赤岳天望荘に宿泊しており、今日は八ヶ岳最高峰の赤岳の山頂を目指します。日の出の時間に合わせて起床したのですが、外はガスっていました。雨雲レーダーをチェックすると、午前8時頃から晴れそうな気がするので、遅めの出発にします。朝食は一番遅い時間に案内されているので、再度寝ました。

今日の予定は赤岳を登頂してから、中岳を登り、文三郎尾根で下山します。そして赤岳鉱泉から北沢コースを通って美濃戸口に下山します。

朝食はバイキングではありませんでした。油がのって柔らかいサバの味噌煮が、絶品でした。余計なゴミが出ないように骨なしです。ウインナーや卵焼きなど、眠たい朝でも食べやすい内容で、どれも美味しかったです。

食事を食べる頃には外の景色を隠していたガスが消えていき、次第に晴れていきました。朝食を食べたら、ザックを背負って山小屋を出発します。赤岳天望荘は今年改装をするらしく、今見ている山小屋の姿は見納めになるのでしょうか。建築の関係者が宿泊しており、昨晩の八ヶ岳開山前夜祭を盛り上げるために、大きな野次を飛ばしていたのが印象的でした。

赤岳山頂までは、四つん這いになりながら急騰を進みます。ヘルメット着用が推奨ですが、持参していません。八ヶ岳開山祭が開催されていたら、小さな石が幾つも転がりながらの渋滞だったかもしれません。けれど寂れたシャッター通りのように登山者は、ほぼほぼいませんでした。

落石を発生させることなく、登り切りました。赤岳頂上山荘は7月から10月までの営業予定で、現在は休業しています。

これから向かう中岳や阿弥陀岳が見えます。

本当は中岳のコルにザックをデポして、阿弥陀岳を登頂し、中岳のコルから中岳道を通って行者小屋へ下山する予定でした。そして時間があれば北沢を、時間がなければ南沢を使って美濃戸口へ下山しようと思っていました。同じ宿に宿泊した登山者グループから、中岳道は雪渓が残っていて通れないと意見をもらったので、文三郎尾根で下山することになります。その人達は、文三郎尾根分岐にザックをデポして、阿弥陀岳まで往復するようです。軽アイゼンを持ってきていましたが、その言葉に迷いました。後で考えると、昨晩の雨によって融雪が進み、アイゼン不要で中岳道を通過できたように思います。経験不足と情報収集不足でした。

標高2,899mある赤岳の山頂に到着しました。なんだか唇がカサカサ乾燥しています。山小屋に宿泊する度に、唇の乾燥がひどくなるのですが、疑問に思ってから数年経過して理由が分かりました。原因は唇の日焼けでした。確かに、唇も肌の一部ですね。肌と違ってヒリヒリや真っ赤にならないので、気が付きませんでした。

竜頭峰分岐へ下っていきます。

鎖が設置してあるので、見た目以上に歩きやすいです。高所の岩場は普段歩くことができないので、楽しくなってきます。よく歩いている丹沢山塊は花を求めに歩く分には魅力的なのですが、山歩きとしては、物足りないものがあります。深い山ですが、荒々しさがありません。

権現岳と編笠山の後ろに左から北岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳が見えました。6月末にはキタダケソウが北岳に咲く時期ですが、今年は違う花を見る予定です。

文三郎尾根分岐の近くにザックをデポして、目の前にそびえ立つ中岳を目指します。阿弥陀岳は登らなくても、中岳は諦められません。こっちの方角から見る赤岳は迫力があるのです。

富士山が見えました。関西人と関東人で、富士山が見えた時の反応の大きさが異なるように思います。静岡や山梨県民はどんな反応なのか気になるところです。

標高2,700mある中岳の山頂に到着しました。中岳と名付けられた山頂は日本には山ほど存在します。メインの山と山の間にある、サブの山の印象です。適当に付けられたような名前もちょっと寂しい。

そこから見る赤岳です。文三郎尾根分岐まで戻ります。

コマクサの花は後1か月後くらいでしょうか。ピンク色の花はなく、葉だけは姿を見せています。硫黄岳から横岳の間には群生地があり、そこに珍しい白花のコマクサが自生しています。実際はクリーム色の花です。

キバナシャクナゲは中岳周辺で開花していました。横岳や文三郎尾根など、群生地は沢山あります。

キバナシャクナゲの白花でしょうか。他の花はどれもクリームやレモン色なのに、この個体だけ真っ白でした。

文三郎尾根分岐まで戻ると、長野県警のヘリが偵察しに飛んで来ていました。つい先日、横岳から地蔵の頭への稜線で滑落死があったばかりです。ザレて滑りやすい場所も多いので気を引き締めて行きます。

文三郎尾根を下っていきます。階段地獄ですが、多数の鎖が設置されており、よく整備されていました。

山と自分の目線が同じ高さだったのに、だんだんと山を見上げるようになってきます。標高を急激に下げているので、あっという間に樹林帯へ突入してしまいます。

マムート(MAMMUT)のマークが入った木道です。これは登山用品のブランドである会社マムートが登山道整備に協賛して、階段を提供しているからです。文三郎尾根だけでなく、行者小屋と赤岳鉱泉を結ぶ登山道でも見かけました。

日が当たらない場所はまだ雪が残っています。

瞬間移動したかのように行者小屋まで来てしまいました。帰りの毎日あるぺん号のバスは、出発時間が午後3時40分です。時間があるので、赤岳鉱泉まで足を延ばし、北沢コースで美濃戸口へ帰ります。ちなみに美濃戸口から茅野駅までのアルピコ交通のバスの最終時刻は午後2時45分です。

赤岳鉱泉に到着しました。アイスキャンディの大半は融けていました。

人通りの少ない北沢コースでは、鹿に遭遇しました。奈良の鹿でもないのに、同行者にお辞儀をしていました。エサをねだるわけでも、攻撃する様子もなく、お辞儀の理由が不明でした。

茶色く染まった河川と苔は南沢にはありませんでした。チャツボミゴケ公園を思い出します。一時流行って、ツアーに組み込まれていましたが、現在は下火でしょうか。

ボッカさんとすれ違いました。八ヶ岳にもいるんですね。靴を見ると、長靴だったので、長靴の万能さを再認識です。丹沢のボッカさんや、長年登り続けている玄人は登山靴よりも長靴を愛用していたりします。尾瀬のボッカさんは、長靴を履いている姿を見かけることが少ないです。

シロバナノヘビイチゴは沢山見かけました。チョウノスケソウかと思ったら、花弁の数が違いました。チョウノスケソウは八ヶ岳の稜線で見かける存在です。八ヶ岳ではチングルマは自生せず、代わりにチョウノスケソウが咲きます。

コミヤマカタバミです。

おとぎ話に出てくるかのような美しい森です。

コイワカガミは開花秒読みです。

緑色の花は目立たないけれど、確かにそこで咲いていました。レンプクソウです。

北沢と南沢の合流地点である美濃戸に到着し、そこからは林道歩きになります。カモメランが咲いていました。三ッ峠山では今が見頃です。

ミヤマエンレイソウです。林道は前にも後ろにも人がいません。夏になると大量のアブに追いかけられる場所ですが、今はその心配も要りませんでした。

イカリソウです。2日目の行程は標準タイム5時間15分、累積標高は登り400m、下り1700m程でした。

ベニバナイチヤクソウは咲き始めており、花茎の上部はまだ蕾でした。

今回の登山では、残念ながら阿弥陀岳への登頂は叶いませんでしたが、見たいと思っていた植物は全て見ることができました。また前夜祭で景品も手に入れられ、良かったです。豪華賞品は当たりませんでしたが、日光で極端に色あせた山小屋Tシャツや、モンベルの医療用割烹着よりも良い商品だと思います。星空や日の出は別の機会にとっておきます。

美濃戸口に到着したら、帰りのバスが来るまで八ヶ岳山荘で昼食とお風呂です。赤岳天望荘でもらった無料の入浴券とコーヒー券を使いました。バターチキンカレーは、具がほとんどありませんでしたが、辛さとコクがクセになります。

コーヒーは車一台の値段がする焙煎機を使っています。ただ、お客は隣の宿泊施設J&Nに奪われているように思います。空いている八ヶ岳山荘に対し、混雑しているJ&Nは料理がおしゃれで、かつお風呂が綺麗な印象なので、コーヒーで巻き返しなるかどうかです。

帰りのバスは乗車率が半分以下の10人でした。おかげで、前後の座席に人は座っておらず、フルリクライニングが可能でした。

最後におまけです。今回の登山では、ツクモグサやホテイランの他に、探していた山野草がありました。それがイチヨウランです。無事に出会うことができました。