今日は淀川登山口から宮之浦岳へ登山し、新高塚小屋で宿泊します。登山に持って行かない荷物は下山時にもう一泊する民宿志保に預かってもらいます。
淀川登山口まで行くバスはなく、手前の紀元杉に行くバスはあります。しかし紀元杉から淀川登山口まで徒歩30分かかり、一番早いバスでも紀元杉には10:27着と遅いです。
新高塚小屋だけでなく淀川小屋にももう一泊するならバスでも大丈夫ですが、1泊2日の工程なら朝一のタクシーで淀川登山口に行く必要があります。
事前に屋久島交通タクシーに予約を入れ5:00に民宿に来るように頼んであります。そこから約1時間程かけて淀川登山口へ向かいました。料金は5500円前後です。
登山口には入山協力金を入れる箱があります。山中で宿泊の場合は2000円になります。タクシーの中で車道にいるヤクザルを沢山見かけました。子供サイズのように思えた姿は実は大人なんだそうです。
途中、紀元杉を見ていくかどうか運転手に聞かれたのですが、明後日屋久島周遊バスツアーのやくざる号に参加し、紀元杉を観光するため遠慮しました。
まさか50年に1度の豪雨で紀元杉が見られないなんて思うはずもなく。
久しぶりの55Lのリュックを背負っての登山です。登山口と山頂の高低差は単純に571mで、山頂と新高塚小屋の高低差は単純に435mです。きつそうには見えない値ですが、小屋まで距離は12kmで7時間40分のコースタイムなのでアップダウンが色々ありそうです。
屋久島はユーラシアプレートの下からマグマが貫入し、海底堆積物の下で冷えて固まってできた花崗岩が隆起して出来ました。なので島のほとんどが花崗岩であるため植物は下に根を張る事は出来ずに横に広がります。
登山をするとその事が良く分かる景色が広がっていました。
屋久島では月に35日雨が降ると言われる程雨が多く湿気が多いです。そのため苔むした世界が広がっています。
屋久島と言ったら屋久杉が有名で、縄文杉は推定3000年以上生きた屋久杉に名付けられました。
花崗岩の上では栄養が乏しく根を下に張れないため成長速度が遅く何千年も生きることが出来た個体がいました。また油を蓄えることで雨による浸食を防ぎました。
屋久杉は年輪がぎっりし詰まっており、油分も多いため建築材に重宝され、平木と呼ばれる屋根材に利用されることが多かったです。江戸時代、島民の薩摩藩への年貢は米ではなく屋久杉の平木でした。
明治時代になると島の90%以上が国有地とされ、島民による伐採が制限されました。明日歩くトロッコ道や小杉谷集落跡は国の所有物になった屋久杉を伐採し運搬するために造られた場所でした。
小杉谷集落跡の周辺の屋久杉は国有地される前、薩摩藩によって今まで保護されて伐採されていなかったため多くの良質な屋久杉が残っていた場所だそうです。
今歩いている場所は小杉谷集落跡とは違う場所ですが、淀川登山口から数十分歩いただけで屋久島特有の自然を堪能する事が出来ます。
淀川小屋に到着です。ここで菓子パンの朝食です。水場やトイレがここ以外にも数か所あり、便利な山旅です。。
小屋の側にあったこの川の水は透き通っており、飲めるそうです。抵抗ある人はホースから水が出ている水場もあるので、そちらを利用しても良いと思います。
小屋で出会ったガイド1人女性2人の団体は淀川登山口から登山し、新高塚小屋で1泊、荒川登山口で下山するそうです。
食事は調理器具や材料の運搬から調理までガイドが実施し、シェラフやジャバラマット等のレンタルと送迎付で1人4万円はしたそうです。登山はお金がかかるものですね。
登山道は整備されており、とても歩きやすいです。雨で濡れていますが木道は滑り止めの板が付いてあったり、花崗岩は濡れても滑りません。
ただ、露出した根っこが縦横無尽に広がっているため、足を引っかけて転ばないように注意が必要でした。
木々に張り付いた苔に生命力を感じます。苔と言うとテラリウムなど観賞用の用途を思われる人が多いかもしれませんが、苔は焼いたり揚げたりして食べる事が出来ます。意外と美味しいみたいです。
今回5日目に白谷雲水峡に行く予定だったのですが、50年に1度の豪雨で通行禁止になってしまいます。やくざる号のツアーで行く予定だったヤクスギランドも中止になってしまうのですが、きっと今歩ているような景色なのかもしれないですね。
ちなみに、家に戻ってから気が付いたのですが明日荒川登山口に下山せずに白谷雲水峡に下山する事が時間的に十分可能だった事に気が付きました。大体1時間程長く歩くだけで白谷雲水峡のバス停まで行けて、バス時間も余裕があったので惜しい事をしました。
まさか豪雨で白谷雲水峡に行けなくなるなんて当時は思っていませんでした。
あんなに高い場所にある木の枝にびっしりと生えた苔はどうやって生えたのでしょうか?くねくね曲がった枝と体毛のような苔が龍を連想させます。
土でも岩の上でもなく木の幹に着床した植物に生命力を感じます。
木に巻き付いている枝は絞め殺しの木と呼ばれる植物です。屋久島に生えている絞め殺しの木はガジュマル、アコウ、ヤマグルマがあります。
ヤクシマシャクナゲが1か所だけ咲いていました。他は蕾すらなかなか見つけられない程です。5月末~6月上旬が時期で、去年は5月中旬でも咲いていたようですが、今年は例年通りのようです。
雨が少し降ったり止んだり繰り返してます。最初はレインコートを着ていたのですが、すぐに蒸れて暑苦しかったので脱ぎました。登りは発熱量が凄いので、余程の雨でない限りシャツ1枚で進んでいきます。
平熱はすごく低く末端が冷え性なのになぁ(´-`).。oO
今日の天気は曇りで展望所からの景観は残念です。この調子だと山頂もガスってて何も見えない山旅になりそうです。下山したら登山バッジでも買って自分を慰めよう。
明日は雨ですが、縄文杉から荒川登山口のルートは展望がなく、屋久杉の巨木を見る観光地になるため、天気に景観がそれでも左右されません。
小花之江河に到着しました。湿地帯はなぜか癒されます。ガスってても楽しめるし、山頂の景色とは違った魅力があります。
水芭蕉、ワタスゲ、ニッコウキスゲ、草紅葉に逢いたくなります。こじんまりした湿地帯はプライベート感があって良いですね。尾瀬の人混みといったら渋滞して自然を見に来たのは人の頭を見に来たのか分からないくらい。
発色鮮やかなこの苔は何でしょう?雨の良い所は苔がみずみずしくなって綺麗に見える事ですね。
木の上にホシガラスがいる!って思ったら木の一部でした。登山を開始してからなかなか動物には出会えません。ヤクシカとヤクザルには目と鼻の先で出会いたいのですが。
花之江河に到着です。小花之江河の方が趣があるように感じました。ここから
後方にあるとトゲトゲしいような見た目の木がアコウです。厳しい自然環境の中で厳しい生存競争がありそうです。
ツツジが咲いていました。ツツジはどこにでも咲いているイメージですが、寒さや暑さに強く栄養分の乏しい場所でも大丈夫なので、生命力半端ないですね。街中歩いてれば必ず見かけるツツジ恐ろしや。
苔の森っていう感じがしますね。もし苔が岩に張り付いていなかったら見た目の印象が変わってしまうくらい苔には不思議な魅力があります。
黒味岳への分岐を通り過ぎ、進んでいくとロープの箇所が複数出現します。本当は黒味岳へ行こうと思っていたのですが、あいにくの天気で展望がないのでパスしました。
実は重たいリュックを背負っての登山は今年初めてだったので、最初の3時間くらいは楽々登山だったのですが、次第にリュックの重さに体が耐えられなくなってきました。
10日前に愛鷹山へ登山した時は終始そんなに疲れなかったので、安心していたら愛鷹山へは思い装備せずに登っていた、今回と勝手が違う事に今になって気が付きました。
勾配のある場所をロープを利用して登ると、ロープに浸み込んでいた冷たい水がグローブを水浸しにして、手がびしょびしょになってしまいました。
結構手が冷たいのですが、代えのグローブは持ってきておらず。命取りにはなりませんが、1つお勉強をした次第です。
ひらけた場所に出たので、ここで休憩です。山に囲まれたような場所で、ガスってなければ良い眺めだったと思います。
ガァ━・゚・(;-□-o)・゚・━ン
雨がほぼ降っていないだけ、まだましですね。感謝ポイントを見つけたらポジティブに登山再開です。
宮之浦岳と言うと岩が山肌に点在しているイメージがあったのですが、それを少し味わえただけでも儲けものです。
ここはもしかして群馬県にあると言うチャツボミゴケ公園?なんて訳ないですが、少しテンションが上がる苔の群生地でした。
ふむふむ、(・_・D。どの山が何の山なんでしょう?GPS付のマップをスマホで見れば良いのですが、展望が残念なので見る気にもなれませんでした。(ポジティブ大事だよ?)
こちらがかの有名なイースター島からはるばるやって来たモアイ像...ではないですね。モアイ像は日本の宮崎以外にもあった!号外スクープものですね。
標高1,867mの栗生岳を通過します。祠がありました。なんだかリュックの重さが半端ない。まだまだ新高塚小屋まで距離と時間があり、行く先が思いやられます。宮之浦岳山頂で昼食を取れば、水と米が減って気持ち楽になるので我慢です。
なんだか恐竜の卵みたい。そういえば恐竜の卵って大きさどれくらいなんだろうと疑問に思い調べてみました。
現在見つかっている最も大きな恐竜の卵は、長軸の長さで最大60cmに達するマクロエロンガトウーリトゥスと言う種類のようです。
この岩が恐竜の卵に見えたのは気のせいじゃないかも。
リュックの重さに耐えながら登り続け、標高1,936mの宮之浦岳の山頂に到着です。重たいリュックを下せる事に感激してしまいました。展望はガスってて皆無です。
昼食はチキンライスで、お湯を沸かしてアルファ米にお湯を投入するだけで完成する簡単調理です。
普段宿泊する登山の場合は、テントは持参しても食事は山小屋で提供されるものを食べるため、菓子パンは持参しても調理道具と食材は持っていきません。日帰りの時は調理器具を持っていきますが、アルファ米ではなく当日のご飯を持っていくため、今回が初のアルファ米です。
お味は化学調味料で作ったチキンライス味ですがお腹が空いており美味しかったです。お湯の量が少なかったのか、ふやかす時間が待ちきれなかったのか固めのご飯でした。その方が味が濃くて疲れた体には癒される味です。
昼飯を食べ終わって休憩していると急にガスが一部消えて景色が見えました。慌ててカメラを取り出してパシャパシャ開始です。
すぐにガスに覆われてしまったのですが、後にも先にもガスが部分的に途切れたのはこの時だけだったのでとってもラッキーでした。
もうちょっと奥のガスが消えてくれてたら...けれど、雨が降らないだけ感謝ですし、まして景色を少しだけ拝めた事もさらに感謝です。
フィリピンのチョコレートヒルズみたいな山肌でしょうか?あっという間の景色を見終わり、ワンモアチャンスあるか少し待っていたのですが、駄目そうなので山小屋へ向けて出発します。
今回登山をしていて、咲いている花の種類や花そのものが少ないと感じました。山に登るなら景色も植物も食事も楽しめたら最高ですね。
登山を開始して8時間は過ぎました。ちょくちょく木道や岩に座って休憩しないといけない程疲れる中、目の前に食事中のヤクシカの雄がいました。一定の距離を取りながらも逃げ去る事のない姿は人馴れしていますね。
標高を下げると次第に木々の中に景色を塞がれていきます。アコウの独壇場って感じです。根っこだらけで本当に花崗岩台地なんだと改めて実感します。
ヤクシマテンナンショウです。実は真っ黒な土台に真っ赤な実が沢山くっついてインパクト抜群なのですが、この姿を見ただけだと想像できないですね。
木道に巨大な岩が転がってきたようです。何とか通れたのですが、実は山頂に行く途中でリュックが大きく通過できない狭い場所が1か所ありました。その時はリュックを頭に乗っけて通りました。
足が痛くなって休もうか、山小屋は目前だから休まず進もうか格闘しながら進んでいきます。新高塚小屋は50人前後で、どれだけの人数がいるのか分かりません。後ろにはまだまだ新高塚小屋に宿泊予定の人がいるはずなので、まだ満杯になっている事はないだろうけれど、できれば角で寝たい。色々な考えがよぎります。
己の精神力と戦う中でようやく新高塚小屋に到着しました。休憩入れて9時間40分で今日の目的地へ着。久しぶりの装備と、久しぶりの登山時間でへとへとです。小屋にささと入って寝床確保したら仮眠しました。標高が低いのですぐに寝ても高山病にならないのが良いところです。
夕飯は田舎ご飯にレトルトカレーをかけたカレーライスです。お皿を使用せず持ち運び楽、後始末も楽、調理も楽。疲れた時にめんどくさいのはお断りです。菓子パンも食べてお腹一杯です。
こちらが小屋の中です。なんと運が良い事に角っこをゲットしました。1階なので、いちいち階段を昇り降り不要なのもラッキー。
寝床はこちらです。テント用のグランドシートの上にエアーマットを敷いて、シェラフでまあまあフカフカです。この時はまだスペースに余裕があったのですが、日が暮れてからも人が到着し、最終的には満員御礼になりました。
テント伯を始めたころはジャバラマットを使っていたのですが、狭い登山道を歩いてる時や、夜行の登山バスに乗るため東京の駅の構内を移動する時に結構邪魔になっていました。今回がエアーマットデビューになりました。
小屋外のトイレに行くとヤクシカの雌が2匹いました。明日は今日より荷物が軽いので何とかなると良いですが、筋肉痛や今日の疲労が残っていたら大変な事になりそう。いびきが始まる前に就寝です。