腐生植物とは、光合成をしないため葉緑素を持たず、葉は退化してしまった植物のことです。土壌中に存在する菌類が植物の根に侵入して形成された菌根を通して、菌類から栄養を奪うため、菌従属栄養植物と正式には呼ばれます。菌類に寄生する植物です。

その独特な生活様式は植物の見た目も独特に進化し、不思議で魅力的な姿は一部の植物愛好家に人気があります。今回はその多様的な特徴と共にお勧めの腐生植物を紹介します。

腐生植物は身近な場所に生えている種類や、地域的な分布がある種類、見つけるのが困難な種類などがあります。その存在を知らないと視界に入っていても、気がつけないことが多くあります。また目立たない見た目から、砂の中の砂金を探すような労力が必要な種類もいます。

腐生植物で一番お勧めする植物は、全身一色のヒメノヤガラです。アヒルの赤ちゃんが群れて組体操をしているような総状花序が特徴的です。
背丈が手のひらよりも短いくらい小さく、腐生植物を知らない人は、ヒメノヤガラを見つけてもキノコだと思うようです。小さくても立派なラン(蘭)で、ラン科植物の愛好家からも人気があります。
絶滅危惧Ⅱ類のラン科植物
全身真っ白で、群生することもあります。身近な公園から山まで様々な場所に生息し、腐生植物の中で一番有名な植物です。初めて腐生植物を見るなら、ギンリョウソウがお勧めで、分布情報はネットに多く載っており、一番簡単に出会えます。
ありふれている植物でありながらも、その姿は美しくユウレイタケ(幽霊茸)というユーモアな別称を持っています。目玉のおやじにも似ています。
真っ白な姿はとにかく目立ちます。
ギンリョウソウと出現する時期が異なり、秋に姿を見せる腐生植物です。ギンリョウソウモドキとも呼ばれます。
東京都では絶滅危惧Ⅱ類
花が咲く前は、黒くて細い棒が地面に刺さっているような姿で、焦点が偶然合わないと気がつかない植物です。白い花の唇弁には先端が紫色を帯びており、美しさと気品を感じさせます。また早朝に花を咲かせ、遅くてもお昼には花を閉じてしまいます。
トサノクロムヨウランは腐生植物の中で一番好きな植物です。花を一度も開かない種類をクロムヨウランと呼ばれ、別種扱いになっています。
遠州に自生地が多いムヨウランで、黄色い花を咲かせます。花は滅多に平開しません。
腐生植物は葉緑素を持たないため白い種類が多く、その白さゆえに自然の中では目立ちます。しかしキバナノショウキランが生えている場所は限定的で、偶然出会うことは難しい植物です。
ヤマタノオロチのように花をつける姿は時に、エイリアンのようにも見えます。
絶滅危惧ⅠB類のラン科植物
信濃で発見されたショウキランの仲間です。キバナノショウキランよりも更に自生地が限定され、出逢うのが難しい植物です。全草がクリーム色をしており、2001年に新種として発表されました。
絶滅危惧ⅠB類のラン科植物
全国的に自生地が少ない腐生植物です。オニノヤガラ属であり、この属の特徴は光合成をしない腐生植物で構成されています。その中で花茎が細く弱弱しく見えるため、弱天麻(ナヨテンマ)と呼ばれています。
絶滅危惧IB類のラン科植物
小さい時は、腐生植物のギンリョウソウやシャクジョウソウに似ていますが、背丈が伸びるとイカのような花を咲かせます。地上に顔を出してから開花と種子散布を済ませて地上から消えるまでにの期間が凄く早い植物です。
準絶滅危惧種のラン科植物
タシロランと同様にイカのような花を咲かせますが、それはどちらもトラキチラン属の腐生植物だからです。タシロランが低地で出現するのに対し、トラキチランは標高のある場所にしか自生していません。
絶滅危惧ⅠB類のラン科植物
腐生植物とは思えない程、よくある普通の花を咲かせる植物と変わらない姿をしています。ただし、葉っぱがありません。腐生植物のマヤランにそっくりな姿をしており、葉っぱがあったら葉から光合成をするナギランにもそっくりです。
統一された正式な名前がなく、サガミランと呼ばれたり、サガミランモドキと呼ばれたりします。現在では前者が一般的です。全身が薄黄緑色をしており、他の植物とは似て非なるその色はとても綺麗で個性的な植物です。
絶滅危惧ⅠB類のラン科植物
腐生植物にはムヨウランという名が付く種類が幾つもありますが、その中でも代表的な植物です。
花は色の変化が出やすく、本来は黄褐色の花を咲かせまずが、ムラサキムヨウランと呼ばれる紫色の個体も存在します。
京都府では絶滅危惧ⅠA類
腐生植物で一番派手な花を咲かせ、一番毒々しいような真っ赤な実をつけます。ラン科植物ならどんな種でも持っている唇弁は、ツチアケビに関しては花によって上下左右ばらばらであり、このように統一されていないラン科植物は非常に少数派です。それゆえに統一感のない見た目が個性的です。
東京都では絶滅危惧Ⅱ類
ヒメノヤガラと同じ「ヒメ」がつく腐生植物で、同様に小さくて目立たないです。花の構造は肉眼では良く分からないので、マクロレンズのカメラやルーペが必要です。
ムヨウランと同じように、色の変化が多様で赤や白、黄色などの個体がいます。どれも葉緑素はありません。
錫杖に似ていることが名前の由来になっている腐生植物ですが、「ジョウソウ」の名前が付く植物は他にも多いです。ギンリョウソウに似ていますが、クリーム色であることや蒴果であること等の違いがあります。
神奈川県では絶滅危惧IA類
地上からキノコの菌糸が上に伸びて、先端に奇妙な花を咲かせたような姿をしています。腐生植物の白い色は通常目立ちますが、こちらはそれでも目立たない程、小さくて細いです。
絶滅危惧Ⅱ類
錫杖に似ている小さな腐生植物で、茎の高さは3cmから大きくても10cm程です。黄色い花は肉眼ではあまり分からない程のサイズです。キノコに見間違えるであろう姿ですが植物です。
錫杖(シャクジョウ)の名前が付く腐生植物は多く、シロシャクジョウやシャクジョウソウなどがあります。
神奈川県では絶滅
1円玉よりも草丈が小さくて、糸のように細い腐生植物で、見つけるのが至難の技と言われています。肉眼での観察は不可能で、ウエマツソウやオキナワソウ等の仲間がいます。
絶滅危惧IA類
花の時期、地上から顔を出す全長の高さは2cmほどですが、落ち葉で隠れていることがあります。果実になると、種子を遠くまで散布するために、背丈が伸びて、ようやくクロヤツシロランの存在に気がつけます。
花はタール状に溶けていくのが特徴です。同じような腐生植物として、アキザキヤツシロランやハルザキヤツシロランがあります。
東京都では絶滅危惧ⅠB類
クロヤツシロランよりも草丈が高い腐生植物で、竹林で見つかります。花は深緑色で、地面や風景に同化して目立ちません。クロヤツシロランとほぼ同じ時期に出現し、開花します。結実した姿はどちらも酷似しています。
ライトで花を照らした姿
他のヤツシロランと比べて花が開かない腐生植物です。春に開花することが名前の由来になっています。
ポリネーターのハエと花
腐生植物の中では、あまり見かけることが少ない神出鬼没な存在です。また見かけても群生することはないため、2~3本あれば多いです。蕾の姿と開花した姿ではだいぶ印象が異なります。
絶滅危惧Ⅱ類
ヒメノヤガラと名前が似ているけれど属が異なる腐生植物です。シロテンマやアオテンマなど同属の腐生植物は幾つかあります。
背丈が子供くらいある長身で、目立ちます。アイヌ民族が食料としていたり、中国では漢方薬になっているなど食べられる腐生植物といったらオニノヤガラくらいしか思い浮かびません。人工栽培が可能で手法も確率されており、そんな腐生植物もオニノヤガラくらいです。
東京都では絶滅危惧Ⅱ類のラン科植物
オニノヤガラの色違いの品種であり、全草が緑色をしています。緑色ですが葉緑素は存在しないため、光合成をしない腐生植物です。