今回登山する場所は、鹿児島県の指宿にある開聞岳です。薩摩富士とも呼ばれ、その姿は桜島からでも一目瞭然なくらい印象的な富士山のような山容です。今回はツチトリモチとヤッコソウに会いに来たのと、未踏の日本百名山だったので、遠征しに来ました。
まずは指宿駅周辺の宿に前泊し、始発の電車で開聞岳の最寄り駅である開聞駅に向かいます。開聞岳のために前泊するのなら、指宿駅周辺がおすすめです。宿が多く、開聞駅までの電車乗車時間が少ないです。また鹿児島郷土料理の「とんこつ」や指宿ご当地グルメの「温たまらん丼」などが安く食べられる「青葉」という店が指宿駅前にあります。昨夜食べに行ったのですが、今回数日間滞在した鹿児島で、一番良かった食事処です。
開聞岳への登山口がある開聞駅に到着しました。車内はガラガラで、他の登山者は、同じ指宿駅から乗っていた1名のみでした。その人は12時頃のバスで指宿へ戻るようですが、私の足は遅いため、14時過ぎの電車で指宿に戻ります。今日乗車した指宿枕崎線はJR最南端駅である西大山駅があるなど、田舎で電車の本数が少ないです。乗り遅れないように時間管理します。
道端にスミレが返り咲きしていました。リュウキュウコスミレまたはコスミレのようです。
開聞岳へ向かって進んでいきます。標高924mと低山ですが、開聞駅の標高が47.8mなので、標高差はまあまああります。山頂付近はとても滑りやすい岩だらけですが、それ以外はアップダウンすることもなく、円を描くようにゆっくり標高を上げながら登る登山道のため、初心者向きの日本百名山です。また道の分岐が皆無なので、迷子による遭難はありません。
天の岩屋供養塔群を通過します。
かいもん山麓ふれあい公園まで来ると、ヤマハッカを見かけました。キャンプ客も見かけます。車なら、開聞岳の直下まで楽に来れます。ここら辺で開聞岳1合目だと思います。
今の時期、鹿児島の大隅半島ではツチトリモチやヤッコソウだけでなく、ヘツカリンドウも咲いています。そっちに行こうか迷いましたが、天気が良く山頂からの展望も期待できそうだったので、薩摩半島にある開聞岳に決めました。
開聞岳2合目に到着しました。アスファルトの道はここで終了し、本格的な登山道になります。
登山地図です。登り3時間、下り2時間といった標準タイムでしょうか。標高200mにいるから2合目なのだと理解しました。標高500mは5合目。
土を見ると開聞岳が火山であることが良く理解できます。指宿市内全域が火山帯で、開聞岳は活火山のようです。最後の噴火から1000年以上経過しているためか、入山するまでは、そんな印象はなかったです。
ツルソバ
開聞岳2.5合目で朝食タイムです。時間は沢山あるため、のんびりモードです。登山をする前に、枚聞神社へお参りしようと思ったのですが、下山して余った時間でじっくり観光したいと思ったので、後回しにしています。
開聞岳5合目にあっという間に到着です。標高を上げるほど、岩や傾斜が出てきたりするため、よりゆっくりモードで進みます。県外から遠征に来ている人の割合が高かったです。鹿児島の人は紅葉のある山に流れているとすれ違った人が言っていました。
安心してください。開聞岳は後にも先にも紅葉のない山なので、紅葉が見頃の時期に登れば良かったと後悔することはありません。ちなみに翌日は韓国岳や高千穂峰へ登ろうかと考えましたが、紅葉はほぼ終了のため、次回以降に登ると決めました。紅葉の時期に来ると、ヤッコソウがまだ咲いていないです。ヤッコソウに会わず、おいどん悔しか。
5合目からの展望です。霞んでいるのは朝靄のせいでしょうか。
白い斑入りスミレの葉を見つけました。こちらは先ほど見つけたスミレと違って咲いていませんでした。開聞岳にはヒメミヤマスミレが自生するようですが、スミレの同定は難しすぎてお手上げです。
コクランは、何株もありました。どこでも見かけやすいランだと思います。
石碑がありましたが、読めないです。登山道開通を記念した警察署関連の何かだと思います。いずれ、普通の石へ還っていくことでしょう。
九州では昔から食べられてきたツワブキです。開花している今の時期は、茎が硬いため、食べごろではないです。
仙人洞は洞窟のようになっていますが、中に入らず通過します。
キッコウハグマ
ハシゴが出てきました。ここまで来ると、頂上までは目と鼻の先です。
ツルツル滑る岩が朝露で濡れて余計に滑ります。すれ違った登山者の中には、実際に滑ってしまった人もいました。滑ると分かっていながら、やっぱり滑ってしまいます。
ショウジョウバカマ
本来は春に咲くタツナミソウが返り咲きしていました。
標高924mある開聞岳の山頂に到着しました。ここで昼食にします。
眼下には未確認生命体であるイッシーで有名な池田湖です。と言っても、私はイッシーが話題になった頃の世代ではないので、初耳でした。UMAが騒がれていた平成は遠い昔です。ミステリーサークルとか流行っていましたね。残念ながら、靄で桜島が見えませんでした。
角度によってはスヌーピーが横たわっているように見えるというスヌーピー山が見えました。長時間滞在したら、下山を開始します。
山頂の側にある御嶽神社に立ち寄りました。これから向かう枚聞神社の奥宮になります。枚聞神社には開聞岳を神体とする山岳信仰があり、開聞岳は実は神聖な山だったということでしょうか。下山は、登ってきた道をそのまま下るだけです。あっという間に下山完了しました。
開聞岳ではツチトリモチに出会いました。鹿児島県では、比較的あちこちの山でツチトリモチを見かけることができます。ただ、県外になると自生している県、場所が限られます。日本固有種で、西日本でしか見つかっていない寄生植物です。
枯葉が多い時期に、真っ赤な姿はとても目立つので、苦労せず見つけることができます。見れて良かった植物です。
葉が細長いラン科ツレサギソウ属です。
シュスラン
無事に下山できたことを感謝して、枚聞神社を後にします。
帰りの電車が来るまでまだ時間があったので、少し散策します。
田の神様たのかんさぁを見学しました。鹿児島県には田の神像があちこちに存在するようです。鹿児島県から宮崎県の風習らしく、また1つ鹿児島を知れたように思います。ものによっては有形民俗文化財に指定されている田の神像もあるようです。
開聞駅から電車に乗ります。後で気が付いたんですが、ここから歩いて行ける東開聞駅で乗った方が電車賃が安かったです。時間が余っていたので、そっちまで歩けば良かったです。
電車は西大山駅で2分ほど一時停車しました。どうやらJR最南端駅かつ幸せを届ける黄色いポストが存在し、開聞岳の撮影スポットなので、乗客に撮影時間を設けていました。
指宿駅に戻ったら昨晩泊まった宿に立ち寄ります。実は、荷物の一部を預かってもらっていました。そのまま砂むし会館砂楽に行き、砂風呂を体験しました。
指宿と言ったら砂風呂です。感想は、砂が冷たかったです。一応背中は温かいですが、家庭のお風呂の方が温度が高いです。デトックス効果はあると思いますが、汗で毒素を排出し、それが砂に染み付いて、次に利用する人の身体に染み込むものでした。利用客が多ければ多いほど、毒素の肥溜めだと思います。岩盤浴が不衛生でブームが早急に廃れた過去がありますが、砂は洗い流せず、殺菌できる温度でもないため、長居しないのが吉です。
スタッフのサービス面や、利用者数を考えると絶対に「山川砂むし温泉・砂湯里」の方に行くべきですが、臨時休業していて計画を断念しました。
温泉に入りなおしたら、指宿駅へ向かいます。再度電車に乗って南鹿児島駅で下車しました。路面電車に乗り換えて宿に行きました。
口コミの件数が多く、手頃なお値段だった高見馬場食堂(まいどおおきに食堂)で夕食にしました。安いけれど、味噌汁は味噌の味よりも化学調味料の味が勝っていました。食べ応えあり、懐に優しく、庶民の味方という印象です。
夕飯を食べ終わったら、スーパーで安いご当地お菓子を買って夜食にします。「かるかん」が美味でしたが、明石屋のかるかんと比べると、スーパーで売っているのはフワフワ感が劣っています。食感だけで語るなら、「あくまき」のぷにぷに感に勝るものはなしです。スーパーマーケット「タイヨー」は他よりも安かったり、商品が充実しており、助かりました。
ここからは番外編です。開聞岳へは県外からの訪問なのですが、何日間か鹿児島に滞在していました。数日間の旅で見つけた植物を紹介します。まずはヤッコソウです。開聞岳に自生していれば良いのですが、自生している記録が現時点では、ないと思います。ヤッコソウのためだけにヤッコソウの自生地を訪れました。
どこからどう見ても、「乳首」のような植物です。あまり群生している場所ではなかったのが、少し心残りですが、今回一番見たかった植物だけに十分満足&感謝です。
キリシマシャクジョウです。名前に霧島があるように、鹿児島県では霧島市に自生していることで知られています。ちょうど綺麗に開花している個体を見つけられました。ヤッコソウやツチトリモチのような寄生植物に負けないくらいキリシマシャクジョウのような腐生植物が好きなので、出会えて良かったです。個人的にはまだ出会えていないシロシャクジョウやルリシャクジョウを見てみたいです。
タネガシマムヨウランもしくはトサノクロムヨウランでしょうか。検索してみても、その場所でムヨウラン系を見つけたような記録がヒットしなかったです。こちらも腐生植物なので、とても気になります。