ルート
先月、初めての北アルプス登山で笠ヶ岳に登り、本格的に登山デビューを無事に果たしました。そして次に目指す山は、同じ北アルプスにある燕岳です。燕岳は北アルプスデビューに最適な山でかつ景色が素晴らしく、山小屋の燕山荘も人気があります。
燕岳は親子登山する山として選ばれやすく、小学生でも登れます。また地元の中学生が授業の一環として毎年登ります。
滑落の危険性がなく技術のない初心者に優しい山ですが、北アルプス3大急登の1つになっており足に負荷のかかる山です。日本3大急登ではありません。
今回は夜行バスの毎日あるぺん号に乗車して、早朝に中房温泉に到着しました。毎日あるぺん号はバス代金やキャンセル料が高いのですが、色んな山の登山口まで早朝に送り届けてくれます。車の運転が必要なく車内でゆっくりする事が出来、朝一から登れるメリットが大きいです。
中房温泉で登山届を提出したら、登山を開始します。本日宿泊する山小屋の燕山荘までは1本道で迷う事がありません。このルートは合戦尾根と呼ばれており、途中で合戦小屋があり、名物のスイカが販売されています。
(私はスイカ嫌いなので食べませんが、山で食べるスイカは格別に美味しそうです。)
登山道は出だしから登りで、ひたすら登り続けます。急登でもあるため、登山デビューしたばかりの初心者には辛い山登りです。
紅葉シーズンのため、登山者で混んでおり、登りにくい場所は渋滞が発生する事になります。北アルプスの山の中で、燕岳は簡単な山なのに景色が良いとあれば、混雑するのはしょうがないですね。
第1ベンチを通過し、第2ベンチまで来ました。合戦小屋まで定期的にベンチがあり、計4か所あります。疲れたら座って休憩できるのは親切ですね。
第1ベンチにのみ水場があるのですが、登山口に近いので使用する人は少ないと思います。
山登りを初めて思うのが、山って苔が多い事です。登山するまでは苔に触れ合う機会ってほぼなかったです。山では何ともない景色や木々が作品に見えました。
登り始めて1時間半ちょっとで第3ベンチまで来ました。登山口から燕山荘までは約4時間のコースタイムなので、まだまだ先は長いです。この時はまさか1年後にコースタイムが約9時間の槍ヶ岳の山荘に1日で歩くとは夢にも思ってませんでした。槍ヶ岳なんて縁のない山でした。
第3ベンチまで来ると登山道の足元が次第に変化していきます。
今まで木の根っこや土で構成されていた足元が、彫刻で削られたような白い岩の登山道になってきました。実はこの岩は花崗岩であり、燕岳が白と緑のコントラストや数々の奇岩を形成する素材になっています。今から楽しみですね。
第4ベンチである富士見ベンチでは富士山が見えます。悲しい事にガスっているため景色は何もありませんでした。森林限界を抜けても展望なしになってしまうのか心配です。
登り続け標高が上がった事で、徐々に紅葉した景色になってきました。紅葉は山頂から始まり、麓へ移動していくんですね。
ここら辺まで来ると、燕山荘から下山して来た登山者とすれ違い続ける事になります。ここは下山者と登山者ですれ違う事が出来ず、かつ急な段差で登りにくいため、渋滞が発生していました。
団体の下山者とすれ違った時に、登山靴に何かつけており、注視するとクラブツーリズムのツアーバッジでした。クラブツーリズムの団体旅行に参加した事がありましたが、団体登山もやっているとは知りませんでした。
ひたすら登り続けて3時間ちょっとで合戦小屋へ到着しました。混雑しています。
名物のスイカが販売しています。800円という事でスーパーと比べたらめちゃくちゃお高いですが、これが山値段と言う事なんですね。1切れを複数人でシェア出来るように更にカット可能です。
夏に出荷されたスイカは在庫がなくなり次第終了で、翌年の今頃はちょうど販売終了しています。
スイカ以外にも色々販売しているので、ミネストローネとコーンスープを注文しました。ベンチに座って持参した菓子パンで朝食タイムです。
ナナカマドでしょうか。赤い実が綺麗ですね。この山に登った時はナナカマドとかダケカンバとか紅葉する植物についてまったく名前を知りませんでした。
更に標高が上がり、紅葉が強くなっています。ちょうど見頃でしょうか。
森林限界が近づいてきました。森林限界と言う言葉も知らなかったです。知らない事が一杯です。本当だったら色々な山が見えそうですが、ガスって何も見えません。ガスるって言葉も知らず、霧が凄いって表現してました。
燕山荘まであと1.3kmです。あとどの位歩けば良いのか分かると精神的に楽ですね。けれど、山の1.3kmは街中の1.3kmとは別次元で、すごく長く遠いです。
登山を始めたばかりに洗礼を受けるギャップですね。「あとたったの1.3kmだね。」って思ったら、「既に5km歩いてるはずだよ。1.3km先の燕山荘が全然見えてこない。」って感じます。
ガスが薄くなって、雲海から顔を出した山々が見えました。何て言う山でしょう。
ここも渋滞しやすい場所でした。足場が狭く、すれ違い不可です。
本当はもう燕山荘が見えても良い頃なのですが、ガスって見えませんでした。明日は晴れてくれると良いですね。前回登った笠ヶ岳では山頂からの景色はガスって駄目でした。今回は頼む!
登り続けて午前中に燕山荘に到着しました。空はガスってますよって十分伝わる色です。まずは受付をします。毎日あるぺん号を予約した時に1泊2食で山小屋もバスとセット予約しています。
大勢の登山者が泊まれる程の広さがありました。本日は2人で布団1枚(1畳)です。
指定された蚕棚の部屋は3畳だったので、後4人来るって事ですね。時間もあるので昼寝をしてから昼食にしました。本当は小屋に到着してすぐ昼寝すると浅い呼吸で体の酸素が不足し、高山病になりやすくなるので、よろしくないです。
お昼ご飯は持参したおにぎりです。小屋の外にはイワヒバリがいました。太っているのは冬に備えての事ですね。
体、特に疲れた足を十分休めたので、燕岳の山頂へ行きたいと思います。休んでいる間にガスが弱まった気がします。燕山荘の入口から燕岳が見えてました。
花崗岩特有の奇岩と緑と白のコントラストの世界は格別でした。初めて見る世界です。街中で暮らしている限りは見れません。この景色を見るために人は山を登るのが分かります。この美しい姿から、燕岳は北アルプスの女王と呼ばれています。
山頂に人が立っているのが見えるので、山頂まではそんなに時間はかからないのも嬉しい。今回は燕岳の奥にある北燕岳も目指します。
山頂へ向けて歩いているとまず目にする奇岩がこのイルカ岩です。本当にイルカに見えますが、自然の風食や雨食の侵食(浸食)作用によって創造されたんですね。
燕岳はハイマツが多く、ハイマツは紅葉しないので、紅葉してもそんなに変化はないのかもしれません。
こちらは眼鏡岩です。イルカ同様にロープで中に入れないようになっています。このロープはコマクサを保護するだけでなく、奇岩の保護や安全のためですね。
ガスがどんどん消えていってます。テンションが爆上げしてきました。ただ、燕岳からは登山者の憧れの山である槍ヶ岳が見えるそうなのですが、雲に隠れており見えません。
標高2,763mの燕岳の山頂にあっという間に到着です。燕岳は日本二百名山に選ばれています。
小屋から山頂までの間の稜線ではライチョウと言う名の珍しい鳥が生息していると聞いていたのですが、出会う事は出来ませんでした。
一番左の手前にある大きな岩の塊が北燕岳です。燕岳からすごく近い場所にあるので、時間があるならついでに寄りたい場所でした。目指します。
槍ヶ岳が見えてきました。槍ヶ岳がどんな姿をしているのか知りませんでしたが、その山の姿を見た瞬間に分かりました。この山だけ鋭く尖っています。名前の通り槍のようです。
いつか登ってみたいです。難易度はどれくらいなんだろう。私でも登れるだろうか。先端まで登れるのだろうか。怖くないのだろうか。標高はどれくらいだろうか。
色んな質問が溢れる程、興味をそそられる山です。登山を始めるまでは槍ヶ岳と言う名前も知らないし、北アルプスも知りません。日本に住んでいるのに、日本に関して知らない事って当然だけれど山ほどあります。
周囲の景色は良く、槍ヶ岳だけでなく色んな山が見えます。どの山もまったく見知らぬ山です。これから登山を続けて、何度も北アルプスの山に登れば、これらの見知らぬ山とも知り合いになれるのかもしれないですね。
北燕岳の山頂が目前まで近づいてきました。燕岳と違って、ここまで来る人は少ないようです。
北燕岳の山頂に到着です。更にその奥の稜線をずっと歩いて行くと餓鬼岳へ続いています。この先へは行かないので、燕山荘まで引き返します。
稜線には数は少ないですが、枯れかけたコマクサが咲いていました。夏に花を咲かせる植物で、その美しい姿から高山植物の女王と呼ばれており人気があります。秋まで何とか花が落ちずにいました。初めてをコマクサを見ました。
ブロッケン現象とも出会えました。太陽などの光が背後からさしこみ、影の側にある雲粒や霧粒によって光が散乱され、見る人の影の周りに、虹と似た光の輪となって現れる大気光学現象です。ガスっているからこそ、珍しい現象を見る事ができました。
燕山荘まで戻ってきました。ここにはテント場もあり、テント泊も人気のようです。ちなみにテント泊でも食事を提供可能です。テント場が一杯になったら、テントをここまで担いできても、小屋泊山を余儀なくされます。小屋によってはテント泊には食事や水の提供が駄目な事もあります。
小屋の周辺にまだ綺麗なコマクサを発見しました。建物が遮蔽物になって、冷たい風を防げる場所に咲いてました。ラッキーです。
夕食は早い時間です。宿泊者が多いため食堂は満杯で、3巡は少なくともするようです。私は午前中に小屋に到着したので、1巡目でした。小屋に到着した順番ですね。朝食は早起きして食堂に並んだ順番で食べられます。
チーズインハンバーグがとっても美味しかったです。
夕食中に、燕山荘のオーナーから燕岳についての説明やホルン演奏がありました。
翌年テント泊で燕岳に来た時、夕食は燕山荘で注文して食べました。その時、メニューは同じでオーナーの説明も全く同じでした。一字一句同じだったので原稿がある気がします。ホルン演奏の短さも同じです。
夕食後は外で、少しずつ確実に近づいてくる夕暮れ時を待ちます。槍ヶ岳の方へ延びるこの稜線は表銀座と呼ばれ人気のコースです。
夕日に染まった燕岳を眺めながら、明日の下山を思うと名残惜しさが早くもこみ上げてきます。
夕食が2巡目もしくは3巡目の人は、夕食と夕暮れが被ってしまって、沈む夕日が見れない事になってそうです。食堂の窓とは反対に夕日があります。
右上に月が見えてました。
山小屋の入口の目の前に人面岩がありました。燕山荘の山男と言ったらこちらの岩だそうです。
夕日が沈んだ後に、夕日の色が雲に屈折して反射したのか変わった光景でした。
夕食が早かったので喫茶店でケーキを食べる事にしました。リンゴジャムとクリームが乗ってます。山でケーキを食べられるなんて思ってなかったので、嬉しいです。冷凍ケーキを解凍したものですが、美味しい。
残念なのがミルクを頼んだらスキムミルクで、かつ薄かったので不味かったです。
外は真っ暗になり部屋に戻り就寝しましたが、お隣からのいびきが激しく眠れませんでした。外へ出てみると下界の明かりが綺麗でした。
結局、いびきがうるさくて一睡もできない結果に。同じ部屋のいびきをしていない宿泊者は毛布を持ったまま部屋を出ていき、朝まで帰って来ませんでした。