9時過ぎには富士山が雲で部分的に隠れ、10時過ぎには富士山が見えなくなることがよくあるからです。車の利用なしで綺麗な富士山を見るには、山頂で前泊するか、始発のバスに乗ることがマストです。
三ノ塔尾根を登山道で進むか、林道で進むかの分岐に到着しました。より早く合流点の牛首に到着するために林道を選びます。登山道と比べて標準タイムを10分短縮できます。
舗装道路ですが凍結してしておらず、先行する人が僅かのため新雪に足跡を残せました。残念ながら霧氷とは出逢えないことになります。それでも木に雪が積もって、やる気と元気を与えてくれます。寝坊で遅れた時間を急ぎ足と小走りで取り戻します。
下山時に通過する大倉尾根は凍結祭りで、派手に転ぶ羽目になります。しかも私が滑って、すぐ後ろを歩いてた人も同じ場所で滑ってしまう始末でした。私の転倒が視界に入っていなかったのかもしれないです。
牛首に到着しました。ここからが舗装されていない登山道になります。気温は低いですが、顔は大量の汗をかいてます。汗をぬぐったタオルは寒さで凍り始めてました。
今日のために持参した登山道具はチェーンスパイク、軽アイゼン、ストック、防寒着です。表尾根で出会った登山者のほとんどがチェーンスパイクを装着していました。
三ノ塔尾根には眺望がありますが、標高が低いために富士山が隠れてます。山肌を白く染める雪は、日中には幾分溶けてしまうと思います。再び寒くなっても透明に凍るだけだと思い、白い景色を見るには、翌日訪れても時すでに遅しです。そう自分に言い聞かせて、今日は山に行かずに二度寝をする怠惰を一蹴しました。
ベンチを発見ですが、立ち止まる余裕はありません。牛首から三ノ塔までは標準タイムが約2時間、その2倍の速さで登っていたためか、大きい段差を登る時に、ふくらはぎが軽く痙攣するようになりました。なるべく歩幅を小さく進みます。不調のふくらはぎは、ゆっくり歩くよう脳に訴えかけますが、絶好調の太ももは、全力疾走したい気持ちを訴えてきます。相反するもどかしさです。
痙攣の原因は水分不足やエネルギー不足、休憩不足だと思ったので、3つの不足を補うことにしました。現状は遭難予備軍へのイエローカードだと思います。今日歩くコースの標準タイムは約11~12時間になります。足がダメそうなら、塔ノ岳まで行かずに表尾根にある烏尾尾根や政次郎尾根で下山する予定です。
木々の隙間からこぼれる陽の光はとても印象深かった雪の道です。自分の性格を考えると、寝坊しなくても、ひたすら急いで進んでいたと思います。植物がある時期だと、山野草が自生していないか左右上下を見まわし、凄く遅いペースになってしまいます。
無事に三ノ塔に到着しました。誰もいない三ノ塔は初めての経験かもしれません。それとも建物の中には誰かいたかもしれません。いつもはここで朝食するのが定番で、そんな登山者をよく見かけますが、今日はまだお預けです。
大山も雪が積もっていました。今年は大山北尾根とエボシ山・渋田山を歩いてみたいと思ってます。出来れば三ノ塔からヨモギ平のルートも繋げて1日で歩ければ、楽しそうです。
そして今日急いで登ってきた理由が、こちらの景色が見たかったからです。富士山と白い丹沢山塊(表尾根)です。山肌にもっと雪が多ければ良いのですが、一番積雪が多いのは翌月の2月なので、その時にチャンスがあれば良いです。寝坊の影響もあってか、雲で富士山の一部が隠れてしまっています。夜明け前の寒い時に寝坊せず起床するのは困難の技です。
不幸中の幸いと言えば良いのか、三ノ塔に到着してから30分後には富士山のほとんどが雲で隠れてしまいます。標準タイムより1時間は巻いたので、急いで登って来なかったら富士山は確実に見れていませんでした。その後、富士山は二度と姿を見せず、天気は悪化し、雪が降りだすことになります。
これで1つめの目的は達成できました。2つめの目的である三角沢ノ頭(寿岳)を目指して表尾根を進みます。本当はミズヒ大滝の氷瀑を見る3つめの目的があったのですが、次回以降の課題になりました。4つめの目的はカントウカンアオイという名の花の観察です。以前カントウカンアオイを見かけた場所では見つかりませんでした。11月頃に花を咲かせ、今ならまだ綺麗な状態の花が見れるのではと思っていただけに残念です。
本当は寒くて山に行くどころか、家から出たくないため、山に行く理由をあれこれ考え、抱き合わせてモチベーションを高めています。
三ノ塔で定期的に衣替えをするお地蔵さんです。今日は合計19km歩き、累計標高は登りと下りそれぞれ1,850mあります。無事を見守ってくれるでしょうか。
塔ノ岳を中心に、左に大倉尾根、手前に表尾根、右手に長尾尾根、その奥に丹沢山へ続く主脈が見えます。それでも丹沢のたった一部になるので、丹沢山塊の深さがよくわかります。丹沢は東西約40km、南北約20kmあり、神奈川県の約1/6の面積に相当します。知名度のない無名な山頂を含め、丹沢にはどれくらいの山頂が存在・認知されているのでしょうか。幾つもの山に、手作りの山頂標識が幾つもあり、スタンプラリーのように写真を集めてみたいかもです。
烏尾山に到着すると、もう富士山は隠れており、急ぐ必要もなくなったので朝食にします。無理せず歩いていくことで、足の痙攣に悩むことはなくなります。
近くで物音がすると思ったら、鹿がこちらの様子を見てました。私の目の前を歩いている登山者は何も気づかず進んでいくので、幻聴かと思いました。鹿が冬眠をしない理由が前から気になっています。ちなみに冬眠するはずの熊が冬眠しなかった場合は、冬眠できるほどの十分な栄養を冬眠前に摂取できなかったことが原因らしいです。なるほど。
行者ヶ岳に到着しました。これまでに、何人もの登山者とすれ違います。塔ノ岳にある尊仏山荘や、丹沢山にある、みやま山荘に1泊したのかもしれません。前日から降雪で今日が晴れとくれば、泊まって雪景色や霧氷に出会いたくなりますよね。今年の元旦から丹沢にある山小屋は宿泊料金が値上がりしてしまいました。
鎖場にやって来ました。チェーンスパイクを装着していないので、慎重に進みます。チェーンスパイクは持って来ているのですが、取り出すのが面倒くさくて、しまったままです。山では食べることすら面倒に思えるため、飢えるまで食事しなかったりします。そんな性格が本格的な雪山では凍傷や命に関わると思い、八ヶ岳などでの雪山登山はしていません。
いつも思うのです。登山こそが最大に面倒くさいことなのに、なぜ山に登ってしまうのだろう。
2つめの鎖場は更に難易度があります。雪で足元が滑らないようにゆっくり下りましたが、鎖がツルツルで鎖をちゃんと握るのに苦労しました。登山技術が皆無なのに、よく大きな怪我や遭難をせずに今まで登山してこれたと思います。
ここは、これでもかっていうくらい、人の手が加わってますね。そうしないと多くの登山者の通行で、あっという間に山が削られてしまう気がします。貴重な山野草もここにいるので、植物も守られています。
今まで歩いてきた表尾根を振り返ってみると、大山もよく見えて、綺麗な景色です。来月はウスギオウレンを見に丹沢を再訪問しようかと思いながら、どうなることやら。
政次郎ノ頭に到着しました。この先にある政次郎尾根は荒れており危険と看板に書いてあります。以前通過した時は、普通の登山道の印象でした。それ故に足の調子が良くなかったら、この尾根で下山することも考えていました。多くのヤマビルがいるので、ヒルの活動時期に歩くのは大変危険だと思います。
去年までの3年間、新年最初の登山は大倉から塔ノ岳を経由して丹沢山を目指すピストン登山をしていました。ダイエット目的だったり、そもそも目的がなかったりするのですが、自然と毎年の習慣や義務になってしまうのは苦行だと思い、今年は違う山に登りました。鍋割山の西南にある檜岳山稜です。登る人が少なければカモシカに遭遇できるかもと祈るも、空振りです。
新大日で昼食にします。塔ノ岳で昼食をするには遅い時間になってしまう時に、ここはベンチの数が多くて便利だと思います。山頂らしくない名前なのは、昔々、山頂に大日如来像を安置したことが山名の由来だからです。
倒壊したまま廃屋になっていた新大日茶屋が解体されたばかりで、開放感のある山頂になっていました。雲が生い茂った白い葉のように見えたので、自分の中に童心がまだ残っていることを知りました。雪に付いた多くの足跡が、表尾根が人気の稜線であることを意味しているように思います。
はるばる大倉から登って来たけれど、大倉まで下山するのがまた大変そうと思った瞬間です。
塔ノ岳に到着しました。大倉から大倉尾根を登ってきたであろう登山者でにぎわっています。富士山は隠れたままです。以前、どこかの山小屋に宿泊した時に古い登山雑誌を呼んだのですが、塔ノ岳が丹沢最高峰であると記載されており、ビックリしたことがあります。
昼食の時はあまり休憩しなかったので、ここで休憩しようかと思いましたが、人混みは苦手なので、そそくさと次に向かいます。
蛭ヶ岳の方角です。先週は天気が曇りだったけれど霧氷が綺麗だったようです。丹沢最高峰であり、大倉からいつか日帰りピストンしてみたい場所です。標準タイムが13時間になりますが、それが出来るようになると、丹沢で観察できる山野草のバリエーションが結構広がります。公共交通機関でしか登山しないため、不便さを足で補う必要があるのは、しょうがないことですね。
丹沢山の方へ向かっていきます。この丹沢主脈は展望に優れた稜線だと思います。それに雰囲気があります。欠点なのが、雨や雪ですぐ泥まみれの登山道に変貌してしまうことです。
今から丹沢山へ向かう人も多くいました。丹沢山塊は日本百名山に選ばれております。最高峰の蛭ヶ岳に登頂して日本百名山を踏破したとするのか、丹沢山塊の中心部的存在かつ名前も唯一「丹沢」の名が入っている丹沢山を登頂して日本百名山を踏破したとするのか、人によって異なる気がします。私はどちらかだけ登った場合は、暫定的に日本百名山に登頂したと思ってしまう派です。両方登って、日本百名山の1座を登ったと考えてます。
日高から裏道を進んで三角沢ノ頭(寿岳)に向かいます。一般登山道ではないため、道は整備されていません。1人分の足跡があるだけでした。
念のためチェーンスパイクを装着します。だったら最初から表尾根を歩く段階で装着してれば良かったと思うかもしれませんが、なるべく木道をチェーンスパイクで痛めたくないので... もごもご... もごもご...
1年以上前にチェーンスパイクを買ったのに、今まで使っていませんでした。チェーンスパイク自体も使った経験がなく、デビューになります。自分で買っておきながら使わず嫌いだったのかも。
既に雪に付けられた足跡は1人分で、往復した様子はありません。キュウハ沢出合まで降りて行ったのかもしれません。そこまで歩いてみたいですが、そこからバス停がある場所まで歩き終える前に日が暮れそうです。車があれば、塩水橋に車を停めて、天王寺尾根を使って周回歩きが出来るので、公共交通機関の不便さを痛感してしまいます。
足跡のおかげで、道に迷う心配が皆無だと思っていたら、足跡が間違った道に進んでおり、私もそっちに行ってしまいました。崖で足跡が途切れ、引き返した跡があったため、同様に引き返します。誰かも分からない他人頼みは良くないですね。自分で道を選んでいきます。
三角沢ノ頭(寿岳)に到着しました。標高は1,331mあり、日高から標高を130m下がった場所になります。
山頂の標識があるのは嬉しいですが、ほぼ読めないです。
展望もあり、表尾根を間近で見ることができます。日光が当たらない斜面のためか、表尾根の山肌に雪が多く残っています。また三角沢ノ頭(寿岳)の斜面は真っ白で、足跡は皆無でした。好きな丹沢の山頂ランキングで、上位に来そうな場所です。私の中では上位です。
日高まで戻ります。登り返しが本当にきつかったです。今まで三ノ塔尾根や表尾根を歩いてきた疲労で足が思うように上がりません。左手前の山が、先ほど登頂した三角沢ノ頭(寿岳)です。戻る途中で、3人組の登山者を見かけました。
大山の近くで変な雲があると思ったら、局地的に雨が降っていそうです。日高に戻ったら、丸太に腰かけて、お菓子をガムシャラに食べてしまいました。これで元気になりました。
塔ノ岳への道は、融雪によって泥の水溜りが多くあったため、チェーンスパイクが泥まみれになる前にしまいました。
塔ノ岳に戻って来た時には、青空はなく、極寒でした。大倉尾根を急いで降ります。
雪が降り始めました。これなら明日も雪で白くなった丹沢を楽しめそうですね。ですが、翌日には筋肉痛が現れ、数日は痛みと仲良くお付き合いすることになるのでした。
あとは帰るだけの、もう用事がなくなった下山はなるべく早く進んでいきます。頭の中にあるのは、より早い時間のバスと電車に乗って、家に一秒でも早くたどり着くことです。登山地図に書かれている標準タイムとバスの時刻表とにらめっこしたら、バスに乗り込む時間を設定します。最後は疾走して、予定より1本早いバスにぎりぎり乗り込めました。
登山を始めた頃は、登山バッジ集めにはまり、次第に山小屋Tシャツにはまり、どっちも部屋の隅で眠ったままになってしまった過去があります。カメラで景色を記録に残し、肉眼でも景色を堪能できれば、それで十分なのかもしれないです。山小屋Tシャツを山小屋で誰かに盗まれた経験もありますし。
丹沢には数多くの丹沢Tシャツが存在しますが、個人的に一番お勧めするのはヤビツ峠で売っているTシャツです。渋い字で「矢櫃峠」とだけ書かれたシンプルさが良いです。