忍野八海の地図
今回の旅先は山梨県にある忍野八海と、そこから見える高座山とその先にある杓子山です。観光と登山を組み合わせた内容になっています。忍野八海は富士山と杓子山を水源とする綺麗な湧き水が有名です。海外からの観光客が少ない時に、いつか来ようと考えていました。
高座山は秋になると一面がススキの黄金色の世界になります。また山野草好きの人々に人気があるムラサキセンブリが咲き、絶滅危惧種のヒナノキンチャクも存在します。富士山の展望は忍野八海や杓子山と共に抜群の場所です。杓子山は山梨百名山になっているなど、色々な要素を考えた結果、今回の観光登山を計画しました。
お釜池(二番霊場)
まずは、御殿場駅からバスに乗車して忍野入口バス停で下車しました。東京から忍野八海へ行く場合は、新宿バスタからの直行バスに乗車するか、JR中央本線経由の河口湖駅からバスに乗車します。
忍野八海の最寄りのバス停は忍野八海バス停ですが、バスの本数が限られているので、忍野入口バス停で下車して30分程歩いて忍野八海へ行きました。
お銚子池(四番霊場)
8つの池(霊場)が観光ポイントとして存在していますが、出口池(一番霊場)だけ離れた場所にあるため7つだけ観光し、その後の登山を終えて時間が余ったら8つ目を見に行こうと思います。
忍野八海から見た富士山
雪化粧した富士山の展望があります。午前中の早い時間帯は雲が発生せず、空気も澄んでおり、はっきりと綺麗に見えました。これが午後になると雲が多くなったり、景色が霞んだりするのが登山のあるあるです。しかし、夕時の冷え込む時間になると再度雲が消えて、空気が澄むことが多いです。高座山や杓子山の山頂からは綺麗な富士山を観賞できるでしょうか。
忍野八海の中心部です。海外からの大量の観光客や、就学旅行生がとても少ない時でした。奥に見える山は、手前が高座山で、その奥に杓子山です。
底抜池(三番霊場)は有料区間にありました。水の透明度はどの池も素晴らしく、池の底が青く輝いていました。魚も豊富です。
紅葉して落ちた葉っぱが青い水面に浮かび、秋の季節ならではの情緒がありました。紅葉とは、日照時間が短くなって光合成効率が悪くなった葉っぱが普段通りエネルギーを消費してしまうと、光合成によるエネルギーの生産よりも消費の割合が増えてしまいます。そのために葉に存在する緑色の葉緑素を分解してエネルギーとして樹木本体に渡し、紅葉した後で落葉という形で葉を切り離します。
湧池(五番霊場)です。テレビでこの観光地の特集を何度か見たことがあるのですが、だいたい海外からの観光客がお金を底に投げ入れている様子が放送されています。日本のお賽銭の文化が間違って伝わってしまったようですが、水質悪化の原因になるとのことです。そういえば高校生の時にイオン化傾向を学習しましたが、それと関係ありそうです。
池を泳ぐイワナやニジマスは金色だったり、真っ青だったり、アルビノなどの色違いが何匹もいました。この後の登山を考えると、観光地の滞在時間は1時間以内を予定していたのですが、時間を過ぎてしまうくらい満喫できました。個人旅行ゆえの裁量は、旅で後悔をしないためのマストかもしれません。
濁池(六番霊場)
鏡池(七番霊場)
たいして歩いていないのに、観光客が多すぎて人混みに疲れてしまいました。観光地あるあるです。
菖蒲池(八番霊場)
観光を終えたら、高座山の登山口である鳥居地峠まで歩いて向かいます。先程までと打って変わって、通行する人は見かけなくなりました。はげた山肌はススキが群生しており、一番標高が高いはげた場所が高座山の山頂になります。
忍野中学校を通過すると林道になります。発色が鮮やかなトリカブトが咲いていました。有毒であることはサスペンスドラマでよく知られていますが、有毒アルカロイドは加熱によって毒性が弱まります。そして漢方薬としての利用されます。
鳥居地峠にある杓子山登山ルート
鳥居地峠にはあっという間に到着です。小さな駐車スペースがありますが、満車でした。近くには不動湯と呼ばれる天然温泉大浴場があります。アトピーに効果があると、昔テレビや雑誌で評判になった場所です。
富士山とススキ
登山道は少し歩けば空を覆い隠す樹木はなくなり、富士山の裾野まで見えるようになります。ススキが覆う道はとても歩きやすく、幾つかの分岐点がありますが、どの道を進んでも山頂へたどり着けます。
初心者向けの山かと思ってしまうのですが、とてつもない難所が高座山の最後に待ち構えています。
コシオガマ
途中ですれ違った女性の人にヒナノキンチャクが咲いている場所を教えてもらいました。植物探しのために今年は何度も高座山へ訪れており、今日は見逃しの植物がないか高座山を2周目であると言ってました。
フシグロ
残念ながらというか、運よくヒナノキンチャクがまだ咲き残りが僅かばかりあると情報を得ており、それで今回訪れようと思った理由の1つでもあります。8月の終わりが花の最盛期ですが、ヒナノキンチャクだけを目的に観に行く気があまりしませんでした。また8月は富士山が綺麗に見える日が少ない印象を持っています。
リンドウ
ヒナノキンチャクが咲く場所を教えてもらったのですが、見つけることができませんでした。咲いている花の数が少ないためか、想像している植物の大きさが実際と違うためか、初見の花を見つけるのは難易度がありました。
ウメバチソウ
ワレモコウ
ムラサキセンブリ
今日のお目当ての花であるムラサキセンブリです。秋の花であるセンブリは生薬として名前だけは知っていたのですが、紫色はより希少なようです。準絶滅危惧に指定されており、東京都や埼玉県では絶滅と記載されていました。
ここから滑りやすい土の急傾斜が山頂まで続きます。登ることはできても、下りで使用するのはすごく躊躇する場所でした。傾斜角度は70度はあると思います。先を歩いていた2人グループの1人は、登るのに悪戦苦闘しており、見ているだけでヒヤヒヤしました。
この滑る急斜面を登れば山頂です。普段はストックを使わないで登山をするのですが、ここはストックがあると安全に通過できます。ストックは使わなくても毎回登山で持参するので、持ってきて大正解でした。ストックを地面に突き刺し、地面とストックの間に足を置くと、登りも下りも滑り知らずに進めました。
標高1,304mある高座山の山頂に到着しました。時刻は午後になってしまっており、気温があがったせいで富士山が雲に隠れがちです。杓子山へ行って、再びここに戻って来る頃には肌寒くなって、雲も消えると思います。その時に期待して、杓子山へ向かいます。
登山道に難所はなく、シュロソウが咲いていました。何組もの登山者とすれ違いましたが、基本的に静かな登山でした。
杓子山の山頂から見た富士山の景色
標高1,598mある杓子山の山頂に到着しました。山梨百名山ということで、高座山よりも知名度があるのではないでしょうか。個人的には高座山の方が見所が多いように感じましたが、こちらは360度の展望があります。
杓子山から稜線を歩いていくと、2時間ちょっとでたどり着ける倉見山へ続いています。倉見山はクマガイソウの群生地になっており、春には園芸品種のエビネも一緒に花を咲かせています。どれも自生ではなく、植栽です。
右奥の高い山が三ツ峠山で、左に見える湖が河口湖でしょうか。山座同定をするには、まだまだ山登りや地図読み経験が浅い新米です。
こちらは、丹沢山塊や箱根の方角です。木々が覆っていないススキの斜面が鉄砲木ノ頭で、その奥の右側の稜線が三国山、一番奥に箱根の大涌谷が見えていました。三国山へ続くヅナ峠道にはヤマシャクヤクが多く自生しています。
昼食をベンチで食べた後、高座山まで戻ってきました。気温が低くなり富士山を覆っていた雲はだいぶ少なくなってきました。今まで幾つかの山で富士山を眺めてきたのですが、一番お勧めの場所は、丹沢山から塔ノ岳へ続く稜線です。丹沢の深さと富士山の迫力を感じることができます。
昼間よりも夕暮れ時の方が景色の陰影が濃くなり、ススキがより素敵に輝いています。
下山時もヒナノキンチャクを探したのですが、やっぱり分かりませんでした。帰りにまだ訪れていなかった忍野八海の出口池(一番霊場)に行く予定だったのですが、日暮れで暗くなったため断念しました。今回見ることができたのは、出口池を除く忍野七海になりました。
忍野入口バス停から時刻17:48発のバスに乗ろうと思ったのですが、間に合わないため、一本後のバスにしました。その時間なら、忍野八海バス停に停車する数少ないバスに乗車できます。
夕食はバスの待ち時間があったため、下車する御殿場駅ではなく、セルバ忍野店(スーパーマーケット)でお弁当を購入して食べました。セルバは地元にはなく初めて利用したのですが、美味しそうな総菜が多く、地元にほしい存在です。現在は山梨県と静岡県のみに店舗があるご当地スーパーです。
日程表