寄バス停から雨山峠へ行き、アカバナヒメイワカガミが咲いている大石山へピストン登山する計画です。悲しいことに、標準タイムは11時間であり、寄バス停行きへの始発のバスに乗っても、帰りの寄バス停発の最終バスには間に合いません。
累積の標高差は、登りも下りも2,300mあります。上高地バスターミナルからその日のうちに槍ヶ岳の山頂へ登るよりも厳しい山行になります。正直、遂行できるか分からないため、他の代替プランBとCも容易しています。
プラン一覧
プランA:寄バス停から大石山へピストン登山
プランB:寄バス停からユーシンロッジへピストン登山
プランC:寄バス停から雨山・檜岳・伊勢沢ノ頭を目指す周回登山
プランAと違って、プランBとCは急がなくても最終バスに間に合います。
実際は、結果的にプランBとプランCを組み合わせたプランDになります。本命のプランAからプランDへ変更する過程は、登山において安全とは何かを考えさせられることになります。
まずは、新松田駅から始発のバスに乗って、終点の寄バス停まで行きました。中津川沿いの道路を歩いて、まずはやどりき大橋へ向かいます。大石山への計画は標準タイム通りに歩くと間に合わないため、少し早めに歩きます。雨山峠に到着した時、時間が足りないようだったらプランの変更をしようと考えているため、焦りはありません。
ヤマフジがとても綺麗に咲いています。前日に倉見山へ登山をしており、足に僅かな筋肉痛がありました。普段はストックを使用しないで登山をするのを自分のこだわりにしているのですが、今回は持参して、足や時間がやばそうなら早めに使用したいと考えています。
ミロク山荘を過ぎたあたりで、ギンランが咲いていました。車があれば、やどりき大橋まで車で行くことができ、時間を気にせず大石山へ目指せます。バスは色々と制限がつきものです。
真っ赤なやどりき大橋に到着しました。駐車場はないようで、路肩に駐車して登山をするようです。バス停からここまで往復4.8kmあり、標準タイムは85分です。橋を渡らず、成長の森の方へ進みます。
ウラシマソウを見つけました。浦島太郎が持っているような釣り竿のようなものがあると、マムシグサではなく、ウラシマソウだと今年区別できるようになりました。
日本固有種の常緑針葉樹アスナロです。アスナロと聞いたら、「あすなろ白書」を思い浮かべるのかもしれませんが、「あすなろ銀河」しか知りません。明日はヒノキになろう、今は知識も技術も薄い登山初心者だけれど。
登山日はゴールデンウィーク期間中であり、ネットを見ると西丹沢行きのバスやヤビツ峠行きのバスは大混雑しているようです。塔ノ岳の山頂は、フェスでもやるのかと思わせる程、人で埋め尽くされていました。
それに比べ、寄行きのバスは混雑せず、その乗客の多くが鍋割山を目指していたため、始終静かな登山ができました。
ここから本格的な登山になっていきます。ここから雨山峠へのルートの一部が破線になっている登山地図があります。初めて歩くルートでしたが、問題なく歩けました。何度も渡渉するため、雨後の水量が増量した時は利用したくない登山道でした。
広い河原といったら西丹沢にある用木沢出合とゴーラ沢出合の印象が強かったのですが、ここ東丹沢にもありました。今まで丹沢は、バス利用が容易な同じルートばかり歩いてきましたが、これからはルート開拓もしていきたいと思います。
ミヤマキケマンです。一番最初に紹介しているメイン画像は、この植物の群生になります。普段はあまり気にならない植物だったのですが、渓谷と群生の組み合わせは興味を引くものでした。
鎖場です。今回歩いたルートは、全体的に難易度はあまり高くありません。雨山峠から雨山橋の間は細い道が多く、落ち葉で滑って足を踏み外し滑落しそうな場所ですが、昔通過した時よりも整備されているようで歩きやすくなっていました。
イチヤクソウはまだまだこれからのようです。
釜場平です。歩き始めてここまでで1時間半かかりました。写真撮影と給水以外は休憩していませんが、急激なアップダウンはなく体力は問題ないです。
薄い紫色の花を一度見たら、忘れない日本固有種のクワガタソウです。この時期、丹沢ではよく見かけます。
寄からは想像つかないような、深い新緑の自然が広がっています。
雨山峠まであと少しの所まで来ると、沢歩きになりました。雨後でないため、水量はあまりなく、靴を濡らさずに歩けました。登山者が多く訪れる丹沢の有名ルートでは、枯れたような沢歩きはないため、新鮮でした。。
雨山峠に到着し、少し休憩しながら計画を再考します。峠には富士山の展望とベンチがあります。
無理をして急いだわけではないですが、標準タイムより1時間早く到着できました。標準タイム通りだったら、ユーシンロッジの方へ下らずに、雨山・檜岳・伊勢沢ノ頭の3座を周回し、秦野峠の林道を経由して寄バス停へ行こうと考えていました。
今から標準タイム通りに歩ければ、大石山まで行っても、最終バスにはギリギリ間に合います。休憩や昼食時間を含めて標準タイム以内に歩けそうだと思ったので、大石山へ行くことにしました。
まずは雨山橋を目指します。このルートを歩くのは、2回目で、その時は玄倉バス停からユーシン渓谷を通り、雨山峠から鍋割山を登り、寄バス停へ下山しました。当時は登山を始めてから数か月でした。
私の身長と変わらないくらいのダチョウを発見しました。小さい個体だと小指の高さだったり、生命力の高さを知りました。とりあえず、くちばしで突かれる前に先へ進みます。
玄倉バス停からユーシン渓谷へ通じる玄倉林道が、斜面崩落によって通行止めになってから数年経過し、もともとここを通る登山者が少なかったのに更に少なくなったと思います。それ故に、野性動物の姿を見かけやすいようで、できたらカモシカに出逢ってみたいです。
メイン画像にしようか迷った景色がこちらです。
シロカネソウが咲いていました。別名ツルシロカネソウとも呼びますが、愛称は白金(シロガネ)の貴夫人です。漢字で書くと、白銀(シロカネ)草なんですけれどね。
苔むした壁面には何か植物がいないか探します。今年はまだ腐生植物のギンリョウソウを見ていないのですが、時期的に土壌から顔を出している頃なので、そろそろ見てみたいです。
イワタバコの群生地になっていました。
雨山橋に到着しました。
玄倉林道が通行止めになっている間に、随分と荒廃してしまいました。
苔むした砂防はどこか威厳があります。
こんな所に、カモシカが...! いませんでした。オコジョも熊もいつか見てみたいものです。
玄倉川に架かる橋まできました。
釣り人を2人見かけたのですが、どうやって来ているのか謎です。玄倉林道にう回路があるのかもしれないです。
ユーシンロッジに到着しました。先客は1人だけでした。避難小屋として利用できるようで、ここで1泊して大石山へ登ろうか考えたこともありました。ここでテント泊している登山記録を見たことがあります。
ユーシンロッジの中をお邪魔してみると、とてもじゃないですが、泊る勇気はありません。ユーシンロッジと検索すると、検索候補に「ユーシンロッジ 幽霊」と出てきますが、まさにそんな感じの雰囲気でした。
大石山への急登尾根を登っていきます。ユーシンロッジから山頂までは約1時間半です。色々写真撮影したり、探索しているせいか雨山峠からここまで、そこまで時間を短縮できませんでした。疲労も少しずつたまりずつある中で、このまま山頂を登っても最終バスに間に合うか疑問が残ります。
これから山頂まで登って寄バス停まで戻る道のりは、標準タイムが約6時間20分です。何か不具合が起きたら、ゲームオーバーです。
山という自然の中で、余裕のない登山は楽しめないばかりか、遭難予備軍となり、事故の原因にもなります。せっかくここまで来たのだから大石山まで登りたい気持ちがすごく強いのですが、安全のために撤退する事に決めました。
このまま引き返して、雨山峠まで戻ります。心の中では撤退登山で終わらせたくないのが本音です。今から雨山・檜岳・伊勢沢ノ頭へ行けるかどうか思案します。少しでも時間を短縮できるようにストックを使用することにしました。増水した沢の渡渉以外でストックを使ったのは何年ぶりでしょうか。
12時ぴったりに大石山への尾根を引き返しはじめて、1時間せずに雨山峠へ戻ってきました。マジと書いて本気と読む、スピードです。そんな力があるなら、大石山へたどり着けただろうと思いますが、雨山峠へ戻ってきたことで、心に余裕が戻ってきました。
ここで昼食タイムにして、疲労回復を図ります。
標準タイム通りに雨山・檜岳・伊勢沢ノ頭を登っても、最終バスに間に合うので、向かうことにしました。標高が低いため、シロヤシオが咲いていました。塔ノ岳から丹沢山の尾根や、檜洞丸のシロヤシオは2週間後くらいに咲くでしょうか。
標高1,176mの雨山に到着しました。特に何もないので、留まらずに進みます。
崩落地にやって来ました。雨山峠から秦野峠経由のやどりき大橋までで、すれ違った登山者は1組でした。
市街地がすごく遠く見え、ここで行動不能になりたくはないです。時間的には、既に下山を始めたい頃です。今まで登山をする中で、遅くても16時までには下山や山小屋に到着しておきたい気持ちがあり、ホームの丹沢ならどんなに遅くても18時には下山を完了したいです。それが心の余裕や、山を楽しむ気持ちに意識せずに繋がっていました。
自撮りに最適な撮影スポットを見つけました。あとは顔はめパネルを麓から持参したいところです。
標高1,167mの檜岳に到着しました。ベンチがあったので、休憩します。ベンチに座って足をぶらぶらさせた後、いきなり立つと足にすごい衝撃が走ることがあるのですが、自分の中でベンチあるあるになってます。
ああ、良かった。私の他にも登山道を歩く者がいました。アナグマでした。
酒匂川
標高1,177mの伊勢沢ノ頭に到着しました。
山頂近くの山神峠への尾根を少し降りていくと、丹沢湖と富士山の展望が望めると情報があったのですが、ちょっと分かりませんでした。富士山が薄くなっているので、今日は絶景写真を撮れそうにありません。別の機会の時にでも、探すことにします。
トリカブトの群生地になっていました。
秦野峠までやって来ました。伊勢沢ノ頭から長かったです。急で滑りやすく痩せた登山道でした。登山道はまだまだ続きます。
スピードを上げたまま進み、雨山峠から林道秦野峠まで約1時間半ほど標準タイムより早く到着できました。ここからやどりき大橋までは約5kmの道路です。当初は最終バスに間に合うことを目指していましたが、頑張れば2本早いバスに乗れそうです。
「私は高橋尚子。シドニーオリンピックで金メダルを獲得した高橋尚子。」自称、憑依系山屋なので、マラソン走者になりきって走り出します。私がフルネームを知っている競技者は、他にいないため、この選手を選びました。おかげで、歩くと1時間5分かかる道を、40分で走り終えました。
疲れて足が止まりそうになる度に、サングラスを地面に投げ捨て、気合を入れなおしました。こんなに体力があるなら大石山へ行けたと思いますが、結果論であるため、引き返して良かったと思います。
無事にやどりき大橋まで戻って来られると、人が何人もいたので一安堵です。バスに間に合うように歩き、目標としていた最終より2本早いバスに乗って帰宅しました。1時間に1本のバスしかないので、1本見逃すと長時間の待ちが発生します。
今回の登山は総距離22kmちょっとで、累積の標高差は、登りも下りも2,300mになりました。撤退した大石山を登った場合と変わりない感じです。久しぶりに、色々選択を迫られる山行になりました。怪我も道迷いもなく、何よりの結果です。アカバナヒメイワカガミは表尾根でも見られるので、そっちで観賞しようか、次の登山計画を練っています。
日程表