春になり、高尾山では多くのスミレが咲き誇っています。私のような素人にとって、どの花がどの種だか分類するのが難しいのがスミレです。今回出会ったスミレを含む春の植物を、写真と共に紹介します。東京都では絶滅危惧IA類に指定されたヒメフタバランが開花したので、そちらも観察しに行きます。絶滅危惧IA類とは野生での絶滅の危険性が極めて高い植物に指定されます。

今日の登山コースは高尾山口駅から開始し、高尾山の山頂へ登り、高尾山駅へ下山します。便宜上、2週間前に訪れた別コースで撮った写真も載せています。あちらこちら歩いており、植物の紹介は時系列ではなく、植物の属ごとにまとめていたりします。一部高尾山周辺で撮影した植物もあります。

今回は私よりも圧倒的に、山野草に詳しい花友さんと一緒に歩かせてもらいました。

タチツボスミレ

タチツボスミレは高尾山でよく出会うスミレの1つです。花の柱頭が真っすぐ伸びて、シャーペンの先端みたいになっているのが特徴です。距と花弁が紫色です。毛があったり、色の違い、葉に斑があったりするだけで、違う名前になるスミレです。タチツボスミレ類を正確に分類することなど素人の私には無理難題です。スミレの沼が深いのだけは理解しました。

最近知ったのですが、高尾山は地域分類が詳細にされているようで、場所によって裏高尾や奥高尾、北高尾などと呼ばれるそうです。私は1~6号路、稲荷山、蛇滝、日影沢、南高尾(セブンサミッツ)、小仏城山、景信山、陣馬山くらいの認識でした。小仏城山の方面を裏高尾と呼ぶなんて知らなかったです。山屋と花屋で呼称が違うのか、地元民と他県民で呼称が違うのか気になります。

エイザンスミレ

エイザンスミレは葉の切れ込みが大きな特徴です。同様に切れ込みがあるのは他にヒゴスミレくらいのようですが、幅広の葉はエイザンスミレを決定づける特徴のようです。同定が簡単で、分かりやすいスミレのように思いました。マルバスミレと同様に柱頭の先端がカマキリの頭のように見えます。

登山道では、観光客がひっきりなしに流れ続けています。花の山である高尾山に、花が目当てで来る人はとても僅かな気がします。私にとって高尾山は、花がなかったら幾度も再訪することは、ないと思います。それくらい花が素晴らしい山ですが、人の趣向はそれぞれです。

日本固有種で、比叡山で発見されたのが名前の由来です。ピンク色の花だけでなく、白花のエイザンスミレも存在していました。白花はシロバナエゾスミレという品種で、蝦夷スミレだからといって北海道のスミレという意味合いではないようです。

ナガバノスミレサイシン

ナガバノスミレサイシンは葉が長いのが特徴で、他に距が太く短いです。高尾山ではエイザンスミレと同様に分かりやすいスミレでした。日本固有種です。

ヒナスミレ

ピンク色の花が特徴的なヒナスミレです。葉だけを見るとナガバノスミレサイシンと勘違いしそうですが、ピンク色の花は存在しないようなので、花色で区別できました。今後、多くの個体数を観察することで、他の特徴で区別・識別できるようになるのだと思います。

マルバスミレです。柱頭の形がカマキリの頭に似ています。私にとって、それが簡単にアオイスミレと識別できるポイントでした。アオイスミレと比べると、葉の形が似ていますが、マルバスミレの方が先がとがりハート形に近いとネットで説明がありますが、逆ではないかと思える個体もいるように感じ、混乱しました。

こちらはアオイスミレです。柱頭の先端が下に折れ曲がっている特徴が、私にとって分かりやすい識別ポイントでした。ネットの説明では、側弁があまり開かないとありますが、マルバスミレも同様に思える個体がおり、混乱します。アオイスミレの上弁はウサギの耳のように見えるようですが、個体差でマルバスミレなのかよく分からない印象を抱くこともあります。スミレ初心者の私には、その種の特徴がはっきりと出ている個体なら識別できるかもしれませんが、全てが模範みたいな姿をしているとは限らない印象でした。

緑花のタチツボミスミレは、まだ蕾もありませんでした。

ヒメスミレは、葉がナガバノスミレサイシンに似ていますが、先端にいくほど縁の切れ込みの感覚が大きく感じました。また全体的にヒメスミレの方が小柄です。また濃紫色の花はヒメスミレの特徴であり、ナガバノスミレサイシンの花は色が薄いことが多いです。次に紹介するノジスミレに似ていますが、花弁の幅が異なり、ヒメスミレの花弁は細長いです。

ノジスミレは、葉がナガバノスミレサイシンに似ていますが、ノジスミレの方が小柄です。白花のシロノジスミレが存在します。

アリアケスミレは根出葉だけを出すため、葉の見た目がロゼット葉のような、放射状の印象を持ちました。白っぽい花が特徴です。

タカオスミレ

タカオスミレ(高尾菫)は、簡単に識別できました。緑色の葉がこげ茶色に変色したような見た目です。高尾山に来て、タカオスミレがどれか分からずに下山したり、見過ごして、出逢えずに終わってしまうことはなさそうです。

高尾山にしか存在しないのかと思ったら、分布域は北海道から九州まで広いようです。

ヒカゲスミレ

ヒカゲスミレは、葉の色以外はタカオスミレと変わらない基本種でした。葉の違いで変種や品種といった違いはあっても、花の変異はなさそうで、ヒカゲスミレの中でも花の色が様々であることはないです。識別がしやすい種に思います。

ヒメフタバラン

ヒメフタバラン(姫二葉蘭)に出逢うことができました。私はスミレよりも圧倒的にランに興味があるので、今日一番の目的はこのラン科植物です。高尾山で一番最初に咲くラン科植物は、シュンランです。2番目がこの植物です。逆Y字の形になっている部分が唇弁です。花の見た目がどこか民族のお面に見えました。

後日談として、この個体は高尾山のレンジャーによって盗掘防止タグが設置された後、誰かに掘り起こされて持っていかれていました。4月中にヒメフタバランが盗掘された投稿を何らかのSNSで流し見したのですが、まさかここのことだとは思っていませんでした。庭先で山野草を鑑賞するより、自生地で鑑賞する方が、背景の雰囲気込みでその植物を堪能できるのにと思います。今はオンラインショッピングで山野草が格安で買える時代ですね。山野草専門店でムカデランが1本80円から売られていたり、手頃です。

ヒメフタバランの蕾です。全体が小さく、地味な花のため目立たず、踏んでしまいそうです。葉っぱだけの個体もいました。ヒメフタバランの存在を知らないと、認識できないと思います。

シュンラン

シュンランは沢山咲いていました。高尾山は、こんなに数が多いのかと驚く程です。

ヒトツボクロ

ヒトツボクロは当然咲いていませんが、新規の場所を知ることができました。

カヤラン

カヤランは蕾が見えます。接写レンズで撮影できるポイントを通ったのですが、個体がなくなっていました。身長が低くても撮影しやすい場所で、1年前から楽しみにしていただけに、残念です。

ヨウラクラン

ヨウラクランです。これは2週間前の写真になります。

2週間前のミドリニリンソウの蕾です。

ミドリニリンソウ

今日は、ミドリニリンソウの花が咲いていました。ニリンソウは白い花を咲かせるのですが、花弁に見える白い部分は実は萼片です。その萼片が緑色に先祖返りしたという話を以前聞いたことがあります。幸せを呼ぶそうで、高尾山の他に、上高地でも有名です。

ニリンソウ

ニリンソウです。緑花と同じ種です。

ネコノメソウ

ネコノメソウは2週間前はほぼほぼ開花していませんでしたが、少し開花したようです。開花スピードが圧倒的にゆっくりでした。まだ全盛期ではなかったです。

ヤマネコノメソウは既に終了し、種子ができていました。トライポフォビアの人には耐え難い姿です。

ツルネコノメソウは2週間前の写真になります。葉の切れ込みが大雑把なのが、ぱっと見の見分け方だと思いました。

イワボタンは見頃を終えていました。

ヨゴレネコノメは2週間前の写真になります。イワボタンと同様に見頃を終えています。そう考えると、ネコノメソウはどれだけ開花が遅いのでしょうか。

ハナネコノメは2週間前の写真になります。真っ赤な葯も良いですが、カラフルなジェリービーンズのような個体もまた良いです。

アズマイチゲ

アズマイチゲは2週間前です。今日はもう咲いていませんでした。

カントウミヤマカタバミ

アズマイチゲの代わりに、カントウミヤマカタバミを至る所で見かけましたが、今日は花を開いてくれないようです。

コチャルメルソウ

コチャルメルソウの群生地です。丹沢にも存在しますが、ここまでの群生は高尾山ならではでした。

フタバアオイはまだ開花まで時間がかかりそうです。こちらも丹沢にあるのですが、カンアオイ属の植物は葉の形を認識して、葉をめくって花を見つけるため、葉の形を識別できるまでが長い道のりです。

ちなみに、ランヨウアオイは多摩森林科学園、タマノカンアオイは大戸緑地公園と長池公園、コシノカンアオイとスズカカンアオイは東京薬科大学薬用植物園で見れます。そう言いながら観に行ったことがないので、個人的なメモとしてここに記しておきます。

カントウカンアオイです。カンアオイと言ったら、こちらを連想します。ウマノスズクサ科植物も、将来的には詳しくなりたいこの頃です。そのきっかけは、丹沢でタンザワウマノスズクサに出会ったのがきっかけだと思います。タカオスミレなど、地名が名前に付く植物に興味がわきやすいです。

ヤマエンゴサクは2週間前の写真ですが、今日の方が最盛期でした。山を歩くとムラサキケマンやミヤマキケマンをよく見かけますが、葉っぱの切れ込みが少ないのがヤマエンゴサクだと認識しました。

花色からシロバナヤブケマンのようです。ムラサキケマンと同じで葉っぱの切れ込みが多いです。

アカフキと呼ばれる紫色のフキノトウです。多量に含まれるアントシアニンが色として表れているのですね。SNSで高尾山の花投稿で見かけやすい植物に思います。道端でよく見るのは緑色です。

シロバナフデリンドウです。

ツクバキンモンソウです。オウギカズラの花に似ていると思ったら、同じキランソウ属でした。

エンレイソウです。

ヒメニラは2週間前は分かりませんでしたが、今回は花を見つけられました。ニラの匂いがするそうですが、私は餃子の匂いを連想しました。韓国では一般的な食材です。

マクロレンズじゃないと、撮影できないくらい極小の花です。

ここからは全ては2週間前の写真になります。ハシリドコロです。食べたら、ところかまわず走りまわるくらい苦しみます。

キバナノアマナです。高尾山は基本的に歩きやすい道なので、登山の技量が足りずに植物を見ることができないことはないように思います。比べて、丹沢はそうはいかないのが現状です。

フラサバソウはヨーロッパ原産の外来種です。道端でよく見かけるオオイヌノフグリより小さくて、知らないと素通りしてしまう植物でした。

日程表