ルート
紅葉のシーズンがやって来ました。初日は晴れの天気予報ですが、翌日は曇りと雨、その次の日は雨となっています。1泊2日の工程で今から行ける場所で、紅葉がある場所を探すと谷川岳がありました。
谷川岳は日帰りで行ける山ですが、住んでる場所から電車やバスに乗って行こうとすると時間がかかる場所です。日帰りだとロープウェイの往復使用とロープウェイ駅と谷川岳山頂のピストンなら可能です。それだと時間をかけて来たのに谷川岳を満喫できずに終わります。
そこで今回は行きはロープウェイを使用し、帰りは巌剛新道を歩いて下山します。谷川岳の山頂だけでなく、その先にある一ノ倉岳や茂倉岳まで縦走し、水場がある茂倉岳避難小屋で宿泊します。更に山頂の稜線歩きだけでなく、谷底の一ノ倉沢出合から谷川岳を見上げる景色が有名なので、上から下から両方の視点から紅葉を楽しもうと思います。
事前の情報だと山頂付近の紅葉が見頃になっており、中腹から下は紅葉はまだとありました。
電車を乗り継いで土合駅にやって来ました。この駅は日本一長いモグラ駅で、トンネル状の通路が有名です。ホームから駅の出口まで486段の階段をあがっていかないといけません。登山開始前からバテテしまいます。
無人駅だとは知らずにICカードで来てしまったので、翌日、有人駅の水上駅で精算する事になりました。
土合駅の目の前に谷川岳ロープウェイまで行くバス停がありますが、歩いて行ける距離なのでバスには乗りませんでした。ロープウェイまでの道の途中に、歩いた人だけが見る事が出来る滝があります。湯吹きの滝と言う名で、人口の滝です。
ロープウェイ乗り場である土合口駅に到着しました。既に時間は10:30を過ぎているためか観光客はガラガラでした。
谷川岳の山頂付近にはは谷川岳肩ノ小屋があり、1泊2食で7,500円ほどです。
小規模の避難小屋が点在しています。谷川岳は上信越高原国立公園特別保護地区になっておりテント禁止エリアになっているため、避難小屋の中で唯一水場がある茂倉岳避難小屋は人気があるようです。しかし定員が15名のため、満杯にならないか心配はありました。
また雨が降らないと水場が枯れている事もあるため自宅から水を2日分用意しています。そのためリュックは重たいです。
天神平駅に到着したら、今度はリフトに乗り換えます。
本格的に縦走する場合は朝日岳から始まり蓬ヒュッテで一泊し、谷川岳を目指すルートが人気のようです。谷川岳馬蹄形縦走と呼ばれています。調べてみると朝日岳にある水場の水は黄色かったという情報がありました。また蓬ヒュッテではテント泊が出来るようです。
リフトに乗っているとぐんまちゃんとすれ違いました。ポニーをモチーフとした群馬県のマスコットキャラクターです。
リフトの終点である天神峠駅に到着しました。自分の足で登らずに標高1,500mに行けるのは良いですね。登山客よりも観光客が多いです。朝早く谷川岳に来れるなら西黒尾根か巌剛新道から歩いて登るのが一般的なようです。
右側に見える猫の耳が2つ見える山が双耳峰になっている谷川岳です。左側は万太郎山へ続く稜線です。山頂は紅葉していると情報があったのですが、ここからはそんなに紅葉している印象は受けませんでした。黄色く紅葉していますが、赤い紅葉がないと寂しいです。
谷川岳。可愛らしい姿で左側に見える登山道を見る限り歩きやすそうです。
万太郎山へ続く稜線。凹凸がかっこいいです。
谷の挟んだ向かい側にある朝日岳は標高1,945mあり、日本三百名山に選ばれています。
天神尾根を歩き始めて程なくすると田尻尾根との分岐に到着しました。第一印象としては登山道が滑りやすかったです。
しかし分岐点からはそんなに滑る事はありませんでした。しかし山頂周辺や巌剛新道など石や岩がツルツルしており、非常に滑りやすい道となっていました。滑ると分かって注意しても滑ってしまいます。登山客の靴底で光るくらい研磨され、スケートリンクのようでした。
一番最初の鎖場です。鎖は使うことなく通過できます。
谷川岳の山頂を見ながら登山道を歩けますが、猫耳が見えなくなりました。猫耳姿を見るなら天神峠がおすすめです。
熊穴沢避難小屋に到着しました。ロープウェイの終点から遠くない場所にあるため、利用者がいるのか気になります。
急な登りはロープが張ってありますが、使わなくても大丈夫です。私はストックを使わず腕の力を使用する機会があまりないため、ここぞとばかりに手の力も借ります。
両肩に肩パッドが入っているかのような稜線はやっぱり見ていて時の流れを忘れて見とれます。それにしても秋とは思えない程、日差しが強く暑くて汗まみれです。冷コー飲みたい。
正午を過ぎ、昼食もまだで、宿泊予定の避難小屋までまだまだ遠いです。ケツカッチンなので先へ進みます。
目の前に見える頂上まで行けば谷川岳肩ノ小屋に到着です。とても近く見えるのに、なぜか遠い。持参した大量の水とお茶が少しずつ確実に減って行きます。猛暑のような暑さと重たいリュックで翌日の水が足りるか心配です。この暑さだと避難小屋の水場が枯れていそう。
標高を上げると少しずつ僅かに紅葉しているのを実感できるようになってきました。
登って来た登山道を振り返ると麓にみなかみ町が見えます。本当は谷川岳肩ノ小屋か山頂で昼食予定だったのですが、山頂に到着する頃には昼食としては遅い時間になりそうです。持参したおにぎりで昼食にしました。
天狗の留まり場に到着です。大きな岩があり、展望が抜群です。
急な坂道ではないですが、ひたすら登りが続いて行きます。
天狗の留まり場の大岩が左下に見えます。
天神ザンゲと呼ばれる場所です。ここら辺から谷川岳肩ノ小屋までは階段が整備されています。
山肌の大半を笹が占めているかと思うくらい笹が多いです。笹って紅葉するイメージがなかったのですが、紅葉するかネットで調べてみると、やっぱり紅葉しなさそうですね。
谷川岳山頂の標高は1,977mとそんなに高くないため谷川岳肩ノ小屋まであと少しの所まで来ても暑さは変わりません。
草紅葉の黄色い絨毯。
14:00過ぎに谷川岳肩ノ小屋に到着しました。細長い缶のコーラが300円で売っており水分補給しました。購入する前に、飲んだ後の缶を置いて行って良いか聞いたら、大丈夫とのこと。
なぜ質問したのかと言うと、甲武信小屋でも同じサイズのコーラが400円で売っていましたが、缶は自分で持ち帰って処理しないといけなかったからです。
小屋では「魔の山なんて 誰が言う 味わい深し 谷川岳」と書かれたTシャツが売っていましたが、残りはLサイズ1枚だけでした。このフレーズ好きかも。
谷川岳が魔の山と呼ばれるのは、死者数でギネス記録を保持している山だからです。1931年から統計が開始された谷川岳遭難事故記録によると、2012年までに805名の死者が出ており、世界各国の8,000m峰14座の死者を合計しても637名より圧倒的に多いです。
ただし谷川岳が世界一危険な山ではなく、一ノ倉沢などの岩壁からのクライミングによる登頂での死者が多く、特に天神尾根からの登頂は安全です。
小屋の目の前は万太郎山へ続く尾根が伸びています。今まで紅葉らしい紅葉はなかったのですが、小屋周辺や谷川岳から一ノ倉岳や茂倉岳への稜線は紅葉が素晴らしかったです。
右側の山頂が一ノ倉岳で、左側の山頂が茂倉岳です。
紅葉によって七色のコントラストが生まれています。複雑なパッチワークみたいです。
双耳峰の片耳のトマの耳には小屋から簡単に到着です。標高1,963mありますが、最高峰は標高1,977mのオキの耳になります。展望はどちらの山頂でも変わりはありません。
トマの耳には薬師岳と言う別称があり、「トマ」とは「手前」の意味です。水上・湯檜曽から見て手前にあるから、その名前になったようです。
目の前に見えるピークがオキの耳で、約10分で到着します。
谷川岳の最高峰であるオキの耳に到着です。
オキの耳の別称は谷川富士です。富士浅間神社奥の院がオキの耳がある方に祭られている事に由来します。また「オキ」とは「奥」の意味で、手前の対義語ですね。
山頂や稜線からは朝日岳が谷底まで良く見渡せます。一番右のピークは白毛門で、その左のピークが標高1852mの笠ヶ岳です。そのまた左が朝日岳です。朝日岳や笠ヶ岳と聞くと北アルプスを思い出すかもしれませんが、別の山です。
次は一ノ倉岳へ向かいます。トマの耳の方を見ると紅葉した斜面が広がっています。今、山頂の見頃を迎えているように感じましたが、もっと紅葉が強くなるそうです。
富士浅間神社奥の院の鳥居が見えてきました。ここに富士山が祭られているのは初耳でした。なぜ奥の院かと言うと、谷川岳のすぐ麓にある谷川温泉の奥に富士浅間神社が鎮座しているからです。
真っ赤な紅葉が綺麗です。紅葉している場所とそうでない場所が明確に分かれているのは植生の違いでしょうか。
鳥居をくぐって神社でお参りをしておきました。明日の下山は巌剛新道を通るので安全登山で行きたいです。巌剛新道はコースの上部で西黒尾根と合体して1つのルートになっています。西黒尾根は日本三大急登の1つでもあり険しいようです。
徐々に標高を下げていきます。後ろを振り返ると双耳峰が見えます。谷川岳から一ノ倉岳へ移動するって事は、山のピークから別の山のピークへ向かうために標高を一度下げて、そして標高を上げる。つまり、暑苦しい中でこの先に登りが待ち構えているって事です。標高下げた分登らないといけないと考えるだけで、標高下げながら気分も下がりそう。
ノゾキと書かれた場所まで歩いてきました。ぶら下がった飯盒が何のためにあるのか不明で気になりますが、まずは崖の下を覗いてみましょう。
谷底が見えますね。足元は尾根道にちゃんと立っており危なくないはずですが、恐怖で体が縮こまってしまいます。
真っ白い岩の塊みたいな物体は雪なのか岩なのか区別がつきませんでした。あんなのが山肌から剥がれて落ちてきたら体がフリーズしてしまう。
標高を下げて、すぐ目の前に登り返しが待ってます。ここまでにツルツルした岩で滑りそうになったり、鎖を使ったり色々ありました。
15:00を過ぎ、秋になって早くなった日没が気になってしまいます。暗くなってからの行動は避けたいし、小屋には遅くても16:00までには着きたいですが厳しそうです。
ただ黙々と一ノ倉岳の山頂へ登って行きます。
山頂付近になるとなだらかで岩がない道になりました。ずっとこんな登山道だったら楽ですが、それだとつまらないですね。
標高1,974mの一ノ倉岳に到着です。中芝新道からは下山できますが、整備されておらず藪漕ぎになってしまい、道を失いやすいためオススメできない道です。あえてここを使う理由はないと思うので、ここを使用する登山者はほぼいない気がします。
土合口駅から歩いて行ける一ノ倉岳の谷底には一ノ倉沢出合と呼ばれる場所があり、観光客に人気の撮影スポットになっています。谷川岳を見上げた写真はたいてい一ノ倉沢出合で撮影されます。
山頂にはとても小さい一ノ倉岳避難小屋があります。
中には先客は誰もいませんでした。とても狭く立つ事もできません。3~4人が寝ころべばもう満員になるスペースでした。ここは本当の意味での避難で使用する小屋かもしれないですね。
翌朝ここを訪れてみると、誰かが泊まった形跡がありました。
一ノ倉岳から見た朝日岳です。谷川岳から見た景色と変わらないですね。
谷川岳と異なる点は、武能岳の方の景色も見れます。双耳峰からは一ノ倉岳の裏側にある武能岳は見えません。
歩きやすい登山道をなだらかに下ると金色の台地に到着しました。黄色い草紅葉が沈み始めた太陽の光を浴びて輝いています。目の前に見える山は茂倉岳です。一ノ倉岳山頂からのコースタイムは20分と近場です。
午前中の草紅葉はそこまで綺麗でありませんでしたが、金色に輝くと美しさを感じます。なんとか陽が沈む前に茂倉岳避難小屋まで到着できそうです。
歩いてきた道を振り返ると、手前が一ノ倉岳で奥が谷川岳です。赤い紅葉は谷川岳だけで、一ノ倉岳や茂倉岳は黄色い草紅葉がメインのようです。隣り合う山でも植生がはっきりと分かれていました。
標高1,978mの茂倉岳に到着です。今回縦走した3つの山の中で茂倉岳が一番高い山になります。武能岳方面と茂倉岳避難小屋がある土樽駅方面への分岐点になっており、茂倉岳避難小屋の方へ下って行きます。
ウツボグサが花が落ちながらもかろうじて咲いていました。今回の登山で見かけた花はこの時期なので少ないですが、他にダイモンジソウやトリカブト、コウメバチソウなども見かけました。
茂倉岳山頂から下り始めてすぐに茂倉岳避難小屋が見えてきました。
大きい建物が寝泊まり可能な小屋で、小さいのはトイレです。一ノ倉岳避難小屋と違って15名程宿泊可能でトイレと水場付です。なので緊急避難するために利用するよりも、素泊まり小屋として利用されてます。
小屋からは谷川岳は見えなくなってしまうので、最後に見納めです。赤い紅葉は近くで見た方が綺麗だと思いました。遠くからだと赤い色が他の色に混ざって濁ったり朱色に見えます。
茂倉岳避難小屋に到着です。一番最後に到着した宿泊者になりました。宿泊者は全員で9人です。水場はなんと枯れておらず結構な量が出ているとのこと。
小屋の中は1つの大部屋ですが、柱によって複数のセクションに区切られており、1区画に2人で、とてもゆったり泊まれて定員15名でした。混雑した山小屋みたいに1枚の布団で2人の狭さだったら25~30名程宿泊できそうです。
水場は小屋から下って1分程の場所にありました。足元は泥んこで滑ります。水質は透明で味は美味しかったです。
まずは寝床を設置します。今回はエアーマットを持ってきました。ジャバラマットと違って、寝心地抜群です。
夕暮れになって来たので、外に出て料理を始めます。
お湯を沸かしている間に写真撮影タイムです。こちらの方角は六日町や十日町があります。夜はここから町明かりや関越自動車道の照明が輝く夜景が見れます。
目の前に見える稜線は吾策新道です。真ん中の一番高いピークは万太郎山だと思います。その奥にある平標山はお勧めの場所だと今日すれ違った登山者が教えてくれました。
小屋の周辺は紅葉とは無関係の笹だらけです。お湯もそろそろ沸くので、料理に戻ります。今日のメニューは梅がゆと牛筋煮込みとラーメンです。
なぜ梅がゆかと言うと、前に尾西食品アルファ米12種類全部セットを購入し、最後まで梅がゆが残っていたからです。美味しそうに見えないですが、12種類全部セットだと割安なので買ってしまった始末です。お湯を少なめにして、お粥でなく柔らかご飯にしましたが、美味しくありませんでした。
牛筋煮込みは温めるだけです。こちらは牛筋が歯ごたえあって美味でした。
ラーメンは空になった梅がゆの袋にお湯と麺とスープを入れて、沸いたお湯の中に袋を投入するだけです。鍋が汚れずに済むので後始末が簡単でした。味は普通のラーメンです。
今日は星空が綺麗に見えそうです。谷川岳ロープウェイは天空のナイトクルージングと題して夜も期間限定で運営されます。プロジェクションマッピングされた天神平と異なり、茂倉岳避難小屋ではありのままの自然の中で星空観賞になります。
宿泊者の半数以上が寝床に潜った頃、無数の星が夜空に輝いていました。流れ星も見た後、就寝しました。