翌朝は薄い雲に太陽が隠れながらも、日の出を拝む事ができました。逆光でシルエット姿になった槍ヶ岳の穂先も迫力があります。日の出と朝食開始時間が被るため、日の出を見終えると早々と山荘へ戻っていく人が多かったです。
また、槍ヶ岳の穂先で見ようと登り始めるも登り切らずに日の出を迎えてしまい太陽が顔を出す瞬間を見られない登山者がいました。
今日の主なルートは槍ヶ岳山頂→大喰岳→中岳→南岳→天狗池→槍沢ロッヂになります。通過する各山のバッジは南岳小屋で販売しているので、買っていこうと思います。
朝食は質素な感じですが、ご飯とふりかけおかわり自由なのでお腹は満たせます。
朝ご飯後の穂先は人がとても少なく、自分のペースでのんびり登る事ができました。前日登ったから十分な人や朝早く発つ人、時間に余裕がある人は少し休憩してから登る人などいるため、狙い時でした。
穂先を上る途中にもお花畑がありました。植物の生命力を感じます。昨日も見かけたのですが、多少の渋滞の列で、あまり写真を撮る事ができませんでした。
昨日は全て自力で登って降りる事ができなかったため、今回は誰からもアドバイスなしで登ります。
登りで一番怖かった場所がここです。このハシゴを登ったら、どこに手を伸ばし、どこに足を置けばよいのか疑問に思ったら、私と同じ岩場初心者です。小さな輪っかと岩から突き出た釘の様な太い棒が、手でつかんだり、かつ足を置く場所になってました。
初めて見た時は、冗談かと思いました。ここを通過するのは2度目ですが、すごく緊張します。
やっぱりしがみ付きながらハシゴを登り終えると、頂上に到着です。1人で登り切れました。今日はこの稜線をずっと歩いて行きます。
雲はないのですが、遠くまで澄んでいないため、遠くの山々はぼやけてます。燕岳の方が特にぼやけており、山の輪郭が分かりませんでしたが、それでもこれだけ晴れてくれたので、ありがたい事でした。
昨日ガスっていた笠ヶ岳の方もちゃんと見えます。笠新道をくたくたになりながら行きと帰りを往復し笠ヶ岳に登った記憶がよみがえります。そんな大変だった山を見下ろせるのは変な感覚です。
槍ヶ岳山頂からは360度の絶景が広がりますが、穂先に登らなくても、槍ヶ岳山荘周辺は既に3,000mの標高であるため、絶景をどこからでも観れます。高所が本当に苦手な人には、穂先なしの槍ヶ岳登山をお勧めしたくなる景色でした。
十分に満喫したら、穂先を降りて行きます。人が少ない方がなぜか緊張してしまいます。人がいない方が人に危害を与える心配はないのに、群れている方が安心って面白い心理だと思います。
昨日足の置き方が分からなかった場所は無事に通過する事ができました。やっぱり恐怖で体がこわばってしまいます。普段の登山では足を使っても肩や腕は全く使わないので、昨日の穂先で肩こりになってしまいました。鎖に必要以上に強くしがみ付いていたりしていたんだと思います。
ゆっくりペースで進みながら無事に山荘まで辿り着くことができました。子槍を見てみると、なんと登っている人がいました。いつか登ってみたいけれど、絶対に登ってみたくない場所。ジェットコースターも乗ってみたいけれど絶対乗りたくないので、絶対に子槍へは行けなさそうです。
白いイワツメクサのお花畑の中にエイリアンの卵ならぬ、トウヤクリンドウを見つけました。なんか我が物顔で主役を演じているように見えます。
ここから南岳までは4kmです。給水やら休憩やらリュックの中身を最終確認し、南岳の方へ出発します。
昨日一杯だったテントは既に空き地になっています。目の前に見えるのが標高3,101mの大喰岳です。「おおくいだけ」って読むのかと思いきや、正しくは「おおばみだけ」と読みます。知らないと読めない。(笑)
稜線歩きは、頑張って山を登ったご褒美のように感じます。景色を遮る木々もなくどこを観ても飽きる事のない雄大な山々を観賞しながら空中散歩する非現実的行為に心躍りながら、足も軽くなります。
稜線に登らずとも楽しめてしまいます。同じ時間帯で槍ヶ岳山荘からこっちに来る登山者は数人しか見かけなかったので、ほぼ貸し切り状態です。
好きなペースで歩き、好きな時に写真を撮り、好きな時に休憩する。芋洗い状態や団体登山とは違った楽しみが個人登山にはあるため、病み付きになりました。
そんなこんなで、直ぐに大喰岳(おおばみだけ)に到着しました。大喰岳や中岳、南岳は槍・穂高連峰の一峰で付属的な山とみなされ「…百名山」などに名を連ねることが無いので、槍ヶ岳に登ると決めるまで存在を知りませんでした。
山頂は、ほぼほぼ平坦な土地が広がっており、何か球技スポーツができそうな広さでした。
タカネヤハズハハコが沢山咲いていました。肉厚で白っぽい葉が特徴的でサボテンを連想しました。
中岳へ向かいます。
8月なのに雪が残っており、時々吹く風がすごく涼しいです。家に帰ればクーラー必須の生活が待っています。
ヨツバシオガマ(紫)とミヤマリンドウ(青)、タカネヤハズハハコ(白)がコラボレーションしてました。
誰かが雪だるまを作って置いて行ったようです。枝がないので、両手がないですが可愛らしい。
雪がある場所まで少し降りて、雪をにぎにぎしてみました。温暖化の影響か家の周りでは冬に雪がほぼ降らないので、久しぶりの触感。山はその人次第で色々な楽しみを提供してくれます。
二段ハシゴを登れば中岳に到着です。槍ヶ岳の穂先のハシゴと比較すれば怖さはなかったです。ただ、今回初めて大きいリュックを背負っており、重心が重心が取りずらいため、油断は禁物でした。
標高3,084mの中岳に到着。特に言う事はないです。稜線の一部って感じです。看板の文字のインクが全て剥がれています。
ここからガレ場や岩場を降りて行き、なだらかな稜線歩きです。ここら辺に今だけ出現する水場があるそうですが、見つけられませんでした。
後ろを振り返ると一番左の山が中岳です。栗を半分に切った形をしているように見えます。それともシュークリームを半分に切って、白い雪の部分が生クリームのよう?
今回、雷鳥がいないかずっと探しているのですが、見つける事ができませんでした。燕岳の方には親子の雷鳥が見られたようでした。逢ってみたいものです。
中岳と南岳の間の稜線にてチングルマと笠ヶ岳。標高が高いとどの植物も背丈が低いな~ってこういうアングルの写真を撮る度に思います。
登山用語をほぼ知らないのですが、これがいわゆるトラバースって事ですね。普段背負っているリュックは小さいので今まで思った事ないのですが、背負っている大きなリュックが壁に当たって体が外に押し出されて滑落しないかとか、リュックによって重心が崩れて滑落しないかとか頭によぎります。
滑落の心配はないですが、ここを下って行きます。おむすびコロコロどこまで転がるだろうか。
少し下ばっかり見ていたので、風景も楽しまなきゃと言う事で、ご覧ください。笠ヶ岳です。
反対側です。癒されます。
天狗原稜線分岐に到着しました。ここから南岳→南岳小屋まで行ったら、ここまで戻って来て、天狗池の方へ下って行きます。
威厳と品格を携えたような姿は、存在感が異なります。長い年月が今の独特な山肌を形成したのだと思うと、何気なく通過するのがもったいないです。
南岳山頂に到着しました。
目の前に見えるのが南岳小屋です。奥に見える北穂高岳はいつか大キレット通過してみたいような、そこまでしなくても良いような。高度感あって怖いのは体も心も拒否。
一番左に見えるゴジラの背中のようなジグザグした形の尾根は前穂高北尾根で、クライミングが必要な場所です。はい、絶対に行かない場所ですね。一番右の奥には焼岳が見えました。
南岳小屋で登山バッジを購入し、天狗原稜線分岐へ引き返します。写真撮っていたら11時なりそうです。お昼ご飯は槍沢ロッヂで食べる予定なので、槍沢まで安全かつ少し急ぎで下りれたらと思います。
天狗原稜線分岐から天狗池へ南岳の東壁を下るルートです。後ろ向きで下りるのが苦手なので、何だか嫌な予感がしてきました。初心者でも大丈夫なルートなはずなので、とりあえず下って行きます。
嫌な予感は的中でした。ぱっと見垂直のような場所に、壊れたようなブランコのような鎖場。登りだったら恐怖を感じなかっただろうけれど、下りだったので、愚痴がでました。
「リュックが邪魔で前向きに下りられないし、事故は元気な登りより疲労が溜まった下山で発生するじゃん!」
無事に関門を突破すると、雲から地面へかけられたようなイメージを連想させる二段ハシゴがすぐに登場。しかも2つ目は取っ手が折れ曲がり降りにくそうです。
高度感を感じる場所は鎖場と二段ハシゴだけでした。
昨日とは違った位置で槍を見上げると、違った槍の顔を見ているかのよう?な気がする?錯覚?飽きさせてはくれないのは確かです。
こんな感じの岩場がずっと続きます。短い手足で、ピョンピョン岩と岩を飛んだり、時にズボンやリュックを岩に擦らせながら下ったりしました。
下りは疲労が溜まりにくいですが、下りにくいため結構時間がかかっています。
途中で何組かが登っていきました。いやぁ~私だったら登りたくないわぁ~って思いました。ピョンピョン下りる方がとてつもなく楽です。
岩が大きいため、浮いている石はほぼないのが良かったです。急な斜面を下りて行ったので、どんどん標高が下がっていきました。
雪の上極力歩かないようにしながら通過しました。雪の厚さはなさそうですが、ズボッていったらケガの元になりそう。
天狗池に到着しました。ここ2~3日で解氷し始めたようで、逆さ槍が何とか見えています。後1週間経てば、山全体が映ると思います。
天狗原分岐への帰り道、クガイソウが多く咲いていました。芋虫が葉っぱの上から空に向かってアピールしているようです。
今回の登山で槍ヶ岳を見るのもそろそろこれで最後になります。天気にも恵まれ、景色に恵まれ、頂上にも登れ良い山旅でした。
...エンドロールが勝手に流れてますが、最後まで気を抜いたらダメですね。まずはお昼ご飯を食べなくては!
ガレ場を下って行けば昨日通った水俣乗越分岐に到着です。
ザレ場とガレ場、岩場の違いって今までちゃんと理解してなかったのですが、調べてみると、ザレは小石だらけの場所で、ガレはげんこつから頭くらいの石だらけの場所ってありました。なるほど、ここはガレ場と区別して大丈夫そうですね。
水俣乗越分岐
登ってた時は大変だった道も、下りは筋肉使わないので楽です。各停から急行に変更して、昼ごはん駅へ向かうとします。13:30過ぎで、結構登って来る人がいました。
ババ平駅をノンストップで通過し、本日の終点、槍沢ロッヂへは1時間程で到着しました。
行きには置いてなかった望遠鏡を発見。覗き込んでみると槍ヶ岳の穂先が見えました。しかも頂上に人がいるのが見えます。
とりあえず、最優先事項はチェックインとお昼ご飯なので、望遠鏡は後でじっくり観察します。
ちなみに15:00からお風呂に入れるため、お昼ご飯食べる前に入浴しました。沢山汗をかき、昨日お風呂に入ってないのでさっぱりです。みんな考える事は同じようで、お風呂が汚れる前に入ろうとしているためか15:00が劇混みで、30分もすればガラガラな状態でした。
今日泊まる部屋はこんな感じです。嬉しい事に端っこを手に入れました。更に、お隣の布団は誰もいませんでした。ラッキーですね。遅く来た団体らしき人達は廊下に布団を敷いた場所が団体ごとにあてがわれていました。個人であるがゆえのメリットはこんなところにもあるのかもしれないです。
昼食の提供時間が14:30までで、間に合いませんでした。なので400円のカップラーメンでお腹を満たします。以前山でラーメンを食べてた人の話では、山で食べるラーメンは塩が一番美味しいといってました。確かに美味しい。
槍沢ロッヂの夕食は唐揚げでした。槍ヶ岳山荘と同じ系列会社ですが、メニューは違って良いですね。
夕食後は歯磨きしながら望遠鏡で槍ヶ岳観察。ここが本当の見納め場所になりました。
休憩スペースには、漫画「岳」や登山関係の雑誌があり、時間が沢山あるため適当に読み漁りました。
明日は上高地へ下山し、15:00上高地発のバスで帰ります。ネットがぎりぎり使えたので、調べ物をしていると、今日横尾まで下りれば、明日蝶ヶ岳へ日帰りで行け、バスに間に合うようでした。
明日の朝ごはんをお弁当にして、翌朝早く発てば槍沢ロッヂからでも日帰り蝶ヶ岳は大丈夫そうですが、ここは潔く諦める事にします。