ルート
今回は植物探しの登山です。丹沢の一部にしか自生していないサガミジョウロウホトトギスを観に行きます。この植物が咲く時は、ビランジも咲いています。
ジョウロウホトトギスは複数の仲間がおり、サガミジョウロウホトトギスは丹沢のみに自生する 絶滅危惧ⅠB類の植物です。その小振りサイズのスルガジョウロウホトトギスは、静岡県の毛無山周辺のみに自生する 絶滅危惧ⅠB類の植物です。そしてキイジョウロウホトトギスは紀伊半島南部(和歌山県・奈良県・三重県)のみに自生する 絶滅危惧Ⅱ類の植物です。
まずは秦野駅からバスに乗って終点のヤビツ峠に到着しました。真夏の丹沢は低山特有の暑さで人気がありませんが、サガミジョウロウホトトギス目当ての登山者が多いのか、1本しかない朝7時台のバスは増便したようです。今回は1本しかない8時台のバスに乗りました。ぎりぎり座れない登山者が僅かにいました。
ヤビツ峠に観光施設「ヤビツレストハウス」が建設されるようで、大山へ行く登山道は50m程迂回する必要があるようです。今回は大山ではなく、表尾根を通って塔ノ岳へ向かいます。
登山道には丹沢の情報看板が複数個所に立てられています。表尾根への道には2ヶ所見かけました。今までまじまじと見てきませんでしたが、内容が定期的に変わっています。
登り始めは、標高が低いため、ものすごく暑いです。風が吹いても、なんじゃこりゃ。熱風でした。登り始めてからそんなに時間がたたずに、顔から汗を大量に噴き出して座り込んでいるグループ登山者を見かけました。どうやら熱中症のようです。汗で溺れているかのような、汗の量が異常でした。
誰でも熱中症のリスクはあるので、塩分と水分補給、クーリングは必要です。今回は、塩キャラメル、塩分チャージタブレット、冷凍水などを用意しています。
標高を上げると涼しい風が吹き上げてくる場所が所々でありました。しかし、蒸し風呂のような場所も沢山あります。視界が良くなってくると、大山の山頂が見えます。
ルツボ
ホトトギス
今回のお目当てであるサガミジョウロウホトトギスとは、同じユリ科ホトトギス属です。しかし見た目はだいぶ異なります。
この白花は、ヤマホトトギスなのか、ヤマジノホトトギスなのか判定は難しいです。花被片の反り返りは平らになる程度で、中心部の柱のようなものには、斑点がなさそうなので、ヤマジノホトトギスだと思います。
三ノ塔まで来ると表尾根の展望が開けてきます。富士山を見る事は難しい天気ですが、目的は景色ではなく花なので、ガスでがっかりする事はありません。むしろ、気温が下がるかもと淡い期待でした。三ノ塔避難小屋で日差しを避けて朝食にします。時刻は既に午前11前です。
定期的に着替えをするお地蔵さんですが、日中は暑そうです。
サガミジョウロウホトトギス
サガミジョウロウホトトギスが2か所で咲いていました。
葉っぱの付き方が、すごく独特な気がします。がけ地に垂れ下がるように生えているので、合理的ではあると思います。
見頃は後半戦なのか、葉の痛みが早そうです。
袋状の花は、ホタルブクロっぽいですが、袋の中はホトトギスっぽい第一印象です。レモンのような色と光沢が綺麗です。盗掘で数が激減したようですが、乾燥と高温に弱いので、栽培は難しい... というか、面倒くさいと思ってしまいました。
蕾の色もレモンの青い時に似ています。
昨今の丹沢の植物問題は、盗掘よりもニホンジカの食害でしょうか。昔は丹沢の植生が豊かだったらしいですが、今は丹沢では絶滅したとか、自生地が1~2か所しかないとか、色々あります。いつかは出会ってみたいカモシカも、ニホンジカによって生息域が少なくなっているようです。
今回表尾根を歩いて気が付いたのは、宮ケ瀬湖が僅かに見える場所がある事です。塔ノ岳から丹沢山への主稜線じゃないと、見えないと思ってました。
ギボウシ
こちらはビランジの生息地です。手の届かない場所に生えています。ビランジと言ったら、高山種で南アルプスだけに分布するタカネビランジがあります。見た目は、ほぼそっくりのようです。
ビランジ
塔ノ岳へ向けて歩いていきます。政次郎ノ頭と新大日の間に廃道になった書策新道があり、そこもサガミジョウロウホトトギスを見る事が出来る場所のようです。どこが書策新道の入口なのか探したのですが、残念ながら分かりませんでした。
家に帰ってから書策新道を調べてみると、表尾根にある書策新道の入口は何となく分かりました。ベンチがあって広い場所です。
ヤブマメ
木ノ又小屋までやってきました。通過せずに立ち寄ります。小屋内に腐生植物のシロテンマの写真が飾ってありました。なんと8月1日に表尾根で撮影されてました。まさか表尾根で見つかるなんて、思ってもみなかったです。
かき氷を注文します。暑くてたまらない日には、とても生き返りますね。
氷は小屋で作っておらず、下から運び上げています。花立山荘でもかき氷が売っていますが、そちらも同様に氷を下から運び上げています。この時期は、売り上げの大半をかき氷が占めているのかもしれないですね、
塔ノ岳で昼食を食べたら、大倉尾根を使って下山をします。
花立山荘です。
今回食べていませんが、依然食べた花立山荘のかき氷です。木ノ又小屋との比較として載せておきます。
マルバダケブキ
マツカゼソウ
ツチアケビ
ツチアケビは大きくて目立つ腐生植物(菌従属栄養植物)です。それでも意外と気が付かなかったりします。この個体の周辺には足跡が幾つもあったので、比較的目立っているようです。それでも、今年何度も大倉尾根を歩いてますが、この個体には今まで気が付いていませんでした。
ちなみに、全体が褐色のツチアケビに対して、全体が黄色いキミノツチアケビも世の中には存在します。光合成をまだやめていない葉緑素がある部分的菌従属栄養植物の中には、光合成をやめて葉緑素がないアルビノ個体がいるのは知ってました。しかし光合成をやめた菌従属栄養植物のアルビノ個体は知りませんでした。
ベニシュスランの種子です。
7月24日にミヤマウズラの葉と茎がベニシュスランの側に生えていたのですが、もう1ヶ月以上経過しているためか、姿はありませんでした。去年の情報を調べてみると、大倉から牛首の間でミヤマウズラが咲いているようです。去年の9月5日で若干鮮度が落ちた個体を見つけたようなので、場所によって咲く時期が違いそうです。
キツネノカミソリ
無事に大倉まで下山して登山は終了です。今回はヤマビルを見かけませんでした。
日程表