山岳における紅葉の名所と言ったら多くの人が涸沢カールを思い浮かべるのではないでしょうか?
涸沢カールは北アルプスの穂高連峰に囲まれ、氷河の侵食によって造られたお椀の底のような窪地です。夏のお花畑や冬・春の雪景色も綺麗と評判ですが、秋の紅葉は想像を絶する鮮やかな世界です。
登山を本格的に始めた去年の夏から既に行きたい気持ちが強かったのですが、自分の体力で行けるのは不安だったため去年の秋は断念してしまい、一年越しです。
夜行バスに乗って上高地バスターミナルに到着しました。朝早いため河童橋には誰も人がいません。明神へ向けて出発です。
明神に到着。
涸沢カールへのルートは初心者コースで上高地から横尾へ行き、そこから涸沢カールへ向かいます。横尾までは平坦な道で、涸沢カールまでは滑落の危険など全くありません。体力のない人は横尾で一泊しますが、上高地から1日で涸沢カールへ目指しました。
徳沢への道から見た紅葉した明神岳
今回が初めての涸沢カールですが、2泊3日の予定をしており、時間がたっぷりあるため2日目は涸沢カールから奥穂高岳へ登頂する計画を立てました。穂高連峰を歩いた事がないので楽しみです。ついでに奥穂高岳のすぐ側にある涸沢岳にも寄り道してみたいと思います。
奥穂高岳へはザイテングラートと呼ばれる滑落事故が発生した事がある岩尾根を通過するためヘルメットを用意しました。
台風の影響なのか道が修復中になっており、迂回路を通ります。また台風によって紅葉が例年より残念な結果になってしまっていると聞いたので心配です。
徳沢に到着しました。今回はテントを持参しており山小屋へは泊まりませんが、食料や調理器具を持ってくるのは重いため食事は山小屋でするつもりです。
新村橋に到着しました。横尾へは行かず、ここからパノラマコースを通って涸沢カールへ行く事も出来ます。パノラマと言う名前だけあって絶景が見られるようですが、難易度があってこのルートを通る人は僅かなので行きはやめておきました。
もし帰りに天気が良く、余力があるならパノラマコースを通ってみたいと思います。(それが恐怖の始まりとは今は知る事もなく...)
無料の水場は上高地、徳沢、横尾、涸沢カールと数が多いため水は横尾まで常に600ml入りのペットボトル1本だけ所持し、他は空のペットボトルを所持しました。横尾からは次第に登りが始まり涸沢カールまで水場がないため空のペットに水を補給する計画です。
横尾で持参したパンで朝食。いつも持っていくのはヤマザキパンの薄皮ピーナツパン(5個入)です。食欲がない場合でも食べられる好物です。
横尾大橋を渡れば涸沢カールへは5.2kmの一本道です。ここまで約11kmです。それより半分の距離ですが登りの登山道となっており同じ位の時間が掛かります。
登山道は狭く紅葉の見頃を迎えていたため、涸沢カールから下山して来た登山者とずっとすれ違い続けます。時間通りに通行するのは難しいように思いました。
台風の影響なのか木が折れています、
左手に屏風岩が見えてきました。国内最大と言われる垂直の岩壁で、ロッククライミングの名所です。
本谷橋では大勢の登山客が休憩していました。ここから本格的な登りと、本格的な紅葉の始まりです。
岩の上に造られた自然のテラリウムがとても印象的です。苔でなく木々で構成されておりスケールが異なります。
紅葉のトンネルを進んでいきます。これでも台風で葉が痛み、だいぶ落葉しています。
登山初心者に優しく、ここまで整備された登山道は驚きでした。安心して登れますが、落石には注意ですね。
前を向いても後ろを振り向いても幾つもの紅葉したカール地形が目立ちます。今見えているのは涸沢カールではないですが、それでも見劣りしないと思います。
暫く登り続けると、目の前に見えてきたのは涸沢カールの上部にある奥穂高岳です。ザイテングラートも見えています。そうとは知らずに歩いていました。
ここまで来ると目的地である涸沢カールがどこにあるのか知らなくても理解できます。奥穂高岳の右側には涸沢岳と涸沢槍が見えています。
奥穂高岳と涸沢岳に登る計画をしていても、実際に登ってみないと、どこがどの山なのか、どこがその山の山頂なのか分かりにくいものです。この時は涸沢カールが目の前にある事くらいの理解度でした。
歩いた道を振り返ると、右手に見える山は屏風岩で、一番奥にちょこっと顔を覗かせているのが常念岳がある方の山の稜線でしょうか。ここで最後の休憩をして、ラストスパートです。
ダケカンバの黄色だけでなくナナカマドの赤も良く映えています。紅葉に夢中になって浮き石で足を挫かないように注意ですね。
(´ε`*)
いつまでもいたいですが、もし今日が週末だったら早くしないとテントの下に敷くコンパネが全てレンタル済みで、テント場で借りれなくなってしまいます。地面が石や岩でゴツゴツして眠れなくなるなんて恐ろしいですね。
涸沢小屋と涸沢ヒュッテへの分岐に来ました。テント場はどちらからでも良いですが、ヒュッテの方から向かいます。
涸沢ヒュッテの直下に新村橋へ続くパノラマコースがあります。注意書きには崩落個所が多いため健脚者で熟練者のみ通行可と書かれています。
涸沢ヒュッテに到着しました。建物が幾つもあり、小さな村の一角を再現したような規模でした。ここの名物はおでんで、テラス越しで紅葉を眺めながらおでんをビールで流し込んだら最高ですね。
涸沢小屋とどちらが紅葉を観賞するのに良いかといったら、涸沢ヒュッテに軍配が上がります。特に朝焼けのモルゲンロートは涸沢ヒュッテからしか綺麗に見れません。
午前中にテント受付場に到着しましたが、受付時間は13:30~17:00なので、先にテントを設営します。コンパネも先に借りて大丈夫で、後で設営料金とコンパネレンタル料金を支払います。
テントを上手く設営するスキルがないのですが、何とか出来ました。目の前の白っぽいテントが我が家になります。
涸沢カールを間近に見ると岩がゴロゴロしているだけで、木々が少ない事を知りました。お椀の形状だけあって、上部に行く程傾斜がきつくなっていますが、ここから奥穂高岳へ安全に行けるのか少々心配です。
涸沢カールの略図
今日の夕飯と明日の朝食は涸沢小屋で食べる事にしていたので、予約をしに行きます。こちらはこぢんまりしています。
昼食は涸沢小屋でスープ付きカレーを注文しました。量は少なめですが、とても美味しいです。カールを間近で見ながら飲食出来ます。
疲れた体に嬉しいアイスは甘めが少なくさっぱり味です。山小屋と言うと栄養補給のためにしょっぱすぎたり甘すぎたりするのが良くあるため、それが苦手な人におすすめです。
テラスで休憩していたら、ヘリコプターが目の前に近づいてきました。荷物を山小屋へ届けに来たようです。時間が沢山あるため、テント受付を済ませ夕飯まで涸沢カールを探索しました。
涸沢小屋の夕食メニューは豚ロースステーキでした。毎日メニューが変わるため、連泊する人にとってはありがたいです。山小屋によっては毎日同じメニューの場所もあり、燕岳の燕山荘では2回宿泊した事があるのですが、2回とも全く同じメニューで驚きました。
夕食はとてもとっても美味しかったです。特にお米は今まで食べた山小屋の食事の中で1~2位を争います。翌日に涸沢ヒュッテで夕食を食べたのですが、涸沢ヒュッテの食事は味は良いですがご飯と味噌汁以外は全て冷たいです。涸沢小屋は冷たくなかったのが大きな違いです。
ただ、一番美味しかったのは涸沢カールのお水です。どちらの山小屋でも無料で給水する事が出来ます。食後はテントに戻って早めに就寝しました。