山北駅にある桜と電車の景色

今回登山する場所は山北町にある鳥手山です。矢倉岳の側にありますが、登山道が十分整備されておらず道が不明瞭であり、迷いやすいコースです。コガネネコノメソウを探しに行きます。そして洒水の滝を訪れます。この滝は3つの滝の総称であり、一番有名なのは一の滝です。今回は一の滝と三の滝を観光します。一の滝は観光地として道が整備されていますが、二の滝と三の滝の道は崩落していたり、荒れ果てています。

まずは山北駅からバスを使わずに洒水の滝の方へ歩きます。今回はGPSを使って歩いています。GPSを見なかったために道を外れていたり、踏み跡が多いルートが崩落により通行不可で引き戻ったりしています。迷子要素があるため、コースタイムや歩いた軌跡は参考にならない登山でした。

まずは洒水の滝(三の滝)を目指します。鳥手山や近野山を登ってから洒水の滝(一の滝)へ向かう行程になりました。今回の目的であるコガネネコノメソウは、どこに存在するのかは何となく検討がついていました。なので、どこをどういう順番で歩こうかは、完全な気分です。

丹沢でも箱根でもない、この山北の山域で一番有名で近い山頂は矢倉岳です。ここも絡めて登山するのも良いかもしれませんが、登山開始が遅い時間なので、歩いたとしても鳥手山の先にある鷹落場までだと思っていました。

荒廃した登山道

三の滝への道は、昔は整備されたハイキングコースだったと推測します。しかし、今は地図にも載らないような廃道でした。片側は崖で、道は細く、崖側へ斜めっているため、注意が必要な場所が多かったです。

二の滝は一の滝へ向かう遊歩道の最初の分岐点を左に進むと行けるようですが、崖登りが待っているようなので、技量も装備もありません。上段と下段に分かれている滝なので、見てみたかったです。以前、忍野八海に行った時は、杓子山への登山時間の都合により、忍野七海しか観光することができませんでした。何事も制覇・収集したい欲はあります。

土砂によって自然のアスレチックになっています。高尾山だと、歩いて良い場所が明確に決まっていることが多いように思います。けれどここの山域はどこでも自由に歩けます。その分、道が分かりにくいです。道標はありませんでした。辛うじて誰かが枝に巻き付けたビニールテープが目印ですが、目印がない区間があります。またテープを信じて良いのかの自己責任もあります。

丹沢の大山や不動尻ではヤマビルの出現情報が既に多発していますが、今日はヒルを見かけませんでした。観光地の一の滝を除いて、今日の登山道では他の人に出会っていません。

階段があります。ちゃんと整備されていると思いきや、過去の産物です。更に下ると階段も崩落気味になっています。今回は四つん這いになって、両手足を使い、這うように急斜面を登ることはありませんでした。

チェーンスパイクやロープがあると行動範囲が広がりますが、そこまでのバリエーション歩きは、まだお預けです。まずは歩いたことのない一般登山道を歩くのが優先です。ですが、貴重な花を求めに、地図にない林道やバリルートを歩いてしまうこともありましたが、気楽に歩けないと気楽に楽しめなかったです。ストックはいつも持参しています。滑る急斜面で歩けない場所でも、ストックを地面に突き刺して、そこに足を置いて歩く小技を自然と覚えました。

三の滝までは目と鼻の先まで到着しました。今日は水量が少ないため靴を水没させずに通行できます。倒木が多く、跨いだりくぐったりしました。ストックを使いませんでしたが、あった方が安全です。

洒水の滝の上流にある三の滝

落差29mある洒水の滝(三の滝)です。汗ばむ陽気ですが、滝の周囲はマイナスイオンと共に気温が低く、水浴びしたくなります。二の滝へのルートは、ここより難易度が高いらしいので、沢屋でない私には難しいかもしれません。

カントウミヤマカタバミの花

周辺にはカントウミヤマカタバミが咲いていました。その基本種であるミヤマカタバミとの違いを知るには葉の裏面の毛の量が見分け方の1つのようです。世の中には中間型も存在し、分からんちんです。

イワタバコの葉

イワタバコの葉もあります。ここら辺で群生を見るなら、山なら西丹沢、町なら鎌倉のお寺でしょうか。苦味のある葉っぱは天ぷらやお浸しにして食べる人もいるようです。私にとっては遭難した時の非常食ですかね。

タニギキョウ

タニギキョウは数多くありました。キキョウ科タニギキョウ属の植物は、この1種のみしか存在しないようです。1属1種の植物は、遺伝的に珍植物なのかもしれません。個人的に、1科1属1種のみしか存在しない植物セファロタスは栽培に手を付ける程、病み付きになりました。

今度は鳥手山を目指します。山頂には展望が特にないのは知ってて向かいます。普通は、矢倉沢バス停から矢倉岳へ登り、鳥手山を通って山北駅へ下山する時しか通らなそうなマイナーな山です。ダイエット登山も兼ねて今日は歩いてます。

プレハブ小屋がある林道終点まで到着しました。所々にネコノメソウ属やキケマン属の植物を見かけました。ここからが登山地図では破線コースになっています。

十字路になっているのですが、最初に地図では破線で表示されている右コース(北斜面)を進みました。道が崩落しており、そのままでは通行できなくなっていました。山の斜面沿いの道なので、なんとかここを通過できても、この先通行できる保証は分かりませんでした。

分岐まで戻り、破線にもなっていない真ん中の道(近野山山頂踏破コース)を進むことにしました。ちなみに左の道に進むと洒水の滝の上流部に行け、残る道は山北駅へ続いています。

斜面を登っていくと、分岐がありました。しかし私の目には左の道しか見えず、道のど真ん中に木の枝が数本刺さっており、それに目がいってしまいました。誰がイタズラをしたのかと考えていたのですが、実はこの先道迷いのため、右へ行くべしの意味合いでした。そんなことを知らずに、左へ歩きました。

途中でGPSを確認すると、本来通る予定だった近野山の山頂は通過せず、巻き道を歩いていました。初めて歩く道だったので、徐々に山頂コースへ合流するように進みました。合流してから気が付いたのは、無理やり合流せずとも、自然と合流できたように思います。道迷いのリスクがある時は、常に稜線を目指すのが遭難のリスクを減らすという思考回路がありました。

風でミシミシ音を立てる木々が多く、他の木に寄り掛かることで、倒木を免れている木もありました。踏み跡がなく、どこでも歩けてしまう場所です。

壊れた柵沿いに歩いていたのですが、この場所で柵を越えて方向転換します。他の人の軌跡を調べてみると、このまま柵沿いにある程度進んでしまってから、道が間違っていることに気が付く人が一定数いるようでした。私は読図ができないので、GPSがなかったら歩けない場所だと感じました。登山テープも道案内も何もない場所です。「ご自由にお好きにお歩きください。」と言われているようでした。

右コース(北斜面)との合流地点に到着しました。看板から右へ進むと今歩いてきた近野山山頂コースです。分岐の案内看板はありません。トリカブトが多く生息していました。

ここから鳥手山までは、比較的分かりやすくなります。ビニールテープを目印に、進んで行きます。

ヒナスミレ

ヒナスミレです。シハイスミレやマキノスミレなど似ているスミレが存在しますが、柱頭の色が黄緑色で周辺に毛があるので、ヒナスミレのように思います。唇弁の先端が二又になっているのは、奇形なのでしょうか。虫にかじられたような切れ目ではないように思います。蛇舌(スプリットタン)だと認識しました。

スミレの奇形を調べてみると、花弁や距の数が2倍ある多重花や、萼片の巨大化する事例がありました。

マルバスミレ

カマキリの頭のような柱頭を持っているマルバスミレです。

鳥手山

標高665mある鳥手山の山頂に到着しました。近野山の山頂を踏破しながら洒水の滝(一の滝)を目指します。

近野山

標高595mある近野山を通過します。山頂看板はなかったので、小さな祠が山頂の目印です。

洒水の滝の下流にある一の滝

落差69mある一の滝に到着しました。洒水の滝と言ったら、通常ここのことを意味します。226段ある階段の先には展望台(観瀑台)があり、滝の落下地点を見ることが可能になっています。2004年の連続した落石事故で滝を間近で見る方法がなくなりました。県と町の予算3億5千万円を使って、この展望台を設置したみたいですが、無料の観光地なので採算が合わないです。税金ならではのお金の使われ方でした。

洒水の滝(一の滝)での観光客の滞在時間は1時間未満でしょうか。洒水の滝祭りの時は、混み合うのかも知れません。赤い橋から先は落石事故がきっかけで立入禁止となっています。滝行もできたようですが、立入禁止の影響か、滝行は夕日の滝でするのが一般的なようです。

ネコノメソウ属の植物が沢山存在しています。ハナネコノメは見かけませんでした。

コガネネコノメソウの花

今回のお目当てであるコガネネコノメソウです。神奈川県では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。3月末には既に開花しており、1週間以上経過しているため、終盤でした。日が経つと、黄色い萼片が緑色になってしまうのだと知りました。日差しがあると緑と黄色の識別が写真では分かりにくいので、曇天の日か、朝早くか夕方に撮影すると良いように思います。

コガネネコノメソウの全体像

葉は対生し、雄しべは8個、雌しべは2個です。

雌しべが触覚のようになって、ゲームのスペースインベーダーに搭乗する宇宙人(標的)のような見た目でした。

洒水の滝の観光が終わったら、山北駅へ行き、電車に乗って帰宅しました。

クマガイソウの葉

こちらは道の途中で見つけたクマガイソウです。山北町では盗掘によって、ほぼほぼ全滅したと言われています。去年、ここら辺にあったクマガイソウは3株開花していましたが、これらの個体は未開花だったので、今年は咲いてくれるような気がします。

日程表