西丹沢にある箒沢権現山は山頂からの展望が良く、登山者数が少ない場所です。今回のコースは途中から未整備の道になっています。また途中で本棚と下棚があります。近くを通るなら是非訪れたい豪快な滝で、そこも立ち寄ります。

今の時期はウスギオウレンやミスミソウ、ハナネコノメといった山野草が見頃です。そちらも観に行きます。

まずはバスで西丹沢ビジターセンターへ行きます。乗車したバスはガラガラでした。今週は松田山ハーブガーデンの河津桜と菜の花が見頃で、そちらに多くの登山者が流れ込んでいると思います。次週はミツマタを観に、多くの登山者が西丹沢行のバスに乗ってミツバ岳へ来ると予想しているので、今回乗車したバスは増便してもぎゅうぎゅう詰め確定です。

登山を開始します。こちらはベニシュスランの葉でしょうか。植物探しと箒沢権現山を目指すのが今回の目的です。結論を述べると、予定していた植物は全て見ることができ、充実した日となるはずでした。

そんな気持ちとは裏腹に、ショッキングな画像を途中で掲載しているので、閲覧に注意してください。安らかにお眠りください。そんな画像です。また登山事故の発生で西丹沢ビジターセンターに消防車が3台駆けつけることになります。山の厳しさを痛感する日となりました。

日本固有種のヨゴレネコノメがいました。イワボタンの変種で、開花はまだのようです。苞葉は淡黄色が多いようですが、ここのは苞葉も萼片も暗褐色でした。ヨゴレネコノメソウと紹介されることも多いようですが、正しくはヨゴレネコノメです。ネコノメソウ属は名前の最後に「ソウ」が付く種と、付かない種が混在しています。

ムカゴネコノメソウ

こちらはムカゴネコノメソウです。こちらは「ソウ」が付きます。完全に暗記問題です。環境省によって準絶滅危惧種に指定されていますが、神奈川県では指定されていません。日本固有種です。

ハナネコノメが開花を始めたようです。日本固有種です。ネコノメソウ属の中で、一番花っぽい見た目で、山野草好きに人気があります。比較的至る所で見かけることができ、群生しています。

見頃は一週間後くらいになりそうです。葯は赤色で、その中の花粉は黄色です。しかし葯が黄色い個体が存在し、西丹沢や高尾山など色々な場所で存在しています。また萼片が緑色だったり、個体数が多い分、多様性もあるように思います。

下界では既に開花しているヤマネコノメソウは、山の中ではまだ蕾でした。今回の登山で出会ったネコノメソウ属はこれら4種類でした。日本には少なくとも31種類いるので、全て見るには気が遠くなりそうです。

腐生植物愛好家として、この植物は直ぐに目に留まりました。去年開花したシャクジョウソウです。開花時はギンリョウソウのように背丈が低く色も肌色のため、腐生植物は好きじゃないと、この姿は見過ごしてしまうかもしれません。

種子散布の時期になると背丈を伸ばすのは、アキザキヤツシロランなど複数の腐生植物に共通しています。この見た目のどこが魅力的なのか理解できない人が大多数かもしれませんが、光合成をやめた生態系や、葉緑素に縛られない色や独特な花の見た目が魅力です。

まずは堤防脇に設置された階段を上り、渡渉します。雨季は、川の増水や木橋が流されることもある場所のため、裸足で通行しないといけないこともあります。

ショチクボノ頭(塩地窪沢ノ頭)へ向かう尾根取付きに到着しました。その先にある善六山も山頂からの展望が良いので、機会があれば行ってみたい場所です。

バリエーションルートは進まず、畦ヶ丸まで続く普通の登山道を歩いていきます。石の上を渉る場所があり、増水したら濡れずに進めません。雨の後の登山は、水量が増して滝が一層豪快になるのですが、行くまでが一層大変になるという諸刃の刃です。

幾つもの木橋を通過します。多くの人はここを右へ進むのですが、どうやら左にある谷間へ突き進む登山者がいました。それでは私も、、、と、ここからは実際に歩いた道の一部だけを紹介します。実際は、あっちやらこっちやら、寄り道を沢山しています。

多少の脱線は通常運行です。鎖場を通過します。斜面がザレていると、滑るので本当に嫌いです。

ベンチに到着しました。ここが箒沢権現山分岐になります。今回目指す山頂は、ここから未整備の道を登っていきます。その前に、本棚と下棚へ立ち寄ります。行きのベンチには何も置いてませんでしたが、下山時にここを通過した時、飲みかけのペットボトル「とろけるカフェオレ」が置かれたままでした。一瞬この場合の「とろける」って、どういう意味なのか考えてしまいました。心が和むではなく、固体が液体になる「とろける」を想像してしまったのは脳の老化でしょうか。

下棚

まずは下棚です。滝の落差は約40mあります。下棚と本棚は用がなくても立ち寄ってしまう場所です。だって迫力があります。季節によって色んな顔を持っていて、雪が降った時が一番好きです。

本棚

本棚へ向かいます。こちらの滝は更に落差が大きく、落差約60mあります。どちらの滝も、ストックがないと滝の目の前まで行くのは難しいように思います。

お菓子を食べながら休憩していると、11人の後期高齢者女性のみのグループがやってきました。登山慣れしている人もいれば、渡渉するのに四苦八苦している人もいるようで、どこまで行くのか少し興味を持ちました。個人的には畦ヶ丸まで行って、大滝橋へ下山だと推測してました。

箒沢権現山からの下山した時に再度このグループを見かけるのですが、その時は6人しか隊列を組んでいませんでした。歩行スピードの差で2グループに分割したのかと思いきや、大事故が発生したとは思いもしなかったです。その話はまた後にします。

滝のシャワーを直浴びしたら、そろそろ箒沢権現山へ向かいます。次の写真は閲覧注意です。

滝つぼの直下に残雪が残っていると思ったら、カモシカの死骸(画像のぼかしあり)でした。山に入る度に、今度こそはカモシカに出逢ってみたいと何度も思っていました。初めての出逢いがこんな形とは、想像もしていませんでした。どうやら滑落死のようです。ご冥福をお祈りいたします。

山に入ると色んな動物の死骸を見かけるようになると言いますが、それがありのままの自然であり、自分が無理して滑落しないよう、遭難しないよう、事故らないようにするための戒心の画像にします。人間よりも圧倒的に山に慣れている動物でさえも、命を落とします。

箒沢権現山分岐から箒沢権現山へ向かいます。ここは看板に書いてあるように登山道ではないため、登山者用に整備されていません。けれど比較的歩きやすいです。

一部片側の斜面が切れ落ちていたり、痩せ尾根だったり、泥や砂で滑りやすかったり、分岐で道を間違えやすかったりします。

誰とも出会うことのない静かな登山ですが、踏み跡はあります。

こちらが分岐です。三叉路になっており、左からやって来て、右へ進んだのですが、間違いに気が付きました。右へ道も足跡もあったのですが、実はここは十字路であり、右は偽の道で、真っすぐ上に進むのが正解でした。ちなみに写真を撮影している手前の道は畦ヶ丸に繋がるバリエーションルートになっています。

ここが一番の痩せ尾根ですが、酔っていなければ問題なさそうです。

箒沢権現山分岐から約400m程標高を上げました。ここが最後の急登であり、泥でスリップします。

標高1,138mある箒沢権現山の山頂に到着しました。手書きの標識ですが、何もないより良いですね。

複数のベンチがあり、休憩します。未踏だった丹沢の1座を踏むことができました。ここから西丹沢ビジターセンターへ進んでいきます。本日最後の目標は午後5時5分のバスに乗車することです。それを逃すとバスは2時間後になります。ですが花探しや観察も大切です。ウスギオウレンやミスミソウに出会い隊は、突き進むのみです。

山頂からは丹沢湖の展望です。午後なので霞んでいますが、元々富士山は見えない場所なので、空気が澄んでいなくても景色は大差ないと思います。大野山が見えました。

西丹沢ビジターセンターへ戻って来ました。時間的に下山する人がほとんどだと思いますが、今から入山する人を見かけ、中にはキャンプするような道具を持参した親子もいました。車勢はフレキシブルに行動ができて、ちょっぴりうらやましいと思うバス勢でした。下山後のバス車内では寝てしまうことも多いので、車の運転はできません。

午前中見かけた11人組の女性グループを見かけました。6人しかいなかったので、少し気になっていたのですが、どうやらメンバー1名が大腿骨を骨折して行動不能になっていました。救急隊員はおんぶで救助不可とのことで、赤いソリを西丹沢ビジターセンターで用意していましたが、陽が落ちかけた時刻なので2次被害がないことを願うのと、命に別状がなかったのが幸いです。1人の救助に3台の消防車が駆けつけており、思った以上の人員が駆り出されるのだと知りました。

ウスギオウレン

こちらは今日出会ったウスギオウレン(薄黄黄蓮)です。今回寄り道して出会ってきました。神奈川県では、西丹沢や東丹沢の大山に分布地があります。以前見た真っ白な花を咲かせるセリバオウレンと比べて、葉も花も色も、大きさも異なっていました。

一番細長い花のパーツが萼片です。萼片が4枚ある個体と5枚ある個体がいました。こちらは緑色が混ざった黄色い花です。茎も緑色から茶色いものもあります。

こちらは黄色くて白っぽい花です。萼片が5枚でした。茎が緑色なのが分かります。

茎が茶色のみの個体です。葉はコセリバオウレンに似ています。どちらも3回3出複葉ですが、コセリバオウレンの花の形や色はセリバオウレンと同じなので区別は容易だと思います。

ウスギオウレンの群生地です。

ミヤマウズラを見つけました。花の見頃は本当に短いので、丹沢でちょうどよく花が開花している姿を見たことはありません。他の山で偶然見頃の個体に出くわしたくらいです。動物による食害や掘り起こし被害は見かけます。

ミスミソウ(三角草)も寄り道してみたら、ちょうど咲いていました。雪割草とも呼ばれているようです。ちなみにスハマソウと呼ばれる植物との違いが全く分かりません。

今回は不謹慎だったり、不快な画像や文があったかもしれませんが、楽しいばかりが山の現実ではないことを忘れないためにも、このままにしておきます。

帰りのバス停で、斜面で滑り落ちたであろう背中が土まみれの登山者を見かけ、ふくらはぎに擦り傷を負っていました。そして私も、太いけどボロボロの枝に試しに掴もうとした結果、50cm程地面に落下して片肘に擦り傷ができました。何かと事故だらけの日でした。

日程表