ルート
今回は猿倉から白馬大雪渓を通って白馬岳を目指し、栂池自然園へ下山する登山です。ライチョウの親子と遭遇したり、ウルップソウやツクモグサ、コマクサなどの植物観察も登山目的になっています。白馬岳と同様に、白馬三山の1つになっている杓子岳にも立ち寄ります。宿泊は食事がバイキングになっている村営白馬岳頂上宿舎です。
まずは、新宿バスタから白馬町まで夜行バス「さわやか信州号」に乗車しました。白馬町バス停で下車したら、徒歩数分で白馬駅にある猿倉行のバスに乗車します。
猿倉バス停(猿倉荘)で下車しました。白馬岳の山頂に近い白馬山荘に宿泊するのではなく、より標高の低い村営白馬岳頂上宿舎を宿泊先に選びました。展望は山頂に近い方に軍配が上がりますが、バイキングの食事や混雑具合などは標高が低い方ならではのメリットかもしれません。
白馬尻小屋までやって来ました。と言っても、小屋が跡形もありません。白馬尻小屋は例年7月から9月まで利用でき、その後は雪崩の多発する場所にあるため、毎年解体されて姿を消す山小屋です。営業がない年は姿を消したままでした。「ようこそ大雪渓へ」と書かれていますが、雪渓歩きはまだ先です。
猿倉から宿泊する山荘まで、約6kmの標準タイムは5時間40分です。標高は約1,600m程歩いて上げていきます。杓子岳まで足を伸ばすと、標準タイムは8時間程になります。
キヌガサソウ
ここから全長3,5km、標高差600mの雪渓歩きが始まります。軽アイゼンを使用した、距離100mも満たないちょっとした雪渓歩きは北岳で1度経験がありますが、それ以上の雪渓歩きは初めてです。軽アイゼンの他に、念のためにストックを持参してきました。
軽アイゼンを装着して登り始めます。皆が雪渓に引かれた赤いラインの上を歩いており、そこだけ雪が緩かったので、ストックを使うことはありませんでした。とても歩きやすいです。雪渓歩きは足だけで登っているので、普段そこまで疲れないふくらはぎに負担がかかっていました。
雪は紫外線を反射させ、すぐ日焼けすると聞いたことがあるため、日焼け止めクリームを腕や顔に塗りたくります。体は次第に火照って暑いですが、雪渓に吹くクーラーのような涼しい風があるため、暑いのに涼しくて変な感じです。
時々、雪渓の両端にそびえ立つ岩壁から小さな岩がコロコロと落下してきました。そんな岩も場所によっては、疲れた時にお尻を冷たくせずに座れる椅子として使えることもあります。
今回登る白馬三山とは、白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳の3つの山の総称です。白馬岳と杓子岳だけでなく、できるなら白馬鑓ヶ岳まで歩きたい気持ちもあったのですが、時間の関係で断念しました。白馬三山の主峰である白馬岳は後立山連峰の最高峰であり、日本百名山かつ花の百名山に選ばれています。
自衛隊の訓練先にも選ばれているようです。
白馬大雪渓にはクレバスが発生することもありますが、ルート外に小さな穴が存在するくらいでした。
葱平で雪渓歩きは終了です。この先や翌日も雪渓を歩く機会があったのですが、軽アイゼンを使用することはありませんでした。雪解け水で綺麗に泥や雪を洗い流し、ザックの中にしまいました。
自分が歩いて来た雪渓を眺めながら、朝食にします。ここからはお花畑が広がる登山道です。植物の中には、「シロウマ」の名前が頭に付く植物が幾つか自生しているようで、今日はどんな植物に出会えるでしょうか。
テガタチドリ
チドリの名前が付くラン科の高山植物は多くあり、ハクサンチドリも一緒に見かけました。
クルマユリ
本日最後の雪渓歩きはこの一本道です。道の横幅はありますが、軽アイゼンなしだと滑ります。滑落したら、急斜面を永遠に落ちていくので注意が必要です。
夏山常駐パトロール隊がチェーンソーやスコップを使って、アイゼンなしでも安全に通れるように整備をしていました。ありがたいことです。
ミヤマクワガタ
標高を上げ続け、木の階段地獄が終わると村営白馬岳頂上宿舎が目前になります。
イワオウギ
午前中に村営白馬岳頂上宿舎へ到着しました。宿泊受付開始時間は12時30分からで、時間があります。このまま杓子岳へ向かう選択肢がありましたが、荷物を軽くして目指したい気持ちがあります。周辺で植物探しをしながら時間を待つことにしました。
山小屋からは手前に杓子岳、奥に白馬鑓ヶ岳が見えました。
ウルップソウ
北海道と南八ヶ岳、白馬岳周辺にしか分布していない準絶滅危惧の植物です。時期的には終盤でしたが、何とか綺麗な個体も少し残っていました。
高山でよく見かける鳥、イワヒバリを見かけました。人間の側に近寄って来ることもあります。今は痩せてシュッとしていますが、冬が近づくとまん丸に肥えて可愛くなります。
村営白馬岳頂上宿舎に戻ってレストランで昼食にします。白馬村内の紫米を使ったカレーを注文しました。カレーはレトルトカレーの味でした。他に手作りプリンやケーキの販売もあります。
宿泊の受付を終え、不要な荷物を寝床に置いたら、今度こそは杓子岳を目指して出発します。割り当てられた大部屋は2段ベッドの16人用でした。幸いなことにその部屋の宿泊客は3人だけでした。翌日はほぼ満員だとか。まずは稜線上にでます。
旭岳
ミヤマシオガマ
山肌にこんなに雪が残った景色を見るのは、初めてかもしれません。緑と白のツートンは美しさがあります。軽アイゼンを持ってくるだけで、こんな山岳風景を見られるなら、これからもどんどん持参していきたいものです。
標高2,768mある丸山と呼ばれる小ピークに到着しました。白馬山荘と白馬岳の山頂が見えました。
遠くには北アルプスのシンボル的存在の槍ヶ岳を彷彿させる山がそびえ立っています。剱岳でした。
コマクサ
「高山植物の女王」と呼ばれるコマクサは、高山の景色を背景(借景)にすると、すごく映えます。この時期、標高の高い山で見かけやすい植物の1つであり、登山者なら1度は観てみたい植物かもしれません。
足元には沢山のウルップソウが自生していましたが、花はほぼ全部終了していました。もし時期が合えば、剱岳を背景に撮影したいものです。
丸山から標高を下げ続けると、今度は杓子岳の山頂に向けて登り返しが待っています。今歩いている稜線は、難所である不帰ノ嶮(不帰キレット)と唐松岳へ続いています。いつかそこまで縦走できる日が来るでしょうか。
ミヤマダイコンソウ
どこかにライチョウでもいないかと目を細めたり、見開いたり、しかめっ面もしてみたのですが、残念ながら今日は出会えませんでした。けれど翌日はライチョウと何度も遭遇することになります。
稜線を歩いていると、剱岳ばかり目が向いてしまっていたのですが、ここから見る白馬岳も負けずの迫力と存在感があります。
登り返しの最後は、若干下に崩れ落ちてしまいやすいザレ場を歩いていきます。
標高2,812mある杓子岳の頂上に到着しました。白馬岳の右側からガスが発生しており、この後すぐに展望がなくなってしまいました。
歩いて来た道とは反対側の斜面は崖になっていました。今朝到着した白馬村があんな遠くに見えました。
このまま白馬鑓ヶ岳まで足を伸ばしたいですが、ガスが広がってきており、また村営白馬岳頂上宿舎まで帰らないといけないピストン旅なので、引き返すことにします。
白花のウルップソウはこれだけ発見しました。
シロウマアカバナもしくはミヤマアカバナ
シロウマアカバナはミヤマアカバナとそっくりの植物ですが、種子に乳頭状突起がある場合前者で、ない場合後者になります。白馬岳周辺に咲いているのは、両者です。
シロウマチドリ
こちらは白馬の名が付いたチドリです。ラン科ツレサギソウ属のチドリは何種類か見たことがありますが、多くの葉が茎にまとわりつく感じや、人間の舌にリアルに似ている唇弁が、今まで見たことのないチドリだと感じました。
タカネアオヤギソウ
タカネシュロソウ
シコタンソウ
ミヤマクロユリ
タカネヤハズハハコ
植物探しをしながら山小屋まで戻ってきました。夕飯まで時間があったため、寝床の準備をします。インナーシーツは持参しました。
お待ちかねの夕食は、とっても美味しかったです。一番美味しかったのは、塩カルビです。そして生ハムチーズコロッケや山芋コロッケも美味でした。タケノコの煮物やひじきなどの和料理もあります。お米は不味くなく、普通に食べられます。
食べ放題なのでお代わりしないわけには、いかないですね。3種類のプチケーキは頬が落ちるかと思いました。
食後は、歯磨きをしながら夕陽が沈むのを待ちます。夕食前はガスガスだったのに、食後はガスがなくなっていました。
山肌が夕陽色に染まってきました。
白馬鑓ヶ岳と剱岳の間にあり、小さく槍ヶ岳が見えました。白馬岳山頂の方が良く見えるので、翌日紹介します。
今日は、ウルップソウやコマクサ、シロウマの名が付く植物などに出会えました。けれどツクモグサやライチョウは出会えなかったので、明日のお楽しみになります。
白馬岳ではなく、剱岳の写真ばかり撮影していましたが、明日は白馬岳の写真を沢山撮影することになります。
夕日が沈むのを見送ったら、就寝しました。