上高地から蝶ヶ岳へ目指し、食物アレルギー対応を積極的にしてもらえる蝶ヶ岳ヒュッテで宿泊する1泊2日の登山をします。登りは徳沢から長塀尾根を使い、下山は横尾へ下っていきます。季節は紅葉し始める頃です。蝶ヶ岳は槍ヶ岳や穂高連峰の展望台のような場所になっています。またライチョウやホシガラスなどの生き物と遭遇するのが比較的容易な山となっています。
まずは新宿バスタから、夜行バスのさわやか信州号に乗って上高地へ到着しました。自衛隊が沢山集まっており、重装備のテント泊訓練でもするようです。
まずは明神へ行き、徳沢までほぼ平坦な林道を歩きます。花の種類が少ない秋ですが、今が旬の花があります。こちらがそのアケボノシュスランです。数多くあるラン科シュスラン属の1種です。上高地を歩く登山者の9割以上は、こんな花に気がつくことも、興味を持つこともないと思います。それでも山野草が好きな人には人気があります。ここ長野県では準絶滅危惧種になっています。
標高が高い場所では紅葉が進んでいます。来週あたり涸沢カールの紅葉が見頃になるでしょうか。上高地から標準タイムで1泊2日の登山計画を考えるなら、蝶ヶ岳と涸沢カールが思い浮かびます。健脚で歩行速度がある人なら、1泊でも槍ヶ岳や奥穂高岳、北穂高岳など選択肢が増えると思います。
今回、蝶ヶ岳ヒュッテを宿泊先に選んだのは大正解でした。実は小麦アレルギーがある同行者がいるのですが、食物アレルギーがある宿泊者の対応を以前したことがある山小屋でした。そのため、快く対応をしてくれました。私の今までの印象では、食物アレルギー対応をしてくれる山小屋はとっても少なく、対応をしてくれても乗り気でなかったり、どう対応すれば良いか分からないケースがほとんどでした。
ちなみに小麦は色んな食材に含まれているので、食物アレルギー対応の中では難易度が高いです。
徳沢に到着したので、ここで朝食にします。今までは緩やかな歩きでしたが、ここから登山になります。
蝶ヶ岳ヒュッテに宿泊するにあたり、事前に宿泊予約をしており、食物アレルギー対応も何日も前に電話で可能か相談してあります。どんな対応をすれば良いか、電話でアレルギー内容を聞き取りながら、食事のメニューを別途考えてくれた印象です。手順を踏めば登山者に親身になってくれる山小屋だと思います。
なぜこんなことを書くのかと言うと、コロナ禍ということもあってか宿泊するのに事前予約が必要なのに、予約なしで泊まろうとしたら断られ、蝶ヶ岳ヒュッテをボロクソに書いた某登山隊ブログの存在が以前あったからです。今はそのブログは大幅に修正してかなりマイルドな表現になってます。蝶ヶ岳ヒュッテはその登山隊を宿泊拒否によって遭難させるのではなく、好天につき一ノ沢への下山を促しています。
山小屋スタッフや宿泊者にコロナ感染を出さないように山小屋は大変な努力をしている中、山小屋の宿泊は事前予約が当たり前かつ山小屋がそうお願いしている中、日帰り予定でもないのに、山小屋に予約なしで堂々と入山することは、私には到底できません。
今まで幾つかの山小屋に宿泊したことがあるのですが、蝶ヶ岳ヒュッテはコロナ対策が他より優れている点が多いです。具体的な内容は後述しようと思います。
それでは徳沢から長塀尾根へのルートを登り始めます。登りの登山者はとっても少ないです。蝶ヶ岳への一番メジャーで人気のルートは三股から登る蝶ヶ岳新道です。そのルートにある恐竜(ゴジラみたいな木)は有名なので一度はお目にかかりたいものです。
ひたすら登りですが、歩きやすく、滑落の危険性もありませんでした。
こちらはアキノギンリョウソウ(ギンリョウソウモドキ)でしょうか。それとも良く見かけるギンリョウソウかもしれません。9月の後半ですが、所々でギンリョウソウがまだ咲いていました。上高地は標高が高く寒いので、とっくの前に咲き終えて姿を消していると思っていました。
腐生植物好きとしては、ショウキランが咲いている時期に、再度訪れたいものです。
展望が全くないコースですが、八ヶ岳を彷彿とさせるほど苔が豊富だったりします。
オオバノトンボソウ発見!っと思ったのですが、正しくは「キソチドリ」でした。個体数が多いです。他にショウジョウバカマやツバメオモト等の葉っぱやツルリンドウの実も見かけました。
ちなみに林床にいるのがキソチドリで、湿地帯にいるのがホソバノキソチドリです。けれど似たようなツレサギソウ属の植物はもっと多くて、覚えられません。オオバノトンボソウと見比べると葉っぱの形や角度が異なるけれど、まだまだ難しい。
ゴゼンタチバナの赤い実です。色合いと森の雰囲気からか、童話の赤ずきんちゃんを連想しました。
標高を上げると登山道は紅葉の景色へ遷移していきます。
標高2,565mある長塀山(ながかべやま)の山頂に到着しました。標高1,560mある徳沢から1,000m高い場所まで登り詰めてきました。
ふっくらしたギンリョウソウの果実を発見しました。「おい、鬼太郎。山の中でもやっぱりお風呂に入りたい目玉おやじだぞ。」と幻聴が聞こえてきました。
蝶ヶ岳新道のシンボルがゴジラみたいな木なら、長塀尾根のシンボルはこちらです。太古から妖精とホシガラスが住むという... あくまでもイメージです。
誰が苔の絨毯にハイマツの実を置いたのかしりませんが、ホシガラスによって綺麗に食べられてます。
妖精ノ池は樹林帯の中にあるため、風がなく綺麗な水鏡でした。
オタマジャクシが沢山いると思ったら、サンショウウオでした。
いきなり森林限界に突入しますが、そうなったら蝶ヶ岳の山頂までは目前です。
一番右にある北鎌尾根から槍ヶ岳、中岳、南岳、大キレット、北穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳、そして一番左にある前穂高岳が観れました。数時間前は雲一つなかったようなのですが、各々の山頂が隠れてしまってます。
山肌が薄く黄色に紅葉しています。ダケカンバの色ですね。ナナカマドの赤い紅葉は分かりませんでした。どうやら葉っぱが既に落ちてしまったようです。
標高2,677mある蝶ヶ岳の山頂に到着しました。展望は日本百名山の常念岳と似ています。山容はなだらかな平坦であるため、蝶ヶ岳に登ったことがないと、他の山から蝶ヶ岳の同定は容易ではないと思います。それ故か、北アルプスの山の中では、登山者の数が多くないような印象です。
山頂からすぐの場所にある蝶ヶ岳ヒュッテに到着しました。受付時に、体温を計測されます。自己申告制でない山小屋はとても珍しく、しっかりしています。安心ですね。
寝床はカイコ棚式ですが、細かく壁で区切られており、1つの区切りに最大2名までで、お1人様は見知らぬ人と相部屋になることはなさそうでした。安心です。
こちらが今日宿泊するお部屋です。他の客を気にする必要がないため、熟睡できそうです。
1つ気になったのが、他の山小屋よりも布団に付着している誰かの髪の毛の量が多かったことです。山小屋スタッフのコロナ感染症の感染対策として、布団のクリーニングをしていないのかもしれません。
ただ、宿泊者が布団を清潔に使用できるようにシーツの販売もしていました。私は家からインナーシーツを毎回持参しているので、布団が汚染されていても大丈夫だと思います。寝る時は、新しいマスクの着用もしてます。
昼食は、蝶ヶ岳ヒュッテで注文したカレーです。粉チーズをふりかけて濃厚アレンジしました。山の展望と相まって美味です。スパイスが効いているルーでした。塊の具材があったら、食べ応えがあったと思います。
今まで見えなかった槍ヶ岳の穂先が姿を現してくれました。南岳までの稜線は雲に隠れていません。手前の草紅葉と共に良い景色です。
蝶ヶ岳の展望台といったら、蝶槍という場所なので、そこまで行ってみようと思います。今回の登山では僅かな区間ですが、稜線歩きができるのはとても気持ちの良いものです。
横尾分岐です。明日はここから下って、横尾へ下山する予定です。
蝶ヶ岳三角点へ忘れずに立ち寄ります。蝶ヶ岳山頂の標識とは別の場所にあります。三角点に触れると、本当に山頂に立った気持ちがします。
蝶槍
常念岳はどの方角から見ても認識できるピラミッド型の山容です。
蝶ヶ岳は「花の百名山」の1つに選ばれているようですが、調べていると色んなバージョンの「花の百名山」が存在しており、全てのバージョンで選ばれているようではないみたいです。一番知名度がある田中澄江による選定では蝶ヶ岳は入っていません。〇〇百名山は、選んだ人によるものなので、私にとって蝶ヶ岳はどんな百名山となるのでしょうか。
蝶槍に到着しました。ここからは常念岳を含めたパノラマが広がっています。
しばらく休憩した後、紅葉を味わいながら蝶ヶ岳ヒュッテへ戻ります。
蝶ヶ岳への樹林帯の登山道でも遭遇していたホシガラスが稜線上では良く見かけました。
イワヒバリ、ライチョウ、オコジョにも会いたいと思いつつ、自然はあるがままでしかないですね。
こちらが本日の夕食です。唐揚げやミートボール、豚肉などお肉系がメインになります。一番のこだわりが自家製の味噌を使った味噌汁です。味噌は小麦を一切使用していないため、小麦アレルギーでも大丈夫です。シイタケと野菜の具材が入っており、朝の味噌汁とは具材が異なります。他の山小屋の味噌汁とは味が結構異なります。酸味があり美味しいです。
ただ、おかずの量が若干少ない印象です。そこはお代わり自由のご飯と味噌汁でお腹を満たします。味はどのおかずも美味しいです。
こちらが小麦アレルギー対応の夕食です。ポテトやキュウリの他に、りんごもついていました。鶏肉の下にはキャベツの千切りがありました。宿泊者と山小屋スタッフでは、食べるものが全く異なるのが、どの山小屋でも共通だと認識しています。アレルギー対応の料理は、スタッフ用の食材も使って対応してくれたのかもしれないです。