登山地図

ルート

今回の登山の舞台は丹沢です。丹沢湖にある玄倉はユーシン渓谷への入口であり、そこから箒沢乗越を目指します。バリエーションルートになっており、一般登山道しか歩いたことのない私のような登山者にとって危険が多い場所です。それでも誰にだって初回はつきものです。バリルートの経験者による引率なしで、自分の力でどこまで行けるか試してみたいと思います。

まずは新松田駅バス停からバスに乗車して玄倉バス停で下車しました。満員だったバスの乗客のほとんどは、高松山の登山口になっているバス停で降りていきました。玄倉で下車した他の乗客はいません。

まずは西丹沢県民の森の近くにある穴ノ平橋まで林道を歩いていきます。だいたい徒歩1時間30分ほどの距離です。小川谷出合まではユーシン渓谷へ行く道と同じです。登山道の崩落による通行止めによって、渓流の青さで有名なユーシンブルーはまだ観に行けません。

途中で1台の大型トラックとすれ違いました。崩落の修復工事だと思います。車輪から絶えず砂ぼこりをまき散らしており、早々に砂ぼこりまみれになりました。けれど心配する必要はありません。本格的なバリエーションルートに突入すると、幾度も砂ぼこりにまみれることになります。

ここはまだまだ渓谷の入口ですが、ユーシンブルーがとっても綺麗です。

ミツマタが群生していました。まだ蕾のようで見頃になるには3週間ほどでしょうか。この周辺だとミツマタを観に大量の登山者がミツバ岳にやってきます。他にも遠見山から大杉山への登山道や椿丸も、同じ西丹沢ではミツマタの鑑賞地として知られています。ただしミツバ岳と違ってバリエーションルートです。

小川谷出合に到着しました。右へ行けば旧宿泊施設のユーシンロッジがあるユーシン渓谷へ、左へ行けば西丹沢県民の森です。左へ歩きます。

ユーシンロッジは2007年に廃業してから避難小屋として無料開放していますが、私個人としては絶対に泊まれません。廃業して10年以上たって、寄から雨山峠経由で施設を訪れてみると、お化け屋敷のような雰囲気になっていました。

丹沢を登り始めて、カモシカに一度も出会えていません。今回は人がいないので淡い期待をしながらも、たまに登山をするような回数ではダメなのかもしれません。毎週丹沢に登っている人もいますし。

道端に真新しい登山地図が2枚落ちていました。サイコメトリーと呼ばれる、物に手を触れて過去を幻視する能力を使ってみます。どうやら右の地図を参考に、左の地図を歩くつもりの3人組が見えました。どうやら2台の車を駐車場に止めて、花を探しに来ているようです。

何だかよく分からない幻視に精神力をすり減らしてしまいましたが、きっと2枚の地図の重なり合う場所に花が咲いているのだと思います。ちなみに右の地図からは3人組とは別の男性の姿が見え、花を撮影している姿が見えました。花はオウレンのようです。脳裏で見えたオウレンをネットで検索してみるとウスギオウレンでした。私はオウレンと言ったらセリバオウレンとバイカオウレンしか知りませんでした。

ここ最近はずっと積雪が丹沢に残っているようで、雪の丹沢を歩くなら今がチャンスです。けれど、寒くて1ヶ月以上登山をしないで過ごしてしまいました。

自然の力は偉大であり、堤防の大切さが分かるような気がします。

林道の途中に鳥居を見つけたので、少し立ち寄ってみます。

穴ノ平橋に到着しました。ここから橋を渡らず、橋手前の左手から河原(ヤブ沢)に降ります。ここから本格的なバリエーションルートとなります。私は登山地図は読めません。等高線の間隔が狭いと傾斜が急であったり、より標高の高い場所から外側へ等高線が張り出していると尾根であり、逆により標高の高い場所へ等高線が引っ込んでいると谷であるくらいは感覚で分かります。

しかし、等高線の狭さと傾斜の度合が実際どうなのか、人が容易に通行可能なのか、コンパスの使い方やピンポイントでどこにいるのか自力で判断することはできません。

今回はGPSとアプリで、以前誰かが歩いてアプリに点線として記録された「みんなの足跡」を頼りに進んでいきます。

まずは対岸へ渡り、1つ目の堤防は梯子を使い、上流を目指します。最初はどうやって上流へ目指せばよいのか、堤防の高さやフェンスによる障害物によって戸惑うことがありました。河原の岩はどれもこれも安定せず、浮石でした。

穴ノ平沢F1に到着しました。沢登りをしないので、滝を見かけることは普段ありません。丹沢はその文字通り、沢が多く存在し、沢登りの聖地でもあるように思います。

落差10mほどの滝は凍り付きながら流れていました。丹沢には三大瀑布と呼ばれる「早戸大滝」「遺言棚」「本棚」があります。それらと比べると貧弱かもしれませんが、ちゃんと滝つぼもありました。

2つ目の堤防は、堤防に立て掛けてある流木を使って進むこともできますが、右側の斜面から進みました。3つ目の堤防はそのまま通れます。「みんなの足跡」を見てみると、ここら辺から左岸の斜面を登っているようです。どこから登っていけば良いか、足跡は特にありません。登れるようで実際登ると、以外に登れません。

トライアンドエラーを繰り返し、ようやく通行できそうな谷を見つけました。後日、他の人の記録を読んでみると、谷ではなく張り出し部分を登っている人もいました。

谷には倒木があり、通れないかと思っていたのですが、実際は倒木に掴まってよじ登れました。通過するだけで砂埃が舞います。

谷から平地へ上がる場所にはトラロープがありました。テンションを掛けても切れそうになかったので、利用します。足をかける壁は簡単に崩れるため、砂埃が舞います。

痩せ尾根を通過します。丸っこい糞やら、四角い糞やら、人が来ない場所だからか、頻出します。足場が狭く、切れ落ちている場所もありました。丹沢や北アルプスなどの一般登山道は、片手で傘をさし、足だけで通行できる場所が大半を占めますが、ここのバリエーションルートは両手足を絶えず使い、気が抜けない場所が多かったです。おかげで、翌日は全身が軽い筋肉痛になります。

穴ノ平沢に降り立ちました。ここで遭難したら誰にも見つけてもらえなさそうな雰囲気です。

電波の届かない谷間を進んでいきます。幾つもの分岐が存在し、「みんなの足跡」を見ながらでもどれが正解の道なのか迷いました。

頭上からは絶えず石ころが小さな音と共に転がっていきます。絶えず風化して崩れていっているようです。河原にいた時は、1度だけ岩が斜面から崩れ落ちていました。多くの人が歩く丹沢山塊の塔ノ岳や大山とは、別世界が広がっています。好きな人にとっては、病み付きになってしまう沼がバリエーションルートなのだと理解しました。底なし沼です。

分岐にまた出くわしました。多くの人は真ん中の尾根(斜面)を進んでいるようですが、右の谷間からでも進めるようです。斜面は一見登れるようで、結構大変そうだったので右に進むことにします。

雪に誰かの足跡があるのを見つけ、目の前の稜線にたどり着けば箒沢乗越の所まできました。しかしザレていたり、落ち葉で滑りやすく、見た目以上の勾配でした。このまままっすぐ進まず、右や左から行けないか頑張ってみましたが、難しそうでした。実際は、右からなら何とか行けるようです。

私の技量では、三点支持だけではどうにもならないと感じました。もし進めたとしても、この先自力では進めず撤退を余儀なくされる可能性もあります。また登れても同じ場所を降りれないようでは、撤退する道は閉ざされてしまいます。始発のバスに乗らなかったこともあり、暗くなる前に下山するにはここら辺で撤退するのが良いと判断しました。

ムカゴネコノメソウが咲いていました。

今回の登山は、無理をしないで挑戦をする登山でした。次回(2日目)は箒沢乗越まで別のルートで目指したいと思います。