高尾山のケーブルカー

高尾山や小仏城山をあちらこちら歩き回って植物と出会う登山をします。今回の目的の花はスズムシソウと、現地ではミドリエビネと呼ばれる緑色のエビネを観に行きます。他にもクマガイソウやヤマシャクヤクがまだ咲いていることを期待して、そちらの個体がある場所も訪れます。

ゴールデンウィーク中の高尾山は、どの登山道も山頂も大渋滞で、追い抜きができないすし詰め状態とニュースにありました。今日は天気が曇り、軽い雨が降りそうな予報だったため、ゴールデンウィーク終わりの土曜日でもガラガラでした。実は、今日も大渋滞なのではないかと危惧しており、行くのに二の足を踏む気持ちが少しありました。

まずは、ケーブルカーに乗車します。今まで何度か高尾山に来ていますが、乗車するのは始めてです。山手線のように絶えず出発しなかったり、ぎゅうぎゅう詰めだったり、乗車に1時間待ちだったりと、乗車機会を逃していました。

高尾山の山頂

高尾山の山頂に到着しました。こんなに人がいない頂上は経験したことありません。基本的に、登頂記念写真の撮影待ちの列ができている印象です。今回、食事は適宜摂取している形です。今日は富士山が見えないですが、陽射しがないため、撮影日和です。ミドリエビネの唇弁やヤマシャクヤクの花弁は白いので、陽射しがない方が綺麗に写真を撮影できます。

小仏城山の山頂

色々歩きながら、小仏城山に到着しました。ここもガラガラです。茶屋は、かろうじてドリンクのみの販売だけしていました。土日にほぼ休業状態なのは珍しい光景です。平日休業、土日営業の印象しかありません。

オオバウマノスズクサ

今回の登山で出会った植物を紹介していきます。まずはオオバウマノスズクサです。ウマノスズクサ科は筒状の花を持っており、個性的です。こちらはツタンカーメンのお面みたいでした。

果実が弾けて中の種子を出した後の姿もありました。良く見てみると、種子がまだ残っています。

タマノカンアオイ

タマノカンアオイです。高尾山が分布の西限なので、地域限定植物です。地域限定のキーホルダーとか、お土産を買いあさってしまうタイプの人は、注意です。カンアオイ属は地域限定の変種や節が多かった印象です。ちなみに緑色の花を持つミドリウスバサイシンがカンアオイ属の中で一番気になる存在です。

フタバアオイ

フタバアオイは開花して暫く日数が経過していましたが、まだまだ綺麗な状態でした。

題名「乳首」

エビネの群生

ちょうど咲き始めたエビネの群生です。今年は開花が遅れ気味だとか。古葉がこんなに綺麗な状態で残っているのは、鹿などの食害が少ないからでしょうか。エビネとキエビネの自然交雑種であるタカネエビネとか自然界で観てみたいです。タカネエビネ同士を交配させたF2世代はどんな姿をしているのでしょうか。

エビネの数の暴力は半端ないっす。顔圧、強すぎっす。そういえば、最近まで箱根湿性花園でサルメンエビネが見頃だったよう。気づくの遅れました。モンキー・オーキッドは洋ラン・和ランどちらも魅力的です。

ミドリエビネ

運命のミドリエビネに出会えました。花弁と萼片は汚れのない真緑色で、唇弁は純白です。それはまるで淡いティーン時代に初めて飲んだメロンソーダのよう。今は炭酸ジュースで三段腹が肥える日々。何だか、言葉選びに加齢臭を感じるこの頃です。いつか、昭和感満載の喫茶店でクリームソーダを飲んでみたい願望があります。

ミドリエビネの花

何が言いたいのか分からなくなりましたが、ミドリエビネが綺麗でした。

こちらは、巷でキエビネと呼ばれている唇弁が黄色いエビネです。本物のキエビネは関東には植栽しか存在しません。ミドリエビネと共に愛称(通称)です。ムラサキムヨウランなど、色が名前の先頭に付くことが多いようです。

こちらは、来週開花の模様です。この子の花色は淡いピンクなんだとか。そういえば、丹沢で見たいジエビネが今日見頃になっています。花弁と萼片が緑色で若干茶色が混じっています。去年は綺麗に撮影できなかったのですが、う~ん残念。来年会えたら良いね。

茶色と緑色が混ざった個体です。グラデーションカラーもまた味わいありですね。

クマガイソウ

クマガイソウは9割以上咲き終えていましたが、何とか咲いている個体に出会えました。昔の高尾山にはクマガイソウだけでなくアツモリソウなど希少なラン科植物が普通に存在したのだとか。盗掘の結果、姿を消した過去があるようです。自生なのか、保護活動による植栽なのか、個人的趣味による植栽なのか、もうよく分からない山が高尾山。

今日歩いただけで、盗掘の跡を見学したり、開花前の花茎を大量に切り取られた植物を見たり、カオスではあります。切り裂きジャックだか、クロックタワーのシザーマンは実在するんですね。

豊かな自然は今も確かに、高尾山にはあります。

スズムシソウ

スズムシソウに出会えました。去年訪れた時は終盤だったので、見頃に来れました。クモキリソウ属は、花っぽくなく、昆虫のような見た目が趣あります。

スズムシソウの花

羽のように見える唇弁の模様が良いですね。半透明の羽に血管のように浮かび上がる葉脈が、心躍らせます。この個体は実は植栽なのでは?という声もあります。なぜここに?って思う気持ちは何となく分かります。園芸店で現在1株550円で売られているので、それを個人的趣向のために高尾山に植えてしまう人がいても、おかしくはなさそう。高尾山周辺に住む人なら、高尾山を庭代わりにする可能性もありそうです。

ツレサギソウの蕾

ツレサギソウ属を代表するツレサギソウです。開花が楽しみです。

ヤマシャクヤク

ヤマシャクヤクが何とか咲いていました。開花4日目の個体とのことで、落花せずに花がよく持ちこたえてくれました。高尾山は低山でもヤマビルがいないのが良いですね。足元を気にせずに植物観察ができます。

ベニバナヤマシャクヤクの蕾

ベニバナヤマシャクヤクの蕾です。蕾が紅色なのが分かります。

ピンク色のジュウニヒトエがいました。モモイロジュウニヒトエ(セイヨウジュウニヒトエ)なのかと思ったら、葉の形が違っていました。ピンク色は初見です。花が両目を光らせた宇宙人に見えます。

花弁の先端が紫褐色になっているジンバホウチャクソウです。陣馬山で発見された品種違いの花で、よく見かけるホウチャクソウと異なっていました。品種違いの存在を知らなかったですし、見た目で品種違いの可能性を気が付くのは、無理です。

サツキヒナノウスツボは可愛いですね。何かしらの海中生物に似ています。丸っこいフォルムは憎めないです。

クロアゲハが羽を休めていました。黒いアゲハチョウは色んな種類がありますが、短い尾状突起が特徴です。触ると鱗粉が手にくっついたり、飛んでいる蝶に近寄ると鱗粉を鼻から吸引しそうな印象や偏見がありました。実際は、鱗粉はすぐはがれ落ちてしまうものではなく、雨で翅が濡れるのを防いだり、上手に飛ぶために必要なものだと知りました。

ハナイカダの花をよく観察するのは、初めてです。葉の表面に花を咲かせるのは、珍しいですね。花粉を運んでもらう蟻などに足場として葉を利用してもらうために、葉の上に花がつくようになったんだとか。

日本固有種のコミヤマスミレは高尾山一番遅い時期に咲くスミレです。同じ時期に咲くツボスミレと初見は混同しました。見比べてみると、花茎の色が異なり、唇弁の先端が細くなること、葉の表面に毛があることが分かりやすい違いでした。

ツボスミレ(ニョイスミレ)の唇弁の先端がくぼんでいました。個体差が大きいようで、ほぼくぼみがない個体もいるようです。今年はスミレの観察をするようになり、まだまだ見分けが全くできませんが、15種類見ることができました。

日本固有種のタチガシワは、箱根湿生花園でフナバラソウを見てから、興味があった植物です。

地面からもタチガシワの花が咲いていました。無理してる感じがするのは、気のせいでしょうか。

コチャルメルソウの結実した姿です。これも含めたチャルメルソウ属の多くが日本固有種ですが、互いを識別して同定するのはまた難しそう。

椀状の蒴果の中に種子がまだ残っている個体がいました。

ツリバナの淡い色の花です。真っ赤な実を見たら同一の落葉低木だとは思わないかもしれないです。

オウギカズラです。

ホタルカズラです。カズラ(葛)の名前が付く植物は大抵、栄養繁殖のために走出枝が伸びる植物です。オウギカズラも同様です。科属は関係なく、見た目で名前が決まったようです。ツルネコノメソウも走出枝が伸びるので、ネコノメカズラと名前が付いていたパラレルワールドがあったかもしれません。

ワニグチソウはまだ蕾でした。2枚の苞葉が特徴です。タカオワニグチソウと呼ばれるワニグチソウとミヤマナルコユリの自然交雑種が高尾山には存在します。こちらは苞葉が3枚です。包葉の内側に花が2個つくのはワニグチソウと同様ですが、花は細長くミヤマナルコユリに似ています。ミヤマナルコユリには包葉はありません。ワニグチソウが咲く頃に来れば、存在に気が付けるかもしれません。

ヒトツボクロもこれからです。

サイハイランは平地では既に開花しているようですが、高尾山ではまだです。

里山や緑地のキンランはほぼ終了ですが、こちらはこれからでしょうか。無事に下山して帰宅しました。今日は、スズムシソウを見るのに最適な日だったようで、多くの観察者が訪れていました。花茎の上部はまだ蕾でしたが、上部が咲く頃には下の花が落ちてしまうので、今がベストなのだと思いました。

日程表