寄バス停

今回登山する山は、丹沢の伊勢沢ノ頭と檜岳、雨山の3座です。どの山頂も鍋割山の西南にある檜岳山稜にあります。寄バス停から歩き始めるため、側にある松田町寄ロウバイ園でロウバイの花を見ようと思います。前回、これらの山頂を登った時、やどりき大橋から伊勢沢ノ頭の区間は、県道710号線を歩きました。今回は代わりに伊勢沢ノ頭南東尾根を歩きます。

まずは新松田駅バス停からバスに乗車し、終点の寄バス停で下車しました。「寄ロウバイまつり」の開催はまだですが、1台のバスの座席がちょうど埋まるくらいの混雑度でした。寄バス停で下車した登山者のほとんどが鍋割山へ向かいます。

ルート

ルート

まずは、やどりき大橋へ向かって歩いていきます。橋まではずっと車道です。車があれば、橋まで歩かずに済むのですが、公共交通機関のみで登山をする者の宿命です。猟友会の集団がおり、下山して戻ってくる頃には獣肉パーティーをしていたのですが、この日はずっと銃声が聞こえませんでした。現在は狩猟期間中だったので、新年早々弾撃ちかと早合点でした。狩猟の格好で新年会のようです。

少き歩き始めてから何か忘れていることに気が付きます。まず最初にバス停の側にある寄ロウバイ園へ立ち寄るのを忘れていました。引き返します。

寄ロウバイ園ではロウバイの花が開花しはじめていました。翌週の1月中旬から入場料を徴収されますが、見頃は翌月の2月頭だと思います。ただ単にロウバイ(蝋梅)と呼んでしまいましたが、正式にはロウバイではありません。ソシンロウバイ(素心蝋梅)です。実は、ロウバイは内側の花被片が濃い紫色くなります。花全体が黄色いソシンロウバイしか丹沢周辺では見たことがありません。ロウバイで有名な埼玉県秩父にある宝登山もロウバイではなく、ソシンロウバイです。

真っ赤な橋が特徴的な、やどりき大橋に到着しました。数少ない駐車スペースはガラガラでした。ここから橋を渡り、伊勢沢ノ頭南東尾根を通って伊勢沢ノ頭に登頂します。そして稜線を歩き檜岳と雨山の山頂を踏破し、ここに戻ってくる時計回りの周回コースを歩きます。一般的には 橋を渡らず、右にある道を進み、最後に伊勢沢ノ頭を踏破し、やどりき大橋から戻ってくる反時計回りコースで歩く人が多いです。

実は、今日はここに来る予定ではありませんでした。先月コロナに感染し、気管支炎がまだ完治せず、体力も落ちてしまいました。体重は1週間で3kgも減ったのにリバウンドしてしまいました。なので、今日は丹沢の大倉尾根を歩いて、体力的にきつそうなら即撤退しようと考えていました。新年の初登山でもあるため、体力的に大丈夫なら塔ノ岳を通過し、寿岳(三角沢ノ頭)を踏破して縁起でも担ごうと思っていました。

手の届かない場所にサイハイランの葉がありました。普通は1株に1枚の葉ですが、2枚の葉が出ている個体もありました。よじ登れない急斜面にあったためか、鹿の食害から守られているように思います。

今日の朝、電車に乗っている時に、車窓から富士山が良く見えて雲が皆無でした。伊勢沢ノ頭は富士山写真を撮影する秘境地であるため、行き先を急遽変更しました。体力がなければ、伊勢沢ノ頭南東尾根ではなく林道秦野峠まで県道710号線を歩く。それならずっと緩やかな舗装道路なので、引き返すのも容易です。

寄バス停から県道710号線を歩き、やどりき大橋を渡り、林道秦野峠まで伸びている県道710号線を少し歩くと、右手に伊勢沢ノ頭南東尾根への取付がありました。ここから尾根を歩きます。

今日の即席の計画は、
①体力と時間があるなら伊勢沢ノ頭に登頂し、秦野峠から未踏の日影山(ブッツェ平)を通過し、丹沢湖にある神縄トンネルへ下山する予定です。
②時間に余裕がなく、急ぐ体力がないなら伊勢沢ノ頭と檜岳、雨山を登頂する計画です。
③体力がないなら伊勢沢ノ頭だけ登り、舗装道路経由で寄バス停へ戻る計画です。
④体調悪化なら即撤退です。

伊勢沢ノ頭に登頂した時に、②の3座周回計画に確定しました。

ここから本格的な登山道になります。伊勢沢ノ頭南東尾根は登山地図によっては記載されていない道ですが、よく整備されており、歩きやすく、登山テープが豊富にあります。難易度は低めです。久しぶりの病み上がり登山で幾度も休憩しながらゆっくり歩いていたのですが、やどりき大橋から3時間で伊勢沢ノ頭に到着しました。舗装道路経由だと大幅に迂回するため、標準タイムで3時間30分かかります。今回の私の足だと4時間以上はかかっていたかもしれません。

登山道の片側が切れ落ちている道幅の狭い場所もあります。ですが、やどりき大橋から雨山峠までのルートの方が断然危険度があります。人は登山時よりも下山時に事故るので、よりリスクがあるルートは疲労する前に通過するのがベストです。

ここでいったん立ち止まります。普段登山している時は、手前を見て、ルート上の障害物などを感知し、遠くを見て、行くべきルートを感知しています。自然とそんな行動を自分がしていることに今気が付きました。そして、山の斜面を見ると、登山道がぱっと見分からず、若干戸惑います。これから、どうやって登っていくのか、木々が多くて軌跡が不明でした。

実際に歩いてみると、九十九折になっているだけだと理解しました。ただ、まっすぐ道が続いているように見えて、実際は折れないと行けないことがありました。そんな時に限って、折れた先の道に草が茂って、若干、道だと認識しにくかったりします。ただ、GPSアプリで自分の位置を把握しているため、不明瞭な場所でも道迷いによる遭難リスクは低いと思います。

次第に景色が開けてくると、鹿策に囲まれた場所に出ました。目の前には鹿がいたのですが、すぐに逃げられました。

青空と落葉した木々が広がる勾配の優しい道は、和みます。何もない感じは開放的ですが、一年を通して山野草もなさそうな感じです。仮に植物が出現しても鹿の食害で消えそうです。伊勢沢ノ頭南東尾根はここまでで終了となります。

秦野峠と伊勢沢ノ頭を結ぶ一般登山道に合流しました。標識がありますが、今まで歩いてきた道に対しての標識はありません。バリエーションルートではなく、林業業者の作業道です。伊勢沢ノ頭へ最短距離で向かう道ですが、急登がないため歩きやすかったです。

標高1,177mの伊勢沢ノ頭に到着しました。富士山の展望を期待していたのですが、大部分が雲に隠れてしまったため、写真は撮影しませんでした。前日は雨や雪が降る予報だったのに、お昼になっても富士山が良く見える晴天でした。今日もそれを期待したのですが、雲が多いです。

近くにあった朽ちた倒木に座って昼食にします。次の山頂である檜岳まではアップダウンは少なく、展望のある稜線歩きです。檜岳の方から登山者がやって来ました。やどりき大橋から周回コースを歩いているとのことだったので、雨山峠から橋までの崩落が激しいルートは、通行可能であると認識しました。

振り返って、伊勢沢ノ頭の山容を眺めます。丹沢は、山頂名に「沢ノ頭」を付けることが多いような気がします。板小屋沢ノ頭や穴ノ平沢ノ頭とか。そして丹沢にある数多くのピークの中で、たいてい認知度の低い場所だったりする気がします。

標高1,167mの檜岳に到着しました。ここにベンチがあるのを忘れていました。ここで昼食にするのが良かったかもしれません。陽が当たらないため、地面の土は凍ってカチコチでした。

石棚山稜であろう山容が見えました。箒沢公園橋へのルートは年々崩落が進んでいる気がするのですが、どうなっていくのでしょうか。そういえば表尾根にある新大日茶屋が先月解体されたようで、コロナの罹患と時期が被り、手伝うことが出来ませんでした。あそこは昨年、道標が新しくなったり、地面に砂利が敷き詰められたり、見違えるようになった気がします。

お尻の白いハートが特徴的な鹿に遭遇しました。鹿がいる場所にヤマビルがいるイメージなのですが、今日歩くルートも一部の区間がヤマビルの巣窟になっているようです。

登山道上にある大きな崩落地に到着しました。今日歩いたルートの中で、展望があり一番好きな場所です。向こうの山は先ほど歩いてきた檜岳です。

標高1,176mの雨山に到着しました。ここだけ岳ではなく山なんですね。標高の高さは3座の中で真ん中なのに。ここがもし雨岳だったら、今から向かう雨山峠は雨岳峠となり、語呂が悪いですね。

隣の山である鍋割山がかろうじて見えました。なんだか熱があるような、全身に疲労の蓄積を感じます。無事に帰宅した時に熱を測ったら平熱でしたが、元気な時の登山疲労とは別の、今まで体験したことのない疲労でした。

初めて鍋割山を登ったのは、数年前です。その時は玄倉バス停からユーシン渓谷を通り、雨山峠を通過しました。下山は櫟山を通って寄バス停を目指しました。初回の鍋割山でそのルートを選択する人は、あまりいないと思いますが、ユーシン渓谷と鍋割山の両方を一度に行きたい気持ちが強かったです。

アセビが群生する痩せ尾根です。シロヤシオも自生しているので、春になったら歩きたい場所です。

ベンチがある雨山峠です。まっすぐ行けば鍋割山、左へ行けばユーシン渓谷です。今から向かうのは右になります。今日の核心部は今まで歩いた道ではなく、これからになります。

ベンチで小休憩をしながら、帰りのバス時間を確認します。1時間に1本しかないバスなので、どの時間のバスに間に合うように歩くか計画を立てました。急げば午後4時45分のバスに間に合うかどうかです。最後は標準タイム80分の車道歩きなので、そこでタイムを縮める予定です。

先へ進みます。ここは自然と小石がポロポロと上から転がってくる場所でした。V字に切れ込んだ白色と茶色と緑色のコントラストの世界は、魅力があります。特に、人とすれ違うことも、追い抜かされたりすることもない、自分の時間を過ごせます。

沢は凍って、スケートリンク場になっていました。こんなに寒ければ、丹沢の宮ヶ瀬湖にある宮ヶ瀬越でシモバシラの氷華を見に行くのもありだったかもしれないと思いました。

最近になって知ったことがあります。丹沢の大山に行くなら「丹沢・大山フリーパス」が便利です。そのことは前から知っていました。実は、このフリーパスは大山へのバスだけでなく、表丹沢の玄関口であるヤビツ峠や大倉、不動尻の最寄りである広沢寺温泉入口など幾つものバスにも使用できるようです。とっても優秀なフリーパスだったとは寝耳に水でした。伊勢原駅から大山の玄関先までのバスとケーブルカーだけ使える、不要なフリーパスだと先入観しかなかったです。

向こうに木の橋がかかっているように見えて、実は橋が落ちてしまっています。けれど、ロープが追加されており、ロープで登れるようになっていました。放置されている地域かと思いきや、最低限の処置がされていました。

老朽化と錆で耐久性があるのか疑わしい鉄製の通り道です。安全だと信用できない自分がおり、慎重に振動を与えないように渡りました。

ザレた細い道は、砂が流れ落ちているためか、ただの斜面になっている区間もありました。滑るのに、手すり用ロープやチェーンがないので、牛歩で進みました。

イチヤクソウ

寄コシバ沢に到着し、ここから沢沿いを歩きます。何度か渡渉する必要があります。

あれ?去年、ここを通過した時はなかった気がする設置物です。そう、気がするだけで確証はありません。だって、記憶力が悪いもん。観察眼を持ってないもん。葉がないように見えるので、冬は葉が残らない植物のようです。気になりますね。

ここも渡渉ですね。濡れた石に足を置いた瞬間、足が思いっきり滑りました。転びそうになりながらも、滑っていない足で更にもう一歩進み、緊急回避できました。疲れで気が緩んでいたかもしれません。

寄コシバ沢は最後に左側の山の斜面を歩くのを、依然歩いた記憶として覚えていました。左側にピンク色の登山テープがあったため、進んでしまいました。しかし道がありません。沢は落差のある堤防なので、沢をそのまま進むことは不可能です。左側の山の斜面から強引に堤防の下に移動しました。

実は、右側の斜面に正解の登山道があり、沢の右奥にピンク色の登山テープがあったのですが、見落としていました。堤防の下に移動した段階で、右側を歩くことに気が付き、ルートを修正しました。

少し進むと、ようやく左側の斜面を歩く場所に到着しました。さっきはこの場所と勘違いしていました。この斜面を歩けば、やどりき大橋に戻って来れます。記憶だけを頼りに歩くと、勘違いという先入観で失敗しますね。現在時刻とバス時間を比べると、予定していたバスに間に合いそうです。

やどりき大橋到着し、早歩きで寄バス停を目指しました。余裕をもってバスに間に合い、無事に帰宅しました。今回は日影山(ブッツェ平)に行く時間と速度がなかったため、いつかリベンジしに行きます。その時は、未踏のタケ山も含めて登りたいとか、あれこれ詰め込んで、結局は妥協する結果になりそうです。

日程表