ヒナノシャクジョウ
ヒナノシャクジョウとは、形が錫杖に似ており、また姿が小さい事が名前の由来である、光合成をしない腐生植物です。
茎の高さは3cmから大きくても10cm程です。全体的に白い姿をしており、茎の先端に多数の花が頭状に集まっています。筒状の花の先端には萼片(外花被片)と花弁(内花被片)がそれぞれ3つずつあり、花弁は白いが外花被片の内側が黄色です。
ヒナノシャクジョウよりも目立たない腐生植物のホンゴウソウと共生菌を共有する事で知られています。つまり同じ環境・場所で育つため、ホンゴウソウを見つけるには、側で生えているヒナノシャクジョウをまず見るけるのが一般的です。
似た名前の腐生植物にシャクジョウソウがあるが、こちらも見た目が錫杖に似ているからであり、植物学的にはツツジ科でありヒナノシャクジョウとは関係はありません。

基本情報

和名:漢字
雛の錫杖
学名
Burmannia championii Thwaites
分類:目
ヤマノイモ目 Dioscoreales
分類:科
ヒナノシャクジョウ科 Burmanniaceae
分類:属
ヒナノシャクジョウ属 Burmannia
分類:種
ヒナノシャクジョウ B. championii
花期
7~10月
7月下旬~8月上旬がお勧め
赤リスト
環境省カテゴリ:指定なし
神奈川県:絶滅(EX)
分布
関東~九州
分布地
東山植物園, 愛知県森林公園, 北山湿地, 海上の森, 屋久島
その他
共生菌はアーバスキュラー菌根菌

詳細情報

ヒナノシャクジョウの芽出し
7月29日、芽出しです。
8月2日、頭状花序を形成中です。
中国語では「头花水玉簪」と呼ばれています。水玉簪科(ヒナノシャクジョウ科)の簪はカンザシの意味ですが、同じ科であるシロシャクジョウ等を含め、カンザシの姿に似ているように思います。ヒナノシャクジョウの受粉を助けるポリネーター(花粉運搬者)は蟻と言われています。
ヒナノシャクジョウ
花は1日花で、その日に咲いたら次の日には萎んでしまいます。基本的に1日に開花するのは1個体1つのみですが、ごくまれに1つの個体で2つの花が同時に開くことがあります。
ヒナノシャクジョウの花
2番目の花が開いています。
ヒナノシャクジョウの花の構造
花の構造
先端が茶色くなっている蕾は咲き終えています。黄色い蕾は開花の準備ができています。白い蕾は、まだ開花までに時間がかかります。7月29日の群生地では、開花まで進んでいる個体は1割程です。
ヒナノシャクジョウの開花
7月29日
触れると強度があります。
他の蕾を形成しながら開花
腐生植物であるヒナノシャクジョウは、根系に菌根を形成しています。その菌糸は周囲にある特定の樹木の根から養分をもらって共生して生きています。腐生植物(菌従属栄養植物)は単体で生きる事は出来ず、このようにどこでも育つわけではないので、移植が極めて困難です。
見頃から2週間経過した8月21日
頭上から見た姿です。
ヒナノシャクジョウ科の植物は基本的に光合成をしない腐生植物です。
同属としてルリシャクジョウ、同科異属としてヤクノヒナホシやホシザキシャクジョウ、タヌキノショクダイ属のタヌキノショクダイ等があります。
ヒナノシャクジョウ
9月16日
ヒナノシャクジョウ
種子が透けて見えてきます。
子房の中に黒い影が見えるのが種子です。10月になると、外側が裂けはじめ、中の種子がまき散らされます。