クロヤツシロラン
クロヤツシロランとは、花期に地上から顔を出す茎の高さは2cmほどで、果実になると種子を遠くまで散布できるように背丈が伸びる光合成をしない腐生植物です。
ショウジョウバエなどの昆虫によって受粉すると花はタール状に溶けて、蒴果を形成して花柄を30cm以上伸ばして、遠くへ果実を飛ばします。
花の大きさは2cmほどで、常緑広葉樹や整備されずに腐った竹が存在する竹林などの林床に生えます。花期は、その小ささと落ち葉と同化する色や、落ち葉に埋もれる事などから自生地を知らずに探すのが難しい植物です。
赤褐色の花を咲かせる個体はベンガラヤツシロランと呼ばれる品種になります。

基本情報

和名:漢字
黒八代蘭
学名
Gastrodia pubilabiata Y.Sawa
分類:目
キジカクシ目 Asparagales
分類:科
ラン科 Orchidaceae
分類:属
オニノヤガラ属 Gastrodia
分類:種
クロヤツシロラン G. pubilabiata Y.Sawa
花期
9月末~10月初旬
赤リスト
環境省カテゴリ:なし
東京都:絶滅危惧IB類(EN)
分布
関東~九州
分布地
生田緑地, 泉の森, 葦毛湿原, 桜ヶ丘公園, 長池公園
その他

詳細情報

クロヤツシロランの蕾
クロヤツシロランの花
1株に花が8個ほど付いた個体
中国語では「冬赤箭」と呼ばれています。
クロヤツシロラン
折れた竹と腐葉土の下に顔を出さずにいた個体です。白くて丸いものは葯(雄蕊先端にある花粉を入れる袋状)です。その下にある下唇の口ばしのような部分は、ラン科特有の唇弁で、毛があります。一番上部に1枚の背咢片、その下の耳のような部分が2枚の側花弁、その下に2枚の側咢片があります。
花茎が立上がってから約2週間程で蕾になり、蕾から1日で満開になり、翌日には花は下向きになります。そして花の部分がタール状になって、子房の中に吸収されます。その際、タール状になった花にくっついたゴミ等の付着物も巻き込みます。腐って溶けるような見た目です。そして上を向きながら果実を形成します。
クロヤツシロラン
花の一部がタール状になっています。
クロヤツシロランを受粉させるショウジョウバエ
花粉を頭上に乗せたショウジョウバエ
臭いにつられ、産卵するためにやってきたショウジョウバエによって受粉して、結実します。
クロヤツシロラン
頭上から見た姿
クロヤツシロラン
色は個体によって差があります。
腐生植物であるクロヤツシロランは、根系に菌根を形成しています。その菌糸は周囲にある特定の樹木の根から養分をもらって共生して生きています。腐生植物(菌従属栄養植物)は単体で生きる事は出来ず、このようにどこでも育つわけではないので、移植が極めて困難です。
腐生植物の中では、クロヤツシロランは実生から開花、種子形成までの栽培が比較的容易です。
クロヤツシロラン
開き切らない状態(9月20日)
クロヤツシロラン
開き切った状態(9月23日)
クロヤツシロランの果実
果実(10月18日)
クロヤツシロラン
地下部は長く、もやしのように白いです。
クロヤツシロラン
結実後、背丈は30cm以上伸びます。
クロヤツシロラン
塊茎を持つランは根が少ないです。
クロヤツシロラン
自生地の竹林
塊茎の寿命は、クロヤツシロランが栄養を奪っている腐生菌や、その菌が寄生している枯死植物(倒竹や倒木)によって影響を受けます。翌年も塊茎が残るかどうかは、腐生菌がどの植物に取りついているかによります。
クロヤツシロラン
ライトで照らした姿。
クロヤツシロラン
クロヤツシロラン
秦野市(10月25日)
クロヤツシロラン
緑と黄土色の茎
クロヤツシロラン
地下茎
種子が飛散する直前の様子
種子が飛散する直前です。
クロヤツシロラン
果皮が裂開して、種子は放出されています。
クロヤツシロラン
小田原市(12月)
アキザキヤツシロラン
花の数がとても多いです。
似たような植物として、ヒスイクロヤツシロランやハルザキヤツシロラン、ベンガラヤツシロラン、アキザキヤツシロランやヒスイアキザキヤツシロランがあります。