黒瀬バス停

沼津アルプスはご当地アルプスの1つです。冬でも積雪することはなく、夏の高山登山の時期を終え、多くの登山者が低山登山に切り替えると、登山者数が増える場所です。今回はあまり知られていない奥沼津アルプスと一緒に縦走します。端から端まで全てのコースを歩く健脚者向けですが、コース途中で下山できる箇所が多いため、体調や時間に合わせて計画変更が容易です。

まずは沼津駅から歩いて黒瀬バス停へ向かいます。ここまでは駅からバスで行くこともできます。沼津アルプスの端にある最寄りバス停です。バスの本数は多いですが、駅から歩いてもそんなに時間はかかりません。今回は沼津駅から原木駅まで全て徒歩です。原木駅は奥沼津アルプスの端にもっとも近い駅です。

バス停からすぐの場所に香貫登山口があります。ここから登山が始まりますが、最初はハイキングコースのようになだらかな道です。最高峰は鷲頭山の標高392mと低山であるため、楽な登山をイメージされる人も多いアルプスです。大平山まで山頂が7座ありますが、1座目の香貫山までは難易度は皆無です。
そのため、なめてかかってしまいがちですが、とっても痛い目に遭います。勾配のきつい急登が幾つも待ち構えています。そして奥アルプスに行くと、更に難易度が上がります。

植物のコクラン

コクランが種子をつけていました。ラン科や絶滅危惧種の植物など、何か存在しないか探していたのですが、他に見つかりませんでした。海沿いの山なので、シュスランの仲間やナギランなどあわよくばと思っていました。時期的に葉っぱが消えている種や、落ち葉に埋もれている個体もいるかもしれません。

あっという間に香貫山公園に到着したら、朝食にします。五重塔と富士山のコラボレーションを撮影できます。香貫山影奉仕と呼ばれるピンクのゼッケンを着た市民ボランティアが多くいました。清掃活動だけでなく、ヤマユリやホトトギスなどの植物保護もしているようです。

香貫山より更に先にある八重坂峠までは整備されてとても歩きやすいですが、分岐による複数の道があり、なんとなくの地図ではどこを歩けば何かを見逃すことなく歩けるのか分かりませんでした。久しぶりにGPS機能を使った登山地図を活用しました。

夫婦岩と名付けられた岩ですが、鼻が長い天狗の横顔にしか見えませんでした。切れ目がちょうど口を開けているように見えます。

標高193mの香貫山に到着しました。苦労せずに来れてしまうので、この先も同様かと初めて来た人は勘違いしてしまいます。山頂からの展望は特にないため、展望がある見晴台へ向かいます。

少し歩いただけで、香貫山見晴台に到着しました。富士山と駿河湾が見え、360度の展望がある高台に登りました。富士山の全容とその裾野が見えているように錯覚してしまいますが、実は手前にある愛鷹連峰によって富士山の下半身が隠れています。

富士山や沼津アルプスの模型が展示してありました。雨が降ったのか、オブジェの駿河湾に水が溜まっており、逆さ富士山が見えました。模型の逆さ富士と本物の逆さ富士どちらも見えますが、角度的に両方は映りません。

幾つもの分岐がある中、適当な1つを選んで八重坂峠へ目指します。ずっと山の中を縦走するのかと思ったら、車道まで下山しました。

車道を少し歩いていくと、横山への登山口である八重坂峠に到着です。エスケープルートが確保しやすいです。また体力に合わせて登山口を選べるので、1度に全山大縦走しない選択肢もあります。

ここからが登山道として本番になります。急斜面を登っていきます。木段は一切なく、段差が大きかったり、滑りやすかったり、根っこが邪魔だったりします。それ故にロープが張ってあります。雨で地面が塗れていたり、落ち葉で滑りやすかったり、踏み外ししないように注意が必要です。

息を切らし、足の筋肉を酷使すると、ようやく標高183mの横山に到着します。これで2座目です。展望は何もありません。頑張って標高を上げたと思ったら、さっきの香貫山よりも標高が低いことに驚きます。勾配がきついアップダウンの序章です。

下って、平坦な道も歩いたら、次の山頂に向けて登り返します。お決まりですね。

丸太で階段状に整備されてますが、丸太が縦に2本ならんでおり、段差が大きいです。未整備による荒廃を考えたら十分すぎるほどの親切設計です。このエンジェルロードを通過すれば、筋肉が増量して代謝アップによるダイエットが成功するかもしれません。今はラーメン、つけ麺、僕、太目!Alrightカモン。

標高256mある徳倉山です。3座目にして、ようやく標高が200mを超えました。息が乱れるのは標高も高くなり、高山病かもしれないと心の中で自分にボケて、自分で突っ込みます。

逆ルートから多くの団体登山者が来ました。今回すれ違った登山者は高齢の団体が大半でした。

マメヅタラン... ではなくマメヅタです。シンプルで面白い姿をしています。ランだったら心が弾んで長時間居座って撮影タイムでした。

静浦漁港が見えてきました。港の見える丘のような開けた場所です。トンビの生息地のようで、飛び交っていました。

標高214mの志下山は4座目です。漢字に違和感があると思ったら「志」の上部が「土」になっていました。大名行列の団体がいたので、休憩せずに先に進みます。

次に目指す山頂が見えます。手前が小鷲頭山で、奥が鷲頭山です。途中で休憩するには最適な岩があったので、そこで昼食にしました。

ぼたもち岩が見えてくると、ここからまた登りが始まります。ちなみに「ぼたもち(牡丹餅)」と「おはぎ(お萩)」の違いをご存じですか。基本的にはどちらもアンコともち米を使った全く同じ食べ物です。昔は、春の彼岸に食べられる餅が「ぼたもち(牡丹餅)」で、秋の彼岸に食べられる餅が「おはぎ(お萩)」と呼ばれていました。私が普段耳にしたり、口にするのは、季節を問わず「おはぎ(お萩)」です。

突如エメラルドグリーン色の葉っぱを発見しました。花のない季節に、この木だけが目立って美しいです。この木なんの木気になる木です。そんな社歌がある日立では「落穂拾い」という言葉がよく使われます。失敗から学ぶことを意味しますが、日立以外では耳にしない言葉です。

平清盛の五男である平重衡は戦の時に、東大寺や興福寺などの奈良市内を焼いたことがきっかけで、ここに逃げ込み隠れ住んでいました。この隠れていた洞窟を「中将さん」と呼ばれています。

洞窟には石仏の平重衡があります。ここから小鷲頭山までは、今まで以上にきつい急登になります。ロープが張られた斜面には斑入りのアオイや斑なしのアオイが自生していました。片側は崖なので、通行には油断が大敵です。

5座目は標高330mある小鷲頭山です。

山頂近くには平重衡の切腹場所があります。追っ手に見つかり、逃げきれずにここで最期を終えました。

学校では歴史の教科書を呼んでも、何も頭に残りませんでしたが、実際の地で歴史に触れ、それについてネットで調べると何となく記憶に残るようになります。ご当地アルプスに、教科書には載っていないような歴史を発見するとは思っていませんでした。昔から人の行き来がある低山ならではです。

最高峰である標高392mの鷲頭山に到着しました。6座目です。残る1座を目指して向かいます。

目の前に見える山が大平山です。一旦下って、登り返してがまたやって来ます。しかも、下りはとても滑りやすい斜面になっていて、ロープを握りながら進みます。

木々の隙間からは狩野川や伊豆スカイラインに沿った山の連なりが見えます。手前に見える沼津アルプスの端っこが、奥沼津アルプスのゴールかと思っていたのですが、画面に映らない更に右奥がゴールだったようで、まだまだ全行程の中盤は続きます。

ウバメガシの岩尾根

ウバメガシの岩尾根

淡島には、あわしまマリンパークがあります。大陸と陸続きではなく、船で行く必要がある変わった水族館です。個人的には沼津駅の近くにある沼津港深海水族館が興味がありますが、どちらかというと鑑賞するよりも、深海魚を食べたい欲しかありません。

できれば深海魚のバラムツを一度は食べたいです。絶品のようですが、食品衛生法によって販売禁止です。美味の由来である人間が消化できない油(ワックスエステル)を、腹痛承知で味わってみたいのです。

大平山の山頂手前には十字路になっており、海側と内陸側の両方へ下山できます。どちらにもバス停もあるようで、多くの登山者は多比口から登って、沼津駅へ縦走しているように思います。沼津駅から多比口へ行くバス停で行列ができていたのを今朝見かけました。

その方が、下山後に沼津港の魚市場などで食事してから帰宅できます。けれどもし時間があったら韮山反射炉へ立ち寄りたいと思ったので、沼津駅から登山をする計画にしました。結果としては世界遺産の反射炉へ行く時間はなく、下山後はそのまま帰宅となります。

7座目の大平山に到着しました。標高はさっきより少し低くなって356mです。これで沼津アルプスを全山縦走し終えました。

山頂がある度に登っては下っての繰り返しでした。ここでもうゴールで良いと、変化の少ない道や景色がずっと続くと思ってしまいます。しかし終わりがあれば、始まりがあるのが人生です。登山は人生みたいなもの。ここから、奥沼津アルプスの始まりです。

見えている山の続きの一番奥、つまり山で隠れて見えない先端が今回の本当のゴールです。
実は鷲頭山を最後に、下山するまでほとんど人とすれ違うことがなくなります。数は5人ほどでしょうか。これまで何度も見かけた団体は、奥地では皆無でした。

個人的には沼津アルプスは、奥の方が好みです。巨岩やロープ、高度感のある梯子、細いトラバースなどアスレチックのようです。また整備も最低限にしかされておらず、その山域の持ち味といいますか、苔むしたり、木の根っこで覆われた巨岩があるため、どこか秘境のようでした。

虎ロープで固定されただけの梯子です。ここはまだ序の口です。

斜度のある岩をロープを使って登ります。岩に凹凸があるので難しくはありませんが、今まではこんな場所ありませんでした。

富士山の展望もたまに見えます。個人的には香貫山見晴台から見る富士山が1番でした。2番目はこれから向かう大嵐山(日守山)からの富士山です。狩野川と一緒に撮影できます。

トラバース道を進んでいくと、奥に長い梯子が見えます。斜面が崩れた場所に長いロープが用意されており、本日の1番手強い難所です。ただ右に別のルートがあるようなので、そっちに行ってみました。

岩に立てかけられたような長い梯子が待っていました。虎ロープだけで固定されているようで、乱暴に扱うのは危険です。慎重に登ります。登り切った先の足場は狭く、高度感がありました。

槍ヶ岳の山頂から梯子を降りる時の角度に似ているかもしれません。こちらは、梯子が軋み、揺れるので、より楽しいと思います。

金山と呼ばれるコルは、コルと呼ばれる名の通り、山と山の間にある鞍部(底)かと思いきや、そんな感じはしませんでした。コルクの産地?それとも肩がコル?ここ掘れワンワン、黄金小判ザックザックの金山なら良いのに。

目新しいものは特にないまま歩みを続けていきます。今年もあと少しということで、今年デビューしたことを思い返します。まずは食虫植物を育て始めました。

セファロタスというオーストラリア原産の1属1種です。適当に腰水だけやって放置していたら、捕虫葉がいつの間にか沢山増えてました。食虫食虫はいじりすぎないのが大切みたいです。普段は飽きっぽく、周期的に熱中する性格には合っているかもしれません。

突然、柵が出現しました。私がやって来たのは柵の向こう側からです。どうやら私がいたエリアは所有者の許可が必要と書かれています。今までそんな看板に遭遇していないので、もし逆ルートを歩く場合、ここの注意書きは無視して中に侵入して良いように思います。他に縦走路はないです。

柵を超えると、そこは公園になります。すぐに大嵐山(日守山)の山頂に到着しました。公園のような広場になってます。夕暮れ時の展望はいつ見ても飽きないものです。とある同様に「夕焼け小焼け」の歌詞がありますが、「小焼け」とは特に意味はなく、夕焼けの音と相性が良い音だから、小焼けと歌われているようです。Blur blur blur...

小さな子供が母親と連れられて山頂に来ていましたが、その親子が来た道とは別の道を歩きます。奥沼津アルプスは別のルートでまだ続いています。ここからの登山道も所有者の許可が必要なようです。

大嵐山にいた時は、どこかの住宅街にある公園のような雰囲気だったのですが、またスリップしやすく傾斜が激しい登山道に連れ戻されました。広場にやって来た児童がよく分からず勝手に入ると危険なので、所有者の許可が必要となっているのだと推測しました。

これで最後の山頂である茶臼山に到着しました。大嵐山も含めると合計9つの山頂を縦走してきました。長くて険しくて、足が疲れる道のりでした。

無事に奥沼津アルプス石堂橋口(茶臼山登山口)へ下山できました。最寄り駅の原木駅までは歩いてすぐです。韮山反射炉へ行く時間がなかったのが心残りですが、また訪れる機会を頂けたと思うことにします。

今回歩いた距離は約15.6kmあり、合計の標高差は登りと下り両方とも1,350m程でした。これだけ歩けるなら、たいていの山は高山だろうが低山だろうが心配ないと思います。

日程表