トガクシソウとは、戸隠山で採集されたことが名前の由来になっている多年草で、淡紫色の花を咲かせます。葉のつき方がショウマ類に似ていることから、トガクシショウマとも呼ばれます。日本人によって学名をつけられた最初の植物で、破門草と比喩されることがあります。
萼片は9個あり、3個は開花前に落下してしまいます。残りの6個は淡紫色で花弁状になります。本当の花弁はその内側に6個あり、小さな薄橙色で釣鐘型になっており、6個の雄しべと1個の薄黄色をした雌蕊を囲んでいます。2個の茎葉の間から散形状の花序を出し、約2.5cmの花を1~5個咲かせます。
草丈は30~50cmあり、地下茎は横に這い、多くのひげ根が生えます。葉は茎の先に3個対生し、3出複葉です。小葉の長さと幅は共に8~12cmあります。果実は白色の液果、楕円形をしており、長さは1.8cmあります。
福島県:絶滅危惧IA類(CR)
長野県:絶滅危惧IA類(CR)
命名者は在野の植物学者であった伊藤篤太郎で、東京大学植物学教室に出入りを許されていました。最初の発見者は叔父の伊藤謙であり、後で発見した東京大学教授の矢田部良吉によってトガクシソウ属「Yatabea」を新属として発表すると共に、学名「Yatabea japonica」を付けられそうになったことを知ります。
伊藤篤太郎はそれを阻止するために、先にトガクシソウ属「Ranzania」を新属として発表し、学名「Ranzania japonica」と提唱しました。それにより後手になった矢田部良吉は日本人初の学名命名者になれず、かつ自分の名前を使ったトガクシソウ属「Yatabea」の発表も無効になりました。
このことがきっかけで伊藤篤太郎は東京大学植物学教室を出禁にされたので、トガクシソウ(トガクシショウマ)は破門草と呼ばれています。トガクシソウ属「Ranzania」は江戸時代の本草学者である小野蘭山に捧げられたものです。
1属1種の日本固有種であり、トガクシソウ属はトガクシソウ(トガクシショウマ)のみ発見されています。多雪地帯の落葉広葉樹林下に生育しており、分布地は限られています。
自然の中で生育しているものは鹿の食害などから守るために保護されています。筑波実験植物園や日光植物園、戸隠森林植物園などで植栽されているため、気軽に見ることが可能です。