バンテアイ・スレイ
バンテアイ・スレイとは、「東洋のモナリザ」と呼ばれる美しいデバターのレリーフがある寺院として有名で、フランス人に国外へ盗み出されそうになった過去があります。
バンテアイは砦、スレイは女で、「女の砦」を意味します。ラテライトと紅い砂岩で築かれた寺院の規模は周囲約400mと小さいですが、彫りが深く赤い砂岩で造られた数々のレリーフは他の寺院遺跡とは異なっており、「クメール美術の至宝」と呼ばれています。
976年に王族の一人で王師でもあったヤジュニャヴァラーハとその弟によって創建され、当時はアンコール王朝摂政役の王師ヤジュニヴァラーハの菩提寺でした。シヴァ神とヴィシュヌ神に捧げられました。
3重の周壁で囲まれており、第1周壁の内側に環濠があり、一番内側の第3周壁の内側に東洋のモナリザと呼ばれるレリーフがある北塔や中央祠堂などがあります。

基本情報

別称
Banteay Srei
住所
シェムリアップ, カンボジア
アクセス
シェムリアップの中心部(オールドマーケット)からトゥクトゥクで1時間。
営業時間
6:00~17:00
料金
アンコール遺跡群チケットが必要(1日券、3日券)
観光
11月上旬~5月中旬の乾季
観光時間
1時間
その他
チケットは遺跡共通でアンコール遺跡群チケット販売所で事前に購入する。

寺院遺跡

アンコール王朝が衰退すると共にバンテアイ・スレイは過去のものとして忘れ去られ、森の中で人知られずの存在となりました。1914年、地元の住民が野焼きをした際、偶然発見されて現在観光地化するまでに至ります。
第二周壁の塔門
参道の両端に並んでいるのはリンガです。
塔門の中に入ると参道があります。そこに並ぶリンガとは、ヒンドゥー教の神シヴァの象徴とされる男性生殖器です。
塔門のレリーフ
レリーフとは装飾のことです。
ナーガ(蛇神)のレリーフ
連子状窓はクメール建築特有です。
一番内側にある周壁の塔門
レリーフにはそれぞれ異なる物語があります。
カーラの上にに乗るシヴァ
至る場所にレリーフが掘られています。
遺跡の一番中心にある前室です。その背後に中央祠堂、南塔(南祠堂)、北塔(北祠堂)があります。周囲に配置されたハヌマーンやガルーダ(鳥神)の坐像が守っています。
ヴァイシュラヴァナ
ハヌマーン(猿神)
中央祠堂や塔の中には入れません。
左から北塔、中央祠堂、南塔
デバターのレリーフ
南塔と北塔の壁に施されたデバターは、「東洋のモナリザ」と呼ばれます。
各壁面に2体、合計16体彫刻されており、1923年にフランス人のアンドレ―・マルローは数体盗み出しましたが、出国する前に逮捕され、デバターは取り戻されました。
デバターはアンコール・ワットなど他の遺跡にもレリーフが施されています。バンテアイ・スレイのデバターが特別美しいとされる特徴は、掘りが深く立体的であることです。
バンテアイ・スレイを創建したのはヤジュニャヴァラーハとその弟で、王族の一人ではありましたが王ではありません。この時代は王でなくても寺院を建てることがありました。ヤジュニャヴァラーハは多くの学問に精通する学者であり、貧困に苦しむ民に手を差し伸べる慈善家でした。