ルート
今回の登山の舞台は尾瀬です。大清水から尾瀬沼とニッコウキスゲが咲く大江湿原を通って、燧ヶ岳へ登ります。その後、尾瀬ヶ原を通って至仏山を登り、鳩待峠へ下山します。1泊2日でも行けそうな行程ですが、山頂の景色だけでなくショウキランやオゼソウなどの植物観察もするため2泊3日の行程です。
まずは夜行バスで大清水へ向かいます。
大清水に到着すると周囲は真っ暗でした。今日の予定は大江湿原でニッコウキスゲなどの植物を観察した後、尾瀬沼を一周します。外が少し明るくなったら、出発します。後30分程待機すれば、低公害車両による乗合タクシーで、大清水から一ノ瀬休憩所まで歩かずに済みます。時間があるので、会津沼田街道を歩いて一ノ瀬休憩所へ行くことにします。
歩くことで見つけられる発見があります。こちらはクモキリソウでした。高尾山では既に咲き終えていますが、尾瀬は標高があり、涼しいのですね。
会津沼田街道はびしょびしょで、一部水路になっています。早くも登山靴が泥まみれになり、浸水してしまいました。低公害車両が走る道路を歩いていくことも可能で、そっちだと靴が汚れず、また何か別の発見があると思います。
ここは、尾瀬を通過する会津若松市と上州沼田市を結ぶかつての交易路です。米や酒、塩、油が運ばれました。1600年に真田信之が、沼田城から会津若松に行くために街道を整備したことが始まりの古道になっています。
一ノ瀬休憩所までやってきたら、古道は終了です。そのまま尾瀬沼まで引き続き向かいます。古道よりも整備されており、とても歩きやすいです。
ギンリョウソウの果実が真上を向いていました。花の時期は横を向いていますが、受粉して膨らみ始めると上を向き始めます。教科書のモデル写真のように、綺麗に真上を向いていました。光合成をしない腐生植物です。
キソチドリ
尾瀬にはラン科ツレサギソウ属の植物が何種類も咲いていますが、素人の私には見分けるのは難しそうです。キソチドリは林床に生え、ホソバノキソチドリは湿地帯に生えるようです。ここは林床です。
花が空飛ぶスーパーマンやマンタに似ているように感じます。マンタの尻尾にあたる距の長さや曲がる方向で、種の識別ができるようです。
岩清水まで来ました。唯一の給水ポイントです。ここら辺にも綺麗な花が咲くようです。尾瀬は900種類以上もある植物の宝庫ですが、いつの時期に、どこら辺で咲くのか事前に調べておかないと、なかなかお目当ての花は観られないように思います。
標高を上げ続け、平坦な木道になってくると三平峠(尾瀬峠)に到着します。木道はとても滑りやすく、滑ると分かっていても、転んでしまいました。その数、約10回です。スケートリンクの上を歩いているようでした。
直前まで転び続け、ようやく三平下(尾瀬沼山荘)まで来ました。なんとか手首を捻挫せずに済みました。尾瀬沼へ行ってみると、燧ヶ岳の山頂が雲に隠れていました。昨日までは毎日雨が降る時間帯があったそうですが、今日から滞在する3日間は雨が降ることはなく、晴天になります。
花が全開することがないサワランです。日本固有種で、この時期の尾瀬では良く見かける植物です。
ホソバノキソチドリ
先程の林床にいたキソチドリと違って、湿原に生えている種類です。こちらは、陸のクリオネと呼べそうな姿です。結構な数が存在していましたが、緑の湿原に緑の花なので、興味がないと見過ごしてしまうと思います。
先程も見かけたギンリョウソウの群落です。林床では数歩歩くごとに別の個体を見かける程、ギンリョウソウばかりです。とっても少なく見積もっても、尾瀬では100万個体は存在するのではと思う程、多く見かけました。
これだけ存在するなら、別の腐生植物が存在しても良いように思えますが、腐生植物のショウキランが広大な尾瀬全体で数ヶ所に点在するくらいです。そんな貴重なショウキランも、年によって出現したりしなかったりするレアな存在です。人が歩ける場所は限られているので、もしかしたら未発見の植物がまだどこかにいるかもしれません。
長蔵小屋に到着しました。今日は側にある尾瀬沼ヒュッテで一泊しますが、受付が午後1時からでした。今回宿泊する尾瀬沼ヒュッテと尾瀬小屋は、山小屋の中では数少ない食物アレルギー対応でした。ただし、事前に確認が必要です。
山小屋の近くではハクサンチドリが咲いていました。個体によって花の色や模様に違いが大きいようです。チドリと聞いて、直ぐに思い浮かぶ植物といったら、ハクサンチドリ、テガタチドリ、ノビネチドリ、ミズチドリです。
大江湿原へ向かう木道や、至仏山など、尾瀬では色々な場所で咲いていました。ニッコウキスゲが咲き誇る大江湿原へ向かいたいと思います。
尾瀬は登山を始めるきっかけとなった場所で、水芭蕉や三条ノ滝を見に竜宮小屋に宿泊した時の体験が、日本百名山の笠ヶ岳への登山デビューに繋がりました。それ以来、尾瀬ヶ原に来たことがありましたが、夏に来たことも、尾瀬の山に登ったことも、尾瀬沼に来たこともありませんでした。
今回の旅は幾つか目的があります。
①燧ヶ岳と至仏山を登頂し、山の景色を観賞する。
②尾瀬沼を一周する。
③食事を楽しむ。
④この時期旬なニッコウキスゲを観賞する。
⑤珍しい植物(ショウキランとオゼソウ)を見つける。
⑥トキソウなどラン科植物を観賞する。
⑦オコジョに出会う。
大江湿原で咲くニッコウキスゲの蜜を吸うクロアゲハです。
コバイケイソウ
ワタスゲは6月に見られる印象だったのですが、この時期にもまだまだ健在でした。他にもヒオウギアヤメやカキツバタも咲いていました。
ツルコケモモの花は、なんだかカタクリを連想させる姿です。
トリカブト属のオオレイジンソウ
遅めの朝食をベンチで取ります。これから尾瀬沼を反時計回りで一周する予定ですが、明日は燧ヶ岳、明後日は至仏山を登るので、今日体力を使い切らないようにのんびりと行きたいと思います。
ニッコウキスゲと燧ヶ岳
大江湿原は花見客が多くいましたが、尾瀬沼を一周するルートは人も少なく、静かな自然を味わうことができます。
タテヤマリンドウ
尾瀬沼は一周6.6㎞あり、標準タイムは2時間20分です。
ホロムイソウの果実を発見です。ホロムイソウ科ホロムイソウ属のホロムイソウで、世界で一属一種という変わった分類になっています。
全身真っ赤なモウセンゴケです。自宅でセファロタス等の食虫植物を育てる程、捕食植物が好きでたまりません。
沼尻平で昼食にします。朝食と共に、おにぎりを一個ずつです。家にいると爆食なのですが、運動しているとお腹が空かなくなります。
ナガバノモウセンゴケ
日焼け止めは何度も塗りなおさないといけないような天気です。特に忘れがちなのが、耳ですね。帰りのバスで、至仏山に登ってあろう乗客の耳が、日焼けで火ぶくれになっているのを見ることになります。
場所によっては、尾瀬沼の側まで降りていけます。風が無かったら逆さ燧ヶ岳が湖面に映りそうです。
三平下(尾瀬沼山荘)まで戻ってきました。尾瀬沼一周完了です。尾瀬沼ヒュッテへ宿泊受付をしに行きます。
尾瀬沼ヒュッテは基本的に個室になります。カプセルタイプの相部屋もあるようですが、個室の値段とそこまで変わらないため、個室を予約しました。
驚いたことに、歯ブラシとお風呂用のハンドタオルがアメニティーとして用意されてました。ホテルのような待遇です。
値段重視でテント泊も考えたのですが、行程的に荷物をデポせずに山を2座登る必要があることや、宿泊者はお風呂に入れるため、テント泊の選択肢はありませんでした。
荷物を部屋に置いて身軽になったら周辺を散策します。ビジターセンターで情報収集したり、売店に立ち寄ったりしました。コンビニやスーパーで売っているアイスが山の中で買えることにびっくりしました。
夕暮れ時になると人の数は減り、陰影が深く濃く現れだします。
午後5時から夕食時間なのですが、その時間になるとお風呂が混まなくなると思い、時間をずらして行動しようと思います。
入浴後の夕食は、ハンバーグ、薩摩揚げ、焼き魚、天ぷら、蕎麦、タケノコの煮物、ポテトサラダ、ニンジンとダイコンのお吸い物でした。美味しく色んな品目をいただきました。尾瀬という山の中では、野菜は高級食材になります。
食後は夕焼けを見届け、就寝の準備をしにいきます。
シーツが用意されていましたが、自前のインナーシーツを持参しています。登山用に購入したものではないため、重量が540gと重たいです。今だと380gなどの軽量のが販売されてます。
明日はいよいよ本格的な登山になります。燧ヶ岳への登山路と下山路は悪路なため、今日のように何度も転倒しないように気を付けます。